借金の返済が苦しくて債務整理を考えても、「弁護士や司法書士への費用を支払う余裕がない」とためらう方は多いです。
ただし、多くの事務所では分割払い(積立)に対応しているため、費用を一括で用意できない段階でも相談は可能です。
この記事では、司法書士の実務経験をもとに次の点を解説します。
- 任意整理・個人再生・自己破産それぞれの費用相場
- 費用の支払い方法と積立の仕組み
- 「費用の安さ」が遅延損害金にどう影響するか
- 費用が払えない場合の対処法
債務整理の費用相場の早見表
最初に全体像をつかめるよう、3つの手続きの費用相場を一覧にしました。
| 手続き | 費用相場の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 任意整理 | 1社あたり5万〜10万円前後 | 債権者1社ごとに費用が発生する |
| 個人再生 | 30万〜70万円前後 | 再生委員が選任される場合は予納金が必要 |
| 自己破産 | 25万〜80万円前後 | 事件の種類によって費用が変わる |
共通して言えるのは、
- 「債務整理の費用は事務所ごとに異なる」
- 「同じ任意整理でも、事務所によって費用や内訳がかなり違う」
ということです。
任意整理の仕組みや手続きの流れについては以下の記事で詳しく解説しています。

債務整理の費用は「分割払い」が基本
債務整理を弁護士や司法書士に依頼すると、その時点で各貸金業者への返済が一時的にストップします(受任通知の効果/貸金業法21条1項9号)。
この返済停止期間中に、毎月の積立金として専門家への報酬を分割で支払っていくのが一般的な流れです。
債務整理費用の支払い方法の流れ
借金の状況や債権者数を伝え、自分のケースに必要な費用の見積もりと、分割払い(積立)の可否・回数を依頼前に確認します。
事務所が各債権者へ受任通知を送ると、取り立てと返済がストップします。
これまで返済に充てていた金額を毎月の積立に回し、専門家への報酬や裁判所の予納金などを少しずつ準備していきます。
任意整理は和解後の新しい返済額で、個人再生は再生計画に沿って支払いを再開します。
自己破産の場合は免責が認められれば借金そのものの支払い義務がなくなります。
積立期間の目安
| 手続きの種類 | 積立期間の目安 |
| 任意整理 | 3〜6ヵ月 |
| 個人再生 | 6ヵ月〜1年程度 |
| 自己破産 | 6ヵ月〜1年程度 |
積立金については以下の記事でも詳しく解説しています。

任意整理の費用相場と内訳
- 基本報酬:1社あたり5~10万円
- 返済代行手数料:1社あたり毎月1,000円前後(返済代行を利用する場合)
たとえば、3社を任意整理する場合は、
| 1社あたりの費用 | 3社分の費用 |
|---|---|
| 5万円 | 15万円 |
| 7万円 | 21万円 |
| 10万円 | 30万円 |
というイメージです。
費用の内訳
任意整理では、次の費用がかかることがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 着手金 | 依頼時に発生する費用 |
| 基本報酬 | 債権者1社ごとに発生する費用 |
| 減額報酬 | 借金が減額された場合に発生する費用 |
| 返済代行手数料 | 和解後の返済を事務所経由で行う場合の手数料 |
| 実費 | 郵送費、通信費など |
日弁連・日司連の指針による上限ルール
- 日本弁護士連合会:「債務整理事件処理の規律を定める規程」
- 日本司法書士会連合会:「債務整理事件における報酬に関する指針」(1社55,000円が上限の目安)
実際には指針を超える費用設定をしている事務所も少なくないため、依頼前に内訳を必ず確認してください。
減額報酬の落とし穴に注意
減額報酬は本来、引き直し計算(利息制限法に基づく再計算)で元金そのものが減った場合に発生する報酬です。
しかし、実際には「将来利息をカットして総返済額が減った分」にも減額報酬を請求する事務所があります。
任意整理では基本的に利息はカットまたは減額されるため、この運用だとほとんどの場合に減額報酬を取られることになります。
依頼前に、減額報酬の発生条件(引き直し計算による元金減額のみか/利息カット分も含むか)を必ず確認してください。
返済代行手数料も要確認
返済代行は、和解後の返済を事務所経由で行う仕組みです。
本人への連絡が禁止される等、便利な反面、債権者数×返済期間ぶんの手数料が積み重なります。
例:3社・5年返済・返済代行手数料1社あたり月1,000円なら
月3,000円×60ヶ月=18万円になります。
任意整理の費用を比較するときは、最初にかかる報酬だけでなく、返済代行手数料まで含めた総額で確認することが大切です。
返済代行については以下の記事で詳しく解説しています。

