任意整理とは【メリットとデメリットを司法書士がわかりやすく解説】

  • 任意整理をするとどうなるの?
  • 任意整理のデメリットは何がある?
  • どんな状況の人は任意整理をすると良いのか?

任意整理は自己破産や個人再生と同じ債務整理の一つですが、債務整理手続きの中で一番融通が利く手続きです。

他の債務整理に比べ費用も安く済み、手続きも簡単なので債務整理の中では利用されている方が多いです。

「債務整理」と聞いてしまうとその言葉だけでなんとなくマイナスなイメージがあると思います。

しかし、実際には債務整理をすることで生活が楽になり債務整理をして良かったという人が多いです。

まずは任意整理とはどんな手続きか?メリットとデメリット、どのような状況であれば任意整理を選択すべきなのか?なるべくわかりやすく解説します。

参考元:債務の整理をしたいと考えています。どのような方法がありますか?-法テラス

目次

任意整理は利息を0%にして分割で返済する手続き

任意整理をすると借金はどうなりますか?

任意整理は債務整理の手続きの一つで、借金の利息を0%にしてもらい、借金の元金だけを分割で返済していく手続きです。

利息がなくなることで毎月の返済額が低くなり、返済した金額の分だけ元金が減るので、いつ完済できるのかも明確になります。

任意整理後は36回~60回払いになることが多いので、3年~5年で完済することになります。

任意整理をすると
  • 任意整理後の利息は0%になる
  • 元金のみを3~5年で分割で支払う

任意整理とは借金の利息をなくしてもらい、元本だけを3年~5年(36~60回)の分割で返済していく手続きです

自己破産や個人再生とは異なり、裁判所を通さず弁護士や司法書士が貸金業者と交渉を行い進める手続きです。

クレジットカードのショッピングリボや銀行も任意整理できる

消費者金融に限らず、銀行からの借入やクレジットカードのキャッシングやショッピングのリボ払いも任意整理をすることができます。

ただし銀行を任意整理する場合は口座が一定期間凍結されます。

また、クレジットカードを任意整理する場合はカードが解約になる等の問題があります。

任意整理のメリットとは?

