任意整理は、借金の返済負担を減らすことができる有効な手段です。
しかし、費用倒れになったり、ブラック期間の生活を想定できずに「任意整理なんてしなければよかった」と後悔する人もいます。
「任意整理をすべきか」「個人再生や自己破産の方が適しているのか」を判断するためのチェックリストとして、ぜひ参考にしてください。
参考元:債務整理-東京司法書士会
結論|『任意整理しなければよかった』を防ぐ判断基準
任意整理は有効な手段ですが、次の条件に当てはまると後悔しやすいです。
- ブラック期間の生活設計ができていない
- カード解約・分割不可の代替手段を準備していない
- 事務所費用が相場超
- 1社あたり5〜10万円目安
- 短期の分割払いしか見込めない業者がある場合
- 毎月の返済額が増える可能性あり
- 家計が赤字で返済資金が安定しない
本稿では、失敗を避けるチェックポイントと挽回策を整理しています。
任意整理の後悔で最も多いのは信用情報(通称ブラック)の影響
- 任意整理のデメリットを教えてください
-
任意整理をすると信用情報に事故情報(通称ブラックリスト)が登録されます。
ブラックリストに登録されるとお金を借りたりローンを組むのは難しくなったり、クレジットカードも使えなくなる可能性があります。
任意整理は、裁判所を通さずに債権者と交渉して利息カット、分割返済の和解を図る制度です。
この手続きを行うと、「債務整理をした」という事実が信用情報機関(CIC/JICC/KSC(全銀協))に事故情報として登録されます。
ローンやカードが利用できなくなる
- 借金やローンの審査に通りにくくなる
- クレジットカードも使用できなくなる可能性がある
【体験談】クレジットカード利用停止

事前に司法書士から言われていましたが、任意整理をしてから数日で急にクレジットカードが使えなくなり、出先で支払いができずに困りました。
登録される期間等は下記で解説しています。


スマホの契約にも影響がでる
- 携帯電話やスマートフォンを分割払いで購入することも難しくなる
- 機種代金を一括払いで購入する際は審査はなし
【体験談】スマホの分割払い



任意整理を相談したところ、司法書士にスマホを分割で購入するのも難しくなると聞きました。まさか任意整理がここまで影響するとは思いませんでした。
スマホの契約や審査への影響については、以下の記事で詳しく解説しています。


賃貸契約に影響することがある
- 保証会社によっては審査で信用情報を確認される
- ブラック状態では審査に通るのは難しい
信用情報を確認しない保証会社や、保証会社不要の物件を選べば影響はありません。
賃貸への影響については以下の記事で詳しく解説しています。


デビットカード・スマホ決済を利用する
クレジットカードが利用できなくなっても、デビットカードやスマホ決済は利用可能です。




ブラックリストで後悔しないために
信用情報に事故情報が登録されると様々な影響が発生するので、このような影響がでても問題がないか事前に確認が必要です。
以下のような生活スタイルであれば影響はない
- 借金やローンを利用せず収入の範囲で生活をする
- ネットショッピング等ではデビットカードや家族カード、スマホ決済で対応
- スマホは分割払いが難しくなるので、一括払いで購入する
任意整理を検討する際は、メリット(利息カット・返済負担の軽減)と、デメリット(信用情報への影響)を冷静に比較することが重要です。
任意整理については以下の記事でも詳しく解説しています。


【体験談】デビットカード



任意整理後にクレカが止まりましたが、事前に銀行のVISAデビットに切り替えていたので困りませんでした。


弁護士や司法書士の費用が高い
- 任意整理の費用は事務所によって異なりますか?
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任意整理にかかる費用は、依頼する法律事務所や司法書士事務所によって異なります。
相場より高額な費用を請求する事務所もあり「もっと安い事務所に依頼すればよかった」と後悔することもあるようです。
弁護士・司法書士の報酬には一定のルールがありますが、必ずしもすべての事務所が順守しているとは限りません。
依頼前に費用の内訳をよく確認することが大切です。
参考元:債務整理の弁護士報酬のルールについて-日本弁護士連合会
債務整理事件の処理に関する指針の制定について(会長談話)-日本司法書士会連合会
任意整理の費用相場|一般的な報酬体系を知ろう
- 費用相場は、1社あたり5万円~10万円
- 雑費や通信費等、色々な費用がかかり相場以上の費用の事務所もある
- ホームページに書かれていない費用が必要になる事務所もある
【体験談】費用が高額