任意整理は費用が安い事務所を選んだ方がいい理由
任意整理の費用を比較するときは、相場感だけでなく「遅延損害金」との関係も意識しておく必要があります。
積立期間中も遅延損害金は加算され続ける
受任通知によって貸金業者への返済と督促は止まりますが、遅延損害金そのものの発生は止まりません。
以前は和解交渉の中で遅延損害金を全額カットしてもらえるケースが多くありました。
しかし、近年は遅延損害金のカットに応じない貸金業者が増えており、カットされないケースがほとんどです。
遅延損害金が年20%の場合の目安
遅延損害金が年20%の場合、費用の積立に半年かかる場合は、単純計算で元金の約10%に相当する遅延損害金が発生します。
| 元金 | 半年分の遅延損害金の目安 |
|---|---|
| 30万円 | 約3万円 |
| 50万円 | 約5万円 |
| 100万円 | 約10万円 |
費用が高い事務所ほど積立期間も長くなりやすい
任意整理では、基本的に毎月の積立金が事務所費用の分割払いを兼ねています。
そのため、事務所費用が高い場合、費用を支払い終えるまでの期間が長くなり、和解交渉に入る時期も遅くなることがあります。
【費用・積立期間・遅延損害金の関係】
- 費用が高い事務所:積立期間が長引く → 遅延損害金が積み上がる
- 費用が安い事務所:積立期間を短く済ませやすい → 遅延損害金の増加を抑えられる
費用の差は、単なる「依頼料の差」ではなく「最終的な支払総額の差」に影響がでる可能性があります。
任意整理を依頼する事務所を選ぶときは、なるべく費用が安い事務所を選んだ方が、トータルの返済負担を抑えやすくなります。
遅延損害金がどのように発生し、なぜ近年カットされにくくなっているのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。

個人再生の費用の相場
| 依頼先 | 費用相場 | 住宅ローン特則ありの場合 |
|---|---|---|
| 司法書士 | 約30万〜40万円 | 約35万〜45万円 |
| 弁護士 | 約40万〜60万円 | 約50万〜70万円 |
上記とは別に、印紙代等の実費が3万円弱、再生委員が選任される場合は再生委員報酬として15万〜25万円が必要です。
弁護士申立てで再生委員費用が抑えられることも
裁判所によっては弁護士申立ての場合、再生委員が選任されない、または選任されても費用が10万円ほど安くなる場合があります。
再生委員費用まで含めるとトータルで弁護士の方が安くなるケースもあります。
個人再生については以下の記事で詳しく解説しています。
自己破産の費用相場
| 自己破産 | 同時廃止事件 | 管財事件 |
|---|---|---|
| 司法書士 | 25万〜40万円 | 報酬25〜40万円+予納金40万円〜 |
| 弁護士 | 30万〜50万円 | 50万〜80万円 |
同時廃止事件とは、処分する財産がほとんどなく、破産管財人が選任されない事件です。
一方、管財事件とは、一定の財産がある場合や、免責不許可事由の調査が必要な場合などに、破産管財人が選任される事件です。
自己破産でも、司法書士は書類作成と手続きのサポートが中心です。
弁護士は代理人として手続きを進めることができます。
弁護士申立ての「少額管財」で予納金を圧縮できる
管財事件では、本人申立ての場合に高額な予納金が必要になることがあります。
一方、弁護士申立てで少額管財が利用できる裁判所では、予納金を20万円程度に抑えられる場合があります。
また、東京地裁の即日面接制度を使えば、弁護士申立ての場合は手続き期間が1ヶ月ほど短縮されます。
自己破産については以下の記事で詳しく解説しています。
債務整理の費用が払えない場合の対処法
費用の準備が難しい場合でも、状況に応じて次のような方法があります。
返済を一時的に止めて費用を積み立てる
多くの事務所では、依頼後に貸金業者への返済を一時的に止め、その間に費用を分割で支払います。
そのため、今すぐまとまった費用を用意できなくても、手続きを進めることが可能です。
法テラスの民事法律扶助を利用する
要件を満たせば、法テラスを通じて次のメリットが得られます。
- 費用が相場より安くなる
- 弁護士・司法書士費用を法テラスが立替え
- 立替分は月5,000〜10,000円で分割返済
ただし収入・資産の上限があり、誰でも使えるわけではありません。
法テラスを利用できる条件については以下の記事で詳しく解説しています。