任意整理のメリット
  • 督促が来なくなる
  • 利息がなくなる
  • 毎月の返済額が少なくなる可能性がある

督促が来なくなる

支払いを滞納していて督促や一括返済を請求されていても任意整理はできますか

滞納していて一括返済の請求が来ていても任意整理をすることができます。

滞納したまま放っておくと裁判を起こされてしまうことがあり、裁判になった後は任意整理の交渉が難しくなります。

そのため、滞納している場合はなるべく早く相談するべきです。

任意整理を依頼すると専門家は貸金業者へ受任通知という書類を送付します。

受任通知が送付された後は貸金業者から本人への連絡は禁止されるので、督促がくることはなくなります。

借金の返済を滞納していると貸金業者から一括返済を求められますが、一括返済を求められている場合も任意整理をすることができます。

滞納をしていると利息とは別に遅延損害金がどんどん増えていきます。

滞納している借金でも任意整理の交渉は可能ですが、相手方の会社によっては滞納中の遅延損害金はカットできない可能性があります。

遅延損害金がカットできなかった場合は、元金+遅延損害金を分割返済することになります。

さらに滞納後放置していると裁判を起こされてしまい、裁判を起こされた後の交渉は裁判所ですることになります。

裁判を起こされた後も利息をカットして分割での返済にできる可能性がありますが、遅延損害金はカットできない可能性が高いです。

裁判後に判決を取られていると、給与の差押え等で回収ができるので、任意整理に応じるメリットがないので任意整理ができない可能性が高いです。

遅延損害金がカットできない場合は返済額も増えるので、なるべく早めに相談をしたほうが任意整理の交渉は進めやすくなります。

任意整理のメリット

利息がなくなり返済が楽になる

借金を毎月支払っても、ほとんどが利息部分の返済で元本は少ししか減らないのでいつ支払いが終わるのかわからない・・・という状況の場合、

例えば50万円を利息18%で借りていると

毎月の利息が7,500円になるので返済額が1万5,000円でも元本は半分の7,500円しか減りません。

これに対して任意整理をするとその後の利息は0%にしてもらえるので、支払えば支払った分だけ元本が減ることになります。

50万円の元金だった場合、毎月の返済額は36回分割なら1万4,000円ほど、60回分割なら9,000円ほどなので返済額も少なくなることが多いです。

利息がなくなれば元本がそのまま減るので、いつ支払いが終わるのかも明確になります。

※銀行等での借り入れで金額が大きくて、毎月の支払いが低額な場合は任意整理をすると支払額が増えるということもあります。

任意整理後の分割払いの回数

「36回」~「60回」払いが基本となるので3年~5年払いになります。

相手方の業者にもよりますが、事情により今までの支払の状況や年齢等を考慮して60回以上の分割が組めることもあります。

貸金業者によっては36回以下の分割しか認めない業者もいますし、そもそも任意整理に応じない業者も存在します。

相手方の会社や取引期間や収入、年齢等を考慮して判断されるので、必ず36回~60回の分割払いができるわけではありません。

任意整理をすると
完済までに支払う金額が少なくなる

利息が0%になり、借金の元金だけの返済になるので、完済までに支払う総額が大幅に少なくなります

完済までの期間が短くなる

支払えば支払った分だけ借金が減っていくため、完済までの期間が短くなる可能性があります

毎月の返済額が少なくなる

長期の分割払いになるので、毎月の返済額が少なくなる可能性があります

利息カットのメリットを比較

任意整理をして利息がなくなって長期の分割払いになるメリットはわかりにくいと思うので、任意整理をした場合としない場合で比較します。

50万円を利息18%で借りて、毎月1万円を返済しているケース

任意整理をしない場合
完済までに支払う利息の総額43万円以上
完済までの期間7年10ヶ月
毎月の返済額10,000円

50万円の借入を任意整理して利息0%、60回の分割払いになると

任意整理をすると
完済までに支払う利息の総額0円
完済までの期間5年
毎月の返済額8,400円

任意整理前と後で比較

任意整理前任意整理後
完済までに支払う利息の総額43万円以上0円
完済までの期間7年10ヶ月5年
毎月の返済額10,000円8,400円

取引内容によって異なりますが、任意整理を行うことで完済までに支払う金額が減り、完済まで早くなり、毎月の返済額が減ることがあります。

任意整理のデメリット

任意整理のデメリットを教えてください

任意整理するとブラックリストに登録されることになります。

ブラックリストに登録されると、数年の間は借入したり、ローンを組んだり、クレジットカードを作ることが難しくなります。

参考元:信用情報とは-指定信用情報機関のCIC

ブラックリストに登録される

ブラックリストの登録されるとできなくなること
  • お金を借りられなくなる
  • ローンを組めなくなる
