借金の返済が厳しくなったとき、任意整理は有効な解決手段のひとつです。
しかし、任意整理には信用情報機関の事故情報(いわゆるブラックリスト)への登録というデメリットがあります。
そのため、できる限り他の選択肢も検討してから判断することが重要です。
任意整理を回避するために事前にできること、任意整理以外の選択肢、任意整理の相談前に確認しておくと良い点を解説します。
参考元:債務整理-東京司法書士会
先に結論|任意整理をする前にまずやること(4STEP)
任意整理を考え始めた段階では、まず現状の整理と他の選択肢の比較が重要です。
手続きを決断する前に、以下の項目を確認してみてください。
- いまの返済額ではなく、毎月いくらなら無理なく払えるかを決めます
- 手取り額と毎月の支出を記録して、黒字・赤字を確認
- 固定費(家賃・通信・保険・サブスクなど)を見直す
- 一時的な出費か、慢性的な不足かを判断
- 借入先、残高、毎月返済額、返済日、金利、延滞の有無
- ここが曖昧だと、方針が決まりません
- 取引開始年を把握(2007年以前なら過払い金の可能性あり)
- 任意整理が最適とは限りません
- おまとめローンで返済を一本化できるか検討
- 家族の援助を受けられないかも検討
- ただし、検討しすぎて時間を浪費するのも危険です
- 時間をかけている間に借金が膨らむ可能性あり
- 依頼をする直前の新規借入・カード利用などは、交渉に不利になることがあります
- 「相談する前に悪化させないこと」が重要です
まず確認|あなたは任意整理が第一候補になりやすい?
任意整理が現実的になりやすい人の特徴
次のうち、当てはまるほど任意整理が現実的です。
- 月々の負担軽減で完済の目処が立つ
- 返済額を減らすことができれば、無理なく数年以内に完済できる見込みがある。
- 高金利・多重債務で利息負担が大きい
- 複数の金融機関からの借入があり、金利が高く毎月の支払いの大半が利息に充てられている状況。
- 悪循環を断ち切りたい
- 「借金を返すためにまた借りる」という自転車操業の状態から抜け出したい。
- 計画的な返済で借金を整理したいという意志がある。
任意整理以外(個人再生・自己破産)を検討すべき人の特徴
一方で、借金や収入の状況が厳しい場合、任意整理では解決が難しく、個人再生や自己破産を検討する必要があります。
- 継続的な返済能力に不安がある:
- 収入が不安定であったり、無職・休職中など、和解後の分割返済を継続していくことが難しい。
- 返済に回せるお金が少ない
- 家賃や光熱費などの固定費を差し引くと、生活に必要な最低限の費用しか残らない。
- 毎月安定して返済に充てられる金額がほとんどない。
- 生活が破綻状態にある:
- すでに長期にわたって借金の返済を延滞しており、生活自体が借金問題で立ち行かなくなっている。
任意整理をする前に確認すべきこと(チェックリスト)
- 任意整理の相談前に調べておくべきことはありますか?
-
どこからいくら借りているか、収入と支出がどのぐらいか等は必ず必要になるので調べておきましょう。
債務整理の相談をスムーズに進めるには、事前に最低限の情報を把握しておくことが重要です。
必要な情報が不足していると、手続きが滞ったり、再度相談の機会を設ける必要が出てくることもあります。
- 借入している会社名
- 借入額と返済額
- 取引期間
- 延滞状況
- 収入と支出
- 借入が増えた原因
- 完済している会社名
すべて完璧に把握する必要はなく、取引の期間等は大体何年ぐらい前から借りていた・・・という内容で問題ありません。
借入先(会社名)と件数
- 消費者金融、カード会社、銀行カードローン、ショッピング(リボ含む)、あと払いなど
- 「どの会社がどれか分からない」場合は、カード明細や通帳引落を見直します