参考元:民事法律扶助業務-法テラス
家計を見直して積立原資を作る
スマホ代、保険料、サブスク、車関連費などを見直すことで、月数千円〜1万円程度の積立原資を作れることがあります。
任意整理では、手続き後の返済を続けられるかも重要です。
そのため、費用の積立段階で家計を見直すことは、手続き後の返済計画にもつながります。
任意整理前に確認することについては以下の記事で詳しく解説しています。

緊急性が高い場合は早めに相談する
すでに裁判所から書類が届いている場合や、差押えの可能性がある場合は、費用の準備を待っている間に状況が悪化することがあります。
このような場合は、費用の問題だけで判断せず、早めに専門家へ相談した方がよいです。
債務整理の事務所の選び方については以下の記事で詳しく解説しています。

よくある質問
債務整理の費用はいつから支払い開始になりますか?
多くの事務所では依頼月または翌月から積立がスタートします。
債務整理の費用は一括で払う必要がありますか?
一括で払う必要はないことが多いです。
多くの事務所では、返済停止期間中に費用を分割で積み立てます。
費用が途中で払えなくなった場合、手続きは止まりますか?
事務所ごとに対応が異なりますが、多くは積立が遅れると和解交渉・申立準備が停止します。
費用の分割回数は自由に決められますか?
自由には決められません。
任意整理後の返済見込み額を基準に、費用 ÷ 返済見込み額 = 積立期間の目安
で決まることが多いです。
和解後の支払いに無理が出ないよう、将来の返済予定額と同じ金額を「毎月の積立額」として設定するためです。
任意整理の費用は安い事務所を選んだ方がいいですか?
費用は安ければよいという単純な話ではありません。
ただし、任意整理では費用が高いと積立期間が長引き、遅延損害金が増えることがあります。
費用倒れになる心配はありませんか?
当事務所では、費用倒れの可能性がある場合は事前に説明いたします。
まとめ|費用面で債務整理をあきらめなくていい
- 債務整理の費用は分割払い・積立が前提なので、一括用意は不要
- 費用相場は「任意整理:1社5〜10万円/個人再生:30〜70万円/自己破産:25〜80万円」
- 費用を抑えることが積立期間や遅延損害金の増加を抑えることになる
- 法テラスや定額制事務所など、費用を抑える選択肢は複数ある
- 動かないことのリスク(差押え・遅延損害金増加)の方が大きい
費用が不安な場合は、借入先・残高・毎月払える金額を整理したうえで、チャット・LINE・メールでご相談ください。
当事務所では、記録に残る形で状況を確認し、任意整理・個人再生・自己破産のどれが現実的かを個別にご案内しています。