最初はネット広告で見た事務所に依頼しましたが、後で調べると相場よりも高い報酬でキャンセルしました。最初からちゃんと比較すればよかったです。
債務整理の費用の支払い方法や相場等については、以下の記事で詳しく解説しています。


費用とメリットを比較
借り入れの内容にもよりますが、通常は完済するまでに利息だけで数十万円ほど支払うことが多いです。
仮に利息18%で50万円を借りて毎月15,000円支払っていくと、完済までに利息だけで20万円ほど支払うことになります。
任意整理のメリットを、実際の数字で確認したい方は「返済シミュレーター」をご利用ください。
借入額・年利・毎月の返済額を入力すると、完済までの期間と総支払額、任意整理との比較が自動で表示されます。
借入額が少額だと費用倒れになる
借入額が少額の場合は、任意整理による利息カットのメリットより費用が高くなる「費用倒れ」に注意が必要です。
仮に10万円借りて毎月1万円を返済していく場合は、完済までに支払う利息は1万円未満です。
A社では10万円の借入、B社では50万円を借りている場合
A社は任意整理せず、B社のみ任意整理をするということも可能です。
利息カット効果の早見表
元金 | 36回の利息 | 60回の利息 |
---|---|---|
10万円 (利息18%) | 約3.0万円 | 約5.2万円 |
30万円 (利息18%) | 約9.0万円 | 約15.7万円 |
50万円 (利息18%) | 約15.1万円 | 約26.2万円 |
100万円 (利息15%) | 約24.8万円 | 約42.7万円 |
- 返済回数が増えるほど利息も高くなっていく
- 少額でも毎月の返済額が少なく、長期の分割払いになると利息は高くなる


任意整理で返済額が上がる?長期分割できない時の考え方
- 任意整理をして毎月の返済額が増えることはありませんか?
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あまりないことですが、借入金額が多い場合で長期の分割払いに応じてもらえないと、任意整理をすると毎月の返済額が増えてしまうこともあります。
そのケースでも完済までの期間は短くなり、利息がなくなることで完済までに支払う金額も減ることにはなります。
- 高額な金額を借りている
- 長期の分割払いに応じてもらえない
上記のケースでは、任意整理をすることで毎月の返済額が増える可能性があります。
返済額が増えるケースでもメリットはある
返済額が増える場合でも「利息がなくなることと、完済までの期間が早まる」というメリットがあります
100万円を借りて毎月2万円返済、任意整理をして36回の分割払いになると
- 100万円÷36=27,777円
- 毎月の返済額は28,000円ほどになり返済額が増える
ただし、100万円を任意整理せず毎月2万円の返済では、完済までに利息だけで55万円以上支払う必要があります。
また、任意整理をすると3年で完済できますが、しない場合は完済までに6年6ヵ月かかります。
全体の返済額で判断しよう|1社単位ではNG
1社だけ返済額が増えても、他の会社の返済額が減れば、全体の月々の返済額が下がることもあります。
長期の分割払いに応じない会社は少ない
長期間の分割払いに応じない会社もありますが、大手の消費者金融やクレジットカード会社は長期の分割払いに応じてくれる可能性は高いです。
長期の分割払いに応じない会社は事前にわかる
- 多くの専門家は長期の分割払いに応じない会社は把握している
- そのため、返済額が増える可能性があるかどうかは事前にわかる
- 1社だけ毎月の返済額が増えても、全体として毎月の返済額が少なくなることがある
- 1社の返済額ではなく、1ヵ月の返済総額で考える必要がある
無理な任意整理は自己破産につながることも
- 任意整理後に返済ができなくなった場合はどうなりますか?
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任意整理をしても支払いができないとなると、後は個人再生や自己破産しか方法はなくなります。
収入と支出に対してギリギリの返済内容で任意整理をすると、結局その後に支払いができなくなってしまうこともあります。
- 任意整理は利息をカットできる反面、借金の元本は返済する必要がある
- 収支に余裕がない状態で無理に任意整理をしてしまうと
- 途中で返済できなくなる可能性がある
任意整理後に自己破産をするデメリット
- 追加の手続き費用がかかる
- 信用情報の回復がさらに遅れる
- 自己破産を最初にしていれば、信用情報の回復も早かった可能性
- 精神的・時間的負担が大きい
病気や怪我、仕事の都合等などで収入が減る可能性も考えて、ある程度は返済に余裕を持たせたプランを立てることも重要です。
ブラックリストの影響がなくなるまでの期間
自己破産をした際に、ブラックリストの影響がなくなるのは「破産開示決定等を受けた日から最長で7年です」。
任意整理後に自己破産をすると、「任意整理中+自己破産から7年」信用情報に事故情報が登録されます。
どの債務整理が適正かについては、以下の記事でも詳しく解説しています。