残高(元金)と毎月返済額
- ざっくりでも良いので、総額と各社の残高を分けて書く
- 可能なら「毎月いくら返しているか」も
セゾンで100万円を借入している場合
セゾンは60回程の分割払いになるケースが多いため、100万円÷60=16,666
任意整理後は、毎月17,000円ほどの返済になると想定できます。
取引期間(いつ頃から借りているか)
- 借入を開始した時期は非常に重要
- 取引期間が短いと、任意整理の交渉に応じない債権者もいる
- 取引期間によって返済条件が変わることがある
- 取引が長いほど、債権者が利息のカットや長期分割を認める傾向がある
- 長期間の取引は過払い金発生の可能性あり
- 2007年以前から高金利で取引していた場合は可能性あり
- 引き直し計算により借金が減る
- または完済・過払い金返還の対象になる可能性もあり
借入期間は契約書や利用明細で確認できるほか、口座引き落としの履歴からもある程度推測できます。

体験談:過払い金で任意整理を回避
50代 女性任意整理の相談したところ、取引が長くて過払いが判明。戻った金額を他社の返済に回して、任意整理を回避して完済までの見通しが立ちました。
延滞の有無
- いつから、どれくらい遅れているか
- 督促状・SMSがあるとわかりやすいです
収入と支出の確認
- 収入と支出を把握する目的
- 任意整理を検討する際は、まず「毎月いくら返済に回せるか」を算出することが大切
- 手取り収入から生活費などの支出を差し引いた残額が、実際の返済原資になる
毎月の収支バランスを確認することで、任意整理が現実的な選択肢かどうか判断しやすくなります。
収支から任意整理が可能かについては以下の記事で詳しく解説しています。


借入が増えた原因の整理
- 借金が増える原因の一例
- 生活費の不足
- 収入の減少
- 突発的な医療費、教育費
- ギャンブルや買い物の浪費など
相談時には、なぜ借金が増えてしまったのかを聞かれます。
原因が明確であれば、今後の返済計画や再発防止策を検討する際の参考になります。
特に個人再生や自己破産などでは、浪費・ギャンブルなどの理由が問題視されることがあるため、把握するようにしておきましょう。
過去に完済した会社名も確認する
- 過去に完済した会社名を確認する理由
- すでに返済を終えた貸金業者でも、過払い金が発生している場合がある
- 過払い金が見つかった場合のメリット
- 過払い金を他の借金の返済に充てることができる
- 結果的に任意整理を行わなくても済む可能性もある
「どこで借りていたか忘れてしまった」「書類が残っていない」場合でも、調査方法はあるので、相談前に確認を進めておきましょう。
完済済みの業者を調べる方法
- 契約書や明細、会員ページを確認
- 通帳に記録された引き落とし履歴を確認する
- 信用情報機関(JICCやCICなど)で取引履歴を開示する(※完済から5年以上経過すると消去される場合あり)
任意整理をする前に支払い方法を切り替える(公共料金・通信料)
- 任意整理をしたカードは解約になる
- 口座引き落とし等の他の支払い方法へ変更をする必要がある
クレジットカードで公共料金や通信料等の支払いをしている人は、事前に口座引き落とし等へ変更をしておくとスムーズです。




【テンプレ】相談前に作っておくと強いメモ(コピペOK)
下をそのままメモ帳に貼って、埋めてください。相談時にこの形で出せると、やり取りが早くなります。
借金の一覧
- A社:残高__円/毎月__円/開始__年頃/延滞:有・無(__日)
- B社:残高__円/毎月__円/開始__年頃/延滞:有・無(__日)
- C社:残高__円/毎月__円/開始__年頃/延滞:有・無(__日)
毎月の家計
- 手取り:__円
- 固定費(家賃__/通信__/保険__/車__/サブスク__)
- 生活費(食費__/日用品__/交通費__)
- 返済に回せそうな額:__円
過去に完済した会社
- __社(完済__年頃)
借金の主な原因
- 主な原因: ______(例:生活費の不足、浪費、ギャンブル、投資、病気・失業など)
任意整理をする前に検討したい代替策(おまとめ・家族援助・過払い金)
- 任意整理をする前に他に検討しておくべきことはありませんか?
-
家計を見直してみることがまずは第一です。
後は長期間取引をしていたなら過払い金が発生している可能性があるので、過払い金があるかどうか調査をするべきです。
おまとめローンを組むか、家族等の援助を受けて借金を完済する方法もあります。
任意整理を行うと、信用情報機関に「事故情報」として登録され、いわゆるブラックリストに載るというデメリットがあります。
ブラックリストについては以下の記事でも詳しく解説しています。


