債務整理すると賃貸は退去?入居審査や更新への影響も司法書士が解説

  • 債務整理をすると賃貸から退去する必要がある?
  • 債務整理をすると賃貸の審査に影響がでるのか
  • 賃貸の保証人がいる状態での債務整理

「債務整理をしたら、今の賃貸住宅から退去しなければいけないのでは…」

「これから引っ越しするときに、審査に通らなくなるのでは…」このような不安を感じる方は少なくありません。

しかし、家賃をきちんと支払っている限り、債務整理を理由に退去させられることは原則としてありません。

新しい賃貸の審査については、債務整理をすると信用情報に「事故情報」として登録され、いわゆるブラックリスト状態になります。

その結果、保証会社の審査に通りづらくなるなどの影響が出ることがあります。

ただし、保証会社にもさまざまな種類があり、信販会社以外の保証会社を利用できる物件であれば、入居が可能な場合があります。

このように、債務整理をしたからといって、すべての賃貸契約に支障が出るわけではありません。

状況によっては、債務整理を行っても問題なく現在の部屋に住み続けたり、新しい物件に入居したりすることが可能です。

  1. 債務整理が賃貸の契約に及ぼす影響
  2. 債務整理をすると退去する必要があるのか
  3. 家賃の保証人に迷惑がかからないのか

上記の順番で賃貸契約や退去等の影響を与えないための方法についても解説していきます。

参考元:債務整理-東京司法書士会

目次

債務整理後の新規入居審査に与える影響とは?

債務整理をすると賃貸の引っ越しに影響はでますか?

債務整理をするとブラックリストに登録されるため、その影響で入居審査に通らない可能性があります。

賃貸を借りる際は保証会社をつけることが多いですが、保証会社が信販系の会社だったり、提携のクレジットカードを作らされることがあります。

ブラックリストに登録されていると、保証会社やクレジットカードの審査に通るのは難しいので、結果として部屋を借りることができない可能性があります。

参考元:信用情報とは-指定信用情報機関のCIC

債務整理をすると、信用情報機関にその記録が登録され、いわゆるブラックリスト状態になります。

この情報は、信販系の家賃保証会社やクレジットカード会社が確認できるため、入居審査に影響が出ることがあります。

信販会社が保証会社になる場合

多くの賃貸物件では、入居時に保証会社の利用が必須とされています。

保証会社が信販系(オリコ、エポス、アプラス、クレディセゾン、SMBCファイナンスサービスなど)の場合、信用情報の審査があります。

ブラック状態のままだと、これらの保証会社の審査に通らず、入居ができないケースもあります

提携クレジットカードで家賃を支払う必要がある場合

一部の物件では、入居時に提携クレジットカードを発行し、家賃をカード決済することが条件になっている場合があります。

ブラック状態ではクレジットカードの審査が通らず、結果的に物件を借りられないケースがあります。

ブラックリストに載っていても新たに部屋を借りる方法

ブラックリストに載っていても、以下のような方法で新しい部屋を借りることができる可能性があります。

信販系以外の保証会社を利用する

JID、フォーシーズ、全保連など、信販系でない保証会社であれば、信用情報を重視しない場合が多いです。
そのため、ブラックリストに登録されている方でも、入居審査を通過できる可能性は十分にあります。

保証人を立てる

連帯保証人を用意できれば、保証会社を利用せずに契約できる物件もあります。

事前に不動産会社へ相談してみましょう。

保証会社やクレジットカードが不要な物件を探す

すべての賃貸物件が保証会社やカード支払いを求めているわけではありません。

不動産会社に相談すると、条件に合う物件を紹介してもらえることがあります。

不動産会社の担当者によっては、事情を理解したうえで適切な物件を紹介してくれる場合もあります。

ブラックリストに登録されていることを正直に話して相談をするのがいいでしょう。

債務整理が賃貸に及ぼす影響

債務整理をすると賃貸の部屋から退去する必要がある?

債務整理をすると賃貸している部屋はどうなりますか?

基本的には、債務整理をしても借りている部屋から退去する必要はありません。

ただし、家賃を滞納している場合で滞納している家賃も債務整理の対象にすると、賃貸借契約が解約になるので、退去することになります。

債務整理をすることで賃貸アパートやマンションを退去しなければいけないかどうかは、

  • 家賃の滞納があるか
  • どの債務整理を選択するか

という点で結論が異なります。

家賃の滞納がない場合

家賃を滞納していないのであれば、債務整理によって退去を求められることは基本的にはありません。

債務整理は借金の返済が難しくなった人を救済するための手続きなので、家賃の滞納がなければ賃貸に対して何かすることはないからです。

ただし、家賃の支払いにクレジットカードを使っている場合、そのカードが債務整理の対象になると利用停止になります。

その場合は、家賃の支払い方法を口座振替や振込などに変更する必要があります。

そのクレジットカードを債務整理の対象にしなくても、ブラックリストの影響でやはりカードが利用停止になる可能性もあります。

賃貸借契約の更新時は少し注意が必要

家賃の滞納がなければ債務整理をしても、賃貸契約の更新ができなくなることはありません。

大家さんから賃貸の更新を断るには正当な理由が必要になりますが、この正当事由というのは厳格です。

債務整理を行ったことや、信用情報に事故情報が載っていることが正当な理由にあてはまることはほぼありません。

ただし保証会社が付いている場合、更新時に信用情報を確認されて保証契約を断られることはあり得ます。

その場合は別の保証会社にするか、保証人をつけるように言われる可能性があります。

家賃を滞納している場合の債務整理

では家賃を滞納している場合はどうなるのか?滞納した家賃は債務=借金なので、滞納分の家賃を債務整理することはできます。

滞納している家賃を債務整理の対象にするとほとんどの場合、賃貸借契約が解約されて立ち退きを求められることになるでしょう。

ただ、家賃を債務整理の対象にしなくても、2か月以上家賃の滞納をすると立ち退きを求められる可能性が高いです。

家賃を滞納している状態で債務整理をした場合の影響を任意整理、個人再生、自己破産それぞれ以下に整理して解説します。

家賃滞納中の任意整理

家賃を滞納している状態で任意整理をするとどうなりますか?