  • クレジットカードが持てなくなる

任意整理をすると信用情報機関に事故情報として残り、いわゆるブラックリストに5年ほど載ることになります。

その間、借り入れをしたり、ローンを組んだり、クレジットカードを作るとか保証人になるのは難しくなります。

借金ができる状況だとどうしても借りてしまう人は、借り入れ等ができなくなることはデメリットではなくメリットにもなります。

ネットショッピング等はpaypayやデビットカードで代用できますし、ETCはETCパーソナルカードというものがあります。

ブラックリストに登録されるのを避ける方法としてはおまとめローンを組むという方法もあります。

しかし、おまとめローンでは利息が発生するため、任意整理と比べるとそこまで返済は楽にはなりません。

相手方の業者によっては利息のカットができない

任意整理は裁判所を通さずに、専門家と貸金業者との任意の交渉で行います。

利息のカットに応じるかは貸金業者次第になりますので、相手方の業者によっては利息のカットに応じない場合があります。

また、通常は利息のカットに応じてくれる業者でも、借り入れから数か月しか経っていないような場合は利息のカットは困難になります。

借入から短期間でも利息のカットに応じてもらえる会社もありますが、半年間~1年間未満だと利息のカットに応じない業者もあります。

通常は弁護士・司法書士に相談の電話をした時点で利息のカットに応じる業者かどうかは答えられます。

また、基本的に大手の消費者金融や信販会社は利息のカットに応じてもらえます。

任意整理ができない場合は個人再生や自己破産を検討する必要があります。

借金の元金の返済が必要

任意整理をすると利息はなくなりますが、借金の元金自体は残るので任意整理後も毎月の返済が必要になります。

借り入れ金額が多くて元々の毎月の支払が少ない場合は、3年から5年の分割では毎月の支払金額が増えてしまう場合があります。

毎月の返済金額を支払えない場合は任意整理はできないので、個人再生や自己破産を検討することになります。

任意整理のデメリット

任意整理と他の債務整理との違い

任意整理と個人再生や自己破産との違いはなんですか

任意整理は利息はなくしてもらって借金の元金を分割で返済する手続きなので、借金の元金自体の減額はありません。

個人再生では借金自体を減額して、減額された金額を分割で返済することになります。

自己破産は借金すべてを免除してもらうことになります。

参考:個人再生-東京弁護士会

自己破産とは何ですか?-法テラス

任意整理は借金の減額がない

任意整理は利息を支払う必要がなくなるだけですが、自己破産は借金のすべてを支払う必要がなくなります。

個人再生は借金を一部免除してもらい残りの金額を支払っていくものです。

過去に法律以上の利息で支払いを行っていた場合は借金が減額されることがありますが、それ以外では任意整理には借金自体の減額や免除はありません。

しかし、利息をカットするので任意整理をしない場合と比べて、将来的に完済までに支払う総額は任意整理を行ったほうが少なくなります。

また、過払い金がある場合は引き直し計算によって借金が減額されることがあります。

返済中でも引き直し計算をすると過払い金発生する

任意整理は裁判所を通さない手続き

自己破産と個人再生は裁判所を通して行う手続きですが、任意整理は裁判所を通さずに弁護士、司法書士が業者と交渉を行います。

裁判所を通さないので任意整理は手間が少なく手続き期間も短いです。

一部の業者だけを任意整理の対象にすることも可能

自己破産と個人再生はすべての債権者が対象となるので、家族から借りている分や自動車ローンだけを除外することはできません。

その点任意整理は任意の交渉なので、一部の債権者だけを除外することは可能です。

クレジットカードを対象外にしても、任意整理をするとブラックリストの影響がでるため、対象外にしたカードも利用ができなくなる可能性が高いです。

すべての借金を任意整理しなければ生活の再建ができないような状況であれば全業者まとめて任意整理するべきです。

家族や勤務先にばれにくい

個人再生や自己破産では同居の家族の収入証明等を求められることがあります。

しかし、任意整理では家族の収入証明等は求められないので、任意整理は家族や勤務先にばれにくい手続きです。

弁護士や司法書士から書類が送付されることがありますが、郵便局留め等を利用することで自宅に送付されないようにすることが可能です。

任意整理は家族にバレずにできるのか

アルバイトやパートの方でも可能

個人再生の場合、安定した継続的な収入があることが条件となりますが任意整理にはそういった条件はありません。

アルバイトやパートの方も、毎月きちんと支払っていける見込があれば任意整理を行うことが可能です。

任意整理では官報に載らない

自己破産や個人再生では国が発行する官報に住所や氏名が載りますが、任意整理では官報に載ることはありません。

任意整理と他の債務整理の違い

どのような場合に任意整理を選ぶべきか

任意整理をするべきなのはどのような場合ですか?