家計の見直しで返済の道を探る
まず最初に取り組むべきは、毎月の家計の見直しです。
- 無駄な支出をカットできないか?
- 固定費の見直しで余剰資金を生み出せないか?
- 臨時収入や副業の可能性は?
こうした工夫で月々の返済に充てられるお金を確保できれば、任意整理をしなくても返済を継続できる場合があります。
過払い金の調査をする(長期の取引がある人のみ)
- 下記を超えた金利での取引があった場合
- 引き直し計算により借金が減ったり
- 借金がすべてなくなってさらに過払い金が発生する可能性がある
- 2007年以前から取引があると過払い金が発生している可能性が高い
| 利息制限法の金利の上限 | |
|---|---|
| 10万円未満の借入 | 20%まで |
| 10万円以上~100万円未満の借入 | 18%まで |
| 100万円以上の借入 | 15%まで |
多くの貸金業者は2007年前後に利率を見直していますが、例外的に2010年頃まで高い金利で貸し付けていた業者も存在します。
2010年以前から取引を行っていたなら、弁護士や司法書士へ確認をするべきです。
過払い金については以下の記事でも詳しく解説しています。


家族等に立て替えてもらう
- 下記のような家族の援助を受けられる場合、任意整理をする必要はない
- 家族等に借金を代わりに払ってもらえる
- 家族にお金を借りて借金を完済できる
ただし、「家族に迷惑をかけたくない」「支援を受けられない」という方は、任意整理などの法的手続きを検討するべきです。
おまとめローンで債務を一本化する
任意整理を避けたい場合、複数の借金を一つにまとめる「おまとめローン」を利用するという方法もあります。
複数の借入を1社にまとめることで、以下のようなメリットとデメリットがあります。
- おまとめローンのメリット
- 毎月の返済が1本化され、管理がしやすくなる
- 金利が下がれば月々の負担が軽減される
- ブラックリストに登録されない(信用情報への影響なし)
- おまとめローンのデメリット
- 審査が厳しく、通らない場合もある
- 利息が発生するため、返済総額が増える可能性がある
- 完済した金融業者から再び借入れしてしまうリスク
任意整理ではブラックリストに載るというデメリットがあります。
おまとめは審査に通り、金利・返済期間が改善するのであれば有力な選択肢です。
体験談:おまとめできず任意整理した事例



おまとめローンを申し込んだが審査落ち。やむを得ず任意整理を選択したが、結果的に生活が安定し「もっと早く相談すればよかった」と感じた。
おまとめローンについては以下の記事でも詳しく解説しています。


任意整理の前にできること一覧
| 検討項目 | 内容 |
|---|---|
| 家計の見直し | 支出の削減と収入の確保で 返済を継続できないか再確認する |
| 過払い金の調査 | 利息制限法を超えた契約がないかチェック 過払い金の可能性を探る |
| 家族からの援助 | 家族からの援助で債務整理を回避できるか相談してみる |
| おまとめローン | 信用情報に傷をつけずに返済を継続できるか試算する |
上記の対策を講じても返済が難しい場合は、早めに司法書士や弁護士に相談することが大切です。
任意整理にはデメリットもありますが、計画的に借金を整理し、将来の生活を立て直すための有効な方法です。
任意整理をする前にやってはいけないこと(NG行為)
新規の借入・カードの駆け込み利用
- 任意整理直前の借入やカードの過剰な利用
- 返済の意思がない状態で借入したとみなされるおそれがある
- 債権者から「悪質な利用」と判断されると
- 和解交渉を拒否される可能性もある
債権者との交渉で不利になる可能性があります。
ショッピング枠・リボの直前利用(現金化に見える行動)
- 商品購入→換金のような動きは特に避ける
- 手続き全体がややこしくなります
任意整理の相談前には新たな利用を控えるのが安全です。
返済を止めたまま放置(遅延損害金の累積/訴訟リスク)
- 返済を止めても何も連絡をしないと
- 遅延損害金が膨らみ、債権者の対応が厳しくなる
- 訴訟や支払督促など法的手続きに進む可能性もある
滞納をしたままにするのではなく、返済ができなくなった時点で、早めに司法書士・弁護士に相談するべきです。
遅延損害金については以下の記事でも詳しく解説しています。