任意整理で後悔しないために
- 任意整理をしなければよかったと後悔しないためにはどうすればいいですか?
-
費用はホームページで比較をしてなるべく安い事務所に相談をするべきです。
ブラックリストの影響もでるので、任意整理をするメリットとブラックリストに登録されるデメリットを比較しよく検討するべきです。
後悔しないためのチェックリスト
- ブラックリスト登録などのデメリットを事前に正しく理解し、メリットと比較する
- 任意整理の費用や追加料金の有無を複数の事務所で比較・確認する
- 専門家の説明が不十分・対応が不誠実な場合は即決せず他の事務所も検討
- 一時的な返済困難の場合は、まずはリスケジュール(返済猶予)も選択肢
良い事務所の選び方については、以下の記事でも詳しく解説しています。


任意整理をしないという選択肢もある
任意整理は万能ではありません。以下のようなケースでは、必ずしも任意整理をする必要はないでしょう。
- 今月は厳しいが来月以降は返済できそうな場合
- 一時的な収入減で、今後安定した返済が見込める場合
こうした場合は、貸金業者に事情を説明すれば、返済を一時的に待ってもらえることがあります(リスケジュール交渉)。
今月だけ返済できない場合については、以下の記事でも詳しく解説しています。


【体験談】任意整理をして良かった



家族に内緒で手続きできたし、利息がゼロになって精神的にもすごくラクになりました。最初は不安だったけど、司法書士の先生が細かく説明してくれて納得して進められました。


よくある質問
任意整理は家族や職場にバレる?
任意整理は家族や職場にバレにくい手続きですが、カード停止等から推測される可能性はあります。


過払い金がある場合、任意整理と同時に請求できますか?
可能です。過払い金があれば残債と相殺され、返済額が減ったりゼロになるケースもあります。


任意整理をすると保証人に影響がありますか?
ただし保証人が付いている借入を任意整理すると、保証人に一括請求される可能性があります。


任意整理をすると車のローンやマイカーローンに影響しますか?
任意整理をするとブラックリストに登録されるため、ローン審査に通らなくなる可能性が高いです。


任意整理を後悔しないためのポイントまとめ
任意整理は、借金問題を無理なく解決するための有効な手段です。
- 支払いが苦しい状態から抜け出せる
- 利息の負担が減る
- 精神的な不安が軽減される
こうしたメリットを受けられる一方で、リスクや注意点を正しく理解しておくことが大切です。
- ブラックリストの影響が予想より大きかった
- 信用情報に登録されることの影響を事前に確認する
- 手続き費用が高すぎた
- 費用相場(1社あたり5~10万円)に当てはまるかを確認する
- 月々の返済額が増えた
- 全体でどう変わるか、シミュレーションを提示してもらう
- 家族に知られた
- 書類送付方法や連絡手段を事前に確認し、郵送や電話に配慮してもらう
司法書士からのアドバイス
「説明が不十分な事務所」を選んでしまうと、後になって後悔する可能性があります。
後悔を防ぐ最大のポイントは、「信頼できる専門家からの説明をしっかり受け、納得した上で手続きを進めること」です。
また、「家族に知られたくない」「誰にも相談できない」と悩まれる方が多いですが、家族に知られる可能性は低いです。
不安な方は、郵送物や連絡手段の指定もできますので遠慮なくご相談ください。
借金額が少ない人は、費用倒れになることもあるので、どこを整理するのがメリットが大きいかを一緒にシミュレーションしてみましょう。