任意整理を選ぶ基準としては、まずは借金の返済が難しい状況であるということ。

借金の元金を原則36回~60回程度の分割払いで支払える見込みがあることです。

後はどうしても一部の借金を債務整理の対象にしたくないという場合や、家族に秘密で借金をなんとかしたい場合です。

借金の元金を36回~60回での分割払いが難しいのであれば、任意整理ではなく他の債務整理を検討するべきです。

返済に追われている

基本的に債務整理は生活の再建のために行う手続きなので、任意整理をした方がお得だからとか、そのような理由ではすべきではありません。

借金を36回~60回の分割払い支払っていける

元金を36回~60回の分割で支払っていけそうなら任意整理、厳しい場合には個人再生や自己破産を検討することになります。

借金が膨れ上がった後では任意整理では解決できない場合があります。

任意整理できる人

  • 毎月の手取り額 25万
  • 毎月の支出 20万
  • 借金総額 100万円

上記の場合、手取り額から支出を差し引くと5万円になるので、毎月の返済にあてられる金額の上限は5万円ということになります。

100万円の借金を任意整理して36回の分割払いになると毎月28,000円ほどの返済になるので、

収入から支出を差し引いた毎月返済に充てられる金額である5万円よりも、任意整理後の返済額である28,000円のほうが少ないため、任意整理をすることが可能ということになります。

一部の借金を除外したい

例えば自動車ローンを組んでいる方が自己破産や個人再生を行うと車は引き挙げられてしまいます。

その点、任意整理では自動車ローンを除外して手続きすることが可能です。

仕事や生活でどうしても車を手放すことはできない人におすすめです。

その他、保証人が付いている借金を債務整理すると保証人に迷惑がかかるため、保証人が付いている借金は除外したい場合等が考えられます。

任意整理を選ぶべきではない場合

現在の借金の元金を36回~60回の分割払いにしても毎月の支払ができない場合は、任意整理を行うことはできません。

※60回分割以上の分割も組んでくれる業者もあります。

任意整理ができない場合は、個人再生や自己破産を検討すべきです。

また、毎月の支払金額は多少余裕を残して計算するべきです。

無理して任意整理で手続きを進めたけど、病気や仕事の都合で収入が減ったりして結局後で自己破産することになってしまった・・・

ということがあるので、やはり任意整理には限界があります。

任意整理をしたいのであれば借金が膨れ上がる前になるべく早めに相談をするべきです。

生活費にあてるために借金をしたとか、借金を返すために借金をしている状態であればすぐに専門家へ相談すべきです

任意整理できない人

  • 毎月の手取り額 25万
  • 毎月の支出 23万
  • 借金総額 200万円

上記の場合、手取り額から支出を差し引くと2万円になるので、毎月の返済にあてられる金額の上限は2万円ということになります。

200万円の借金を任意整理して60回の分割払いになると毎月33,000円ほどの返済になります。

収入から支出を差し引いた毎月返済に充てられる金額である2万円よりも、任意整理後の返済額である33,000円のほうが多いため、この場合は任意整理をすることができないということになります。

まとめ

任意整理をすると
  • 任意整理後の利息は0%になる
  • 元金のみを3~5年で分割で支払う
任意整理のメリット
  • 督促が来なくなる
  • 利息がなくなる
  • 毎月の返済額が少なくなる可能性がある

任意整理は自己破産や個人再生と比べ費用も安く、裁判所を通すこともなく、集める書類もほとんどなく本人の手間が少なく債務整理手続きのなかでは1番簡単な手続きと言えます。

ただし、任意整理にもブラックリスト等のデメリットが存在するので、デメリットとメリットを比較して検討する必要があります。

ブラックリストの登録されるとできなくなること
  • お金を借りられなくなる
  • ローンを組めなくなる
  • クレジットカードが持てなくなる

しかし相談を躊躇している間に借金が増えてしまうと任意整理では解決ができなくなることもあります。

そのため、返済が難しくなってきたら早めに相談をすることをおすすめします。

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