放置をした場合の典型的な進行
この段階で「電話・SMS・郵便」が増え、延滞が長引くほど遅延損害金も積み上がります。
連絡が取れない状態が続くと、債権者は回収手段として法的手続きへ移行しやすくなります。
期限内に対応しないと確定し、債権者が強制執行(差押え)に進める状態になります。
差押えは勤務先経由で行われるため、会社側に事情が知られるリスクが現実化します。
任意整理の交渉で不利になりやすい行動(注意点)
任意整理の交渉を有利に進めるには、「誠実に対応している」ことを債権者に示すことが欠かせません。
直前の行動が悪印象を与えると、利息カットや分割回数などの条件が不利になる場合があります。
相談のタイミング|「早いほど得」になりやすい理由
任意整理は、原則として「毎月の返済が続けられること」が前提です。
延滞が長くなるほど遅延損害金が増えますし、債権者との交渉も不利になり、選択肢が少なくなっていきます。
- 延滞が浅い
- 状況整理がしやすい
- 交渉も進めやすいことが多い
- 長期延滞
- 遅延損害金が積み上がる
- 法的手続きに移る可能性が上がる
「もう少し頑張ってから…」で状況が悪化し、結果的に任意整理では足りず、別の手続きが必要になることもあります。
よくある質問
任意整理の相談をしただけで信用情報に登録されますか?
いいえ。相談や見積もりの段階では信用情報に登録されません。依頼をした後に実際に専門家が「受任通知」を送付した後に登録されます。
任意整理でカードは使えなくなる?公共料金の支払いはどうする?
任意整理の対象にしたクレジットカードは解約なり、対象から外したカードも使用できなくなる可能性があります。公共料金等は、口座振替など別の支払い方法へ事前に変更しておくとスムーズです。


任意整理の相談は勤務先や家族に知られますか?
基本的には知られません。司法書士から自宅や勤務先に連絡がいくことはありません。司法書士からの郵送物も郵便局留めや事務所でのお渡し等が選べます。


任意整理の費用はいつ支払うのですか?
多くの事務所では任意整理成立までに分割で支払うことができます。費用を一括で用意する必要はありません。


任意整理後に再び借入をすることは可能ですか?
信用情報に事故情報(ブラック登録)が残る間は、新規借入やクレジット契約が難しくなります。


まとめ
- 家計の見直し
- 過払い金を調べる
- 家族等に借りて完済する
- おまとめローンを組む
- 借入している会社名と借入額
- 取引期間
- 収入と支出
- 借入が増えた原因
- 完済している会社名
司法書士からのアドバイス
任意整理は今後きちんと返済を続けるための再スタートの手続きです。
そのため、手続きの前段階でどれだけ現状を整理できるかが、結果を大きく左右します。
- 正確に状況を伝えることが第一歩です。
- 収入・支出・借入先・延滞状況など
- 隠さず共有することで、最も現実的で安全な解決策を立てられます。
- 一人で抱え込まないこと。
- 返済の遅れや督促が続くと精神的に追い詰められがちですが、受任通知を出せば督促は止まります。
- 「もう少し頑張れるかも」と思うより、早めに相談した方が結果的に負担が軽くなることが多いです。
- 任意整理はリスタートの準備期間と考える。
- 手続きが終わるまでの数か月間は、積立金で返済力を確認する期間です。
- ここでしっかり生活を立て直せればその後の3〜5年の返済も安定します。
正しい準備と手順を踏めば、任意整理はあなたの生活を守る強力な手段になります。