滞納している家賃を任意整理すると、立ち退きを求められることになります。

ただし、任意整理は手続きする業者を選択することができるので、滞納している家賃を任意整理の対象から外すことが可能です。

家賃を任意整理の対象から外し、早い段階で滞納を解消できれば、立ち退きは求められない可能性があります。

滞納している家賃を任意整理の対象にすれば、基本的には退去を求められるでしょう。

しかし、任意整理では手続きの対象にする業者を選択することができます。

家賃を滞納していても家賃は任意整理の対象から外して、その他の借金のみを任意整理することが可能です。

A社とB社から借金があり、Cさんのへの家賃を滞納している場合

滞納しているCさんへの家賃は任意整理手続きから外して、A社とB社のみを任意整理することができます。

家賃以外の借金の返済額を減らすことで、滞納している家賃の滞納を解消できるのであれば家賃を任意整理する必要はありません。

ただし、家賃の支払いが困難な状態で他の債務のみ任意整理しても状況が改善しない場合、個人再生や自己破産を検討する必要があります。

家賃滞納中の個人再生

家賃を滞納している状態で個人再生をするとどうなりますか?

基本的には賃貸物件からの退去を求められます。

個人再生は全ての借入先を個人再生の対象にしなければいけないので、滞納している家賃も個人再生の対象になります。

家賃を個人再生すれば賃貸借契約は解約になる可能性が高く、解約になった場合は退去を求められます。

個人再生は、すべての債権者を対象とするため、家賃の滞納分も整理対象に含まれます。

この場合、賃貸契約は解除され、退去を求められる可能性が高くなります。

滞納している家賃を個人再生をすると家賃も減額されますが、通常の支払いができない以上、基本的には立ち退きを求められるでしょう。

家賃の滞納がなければ他の借金を個人再生しても、賃貸借契約には影響はなく退去する必要もありません。

個人再生後も賃貸に住み続ける方法

再生手続きの開始前に家賃の滞納を親族等の第三者が支払えば、個人再生の対象から除外し、賃貸に住み続けることができます。

第三者による支払いであれば偏波弁済に該当せず、個人再生の手続きにも支障はありません。

ただし、個人再生手続き開始前に自分で家賃を支払った場合は偏波弁済になります。

偏波弁済になると清算価値保障の原則により、支払った金額を財産額として上乗せすることになり、本来よりも減額されない可能性があります。

個人再生手続き開始前に第三者に支払ってもらえれば、退去することなく他の借金のみを個人再生することができます。

家賃滞納中の自己破産

家賃を滞納している状態で自己破産をするとどうなりますか?

基本的には賃貸物件からの退去を求められます。

自己破産では全ての借入先が自己破産の対象になるので、家賃を滞納していれば家賃も自己破産の対象になり、賃貸借契約は解約されてしまいます。

自己破産もすべての債務が対象になるため、家賃の滞納があると契約解除・退去となる可能性が高いです。

自己破産により家賃の支払い義務自体は免除されますが、通常の支払いができない以上、住み続けることは難しくなります。

家賃の滞納がなければ自己破産をしても賃貸借契約には影響はなく、退去する必要もありません。

自己破産後も賃貸に住み続ける方法

自己破産開始前に親族等の第三者が滞納分を支払うことで、契約の解除を避けられる可能性があります。

自己破産が開始される前までに滞納を解消することで、家賃を自己破産の対象から外して立ち退きを免れるという方法です。

第三者ではなく、自分で自己破産開始前に滞納している家賃だけを支払うと、偏波弁済になり最悪の場合自己破産ができなくなる可能性があります。

また、家賃の滞納額が大きくなければ、裁判所が家賃の返済を認めてくれる可能性もあります。

自己破産をすると借金の支払いは免除されますが、自己破産後に自分から返済をすることは可能です。

そのため、自己破産後でも滞納している家賃を支払うことは可能です。

その旨を大家さんに話してみて、自己破産手続き後に支払うから住み続けられないか?という交渉をしてみる方法もあります。

家賃を滞納している状態での債務整理

家賃の保証人がいる場合の債務整理

家賃の保証人がいる状態で債務整理をするとどうなりますか?

保証人がいる場合、滞納している家賃を債務整理すると、保証人に請求が行きます。

任意整理なら手続きする会社を選択できるので、滞納している家賃を任意整理しなければ保証人へ請求が行くことはありません。

部屋を借りる際に保証人をつけている場合は、滞納している家賃を債務整理すると保証人へ請求が行きます。

任意整理で家賃を対象から外せば、保証人に迷惑をかけることは避けられます。

一方、個人再生や自己破産はすべての債務が対象となるため、家賃を除外することはできません。

また、債務整理の効果は保証人には及ばないので、個人再生で減額しても自己破産で免責になったとしても保証人には全額が請求されます。

保証人への影響を避けたい場合は、早めに滞納を解消するか、任意整理で対応するのが望ましいです。

※債務整理をするしないに関わらず家賃を滞納した時点で保証人へ請求が行く可能性が高いです。

保証人がいる賃貸の債務整理

まとめ

債務整理後に新たな賃貸契約を結ぶ際は、ブラックリストの影響で信販系の保証会社を利用する物件では審査に通らないリスクがあります。

しかし、信販系以外の保証会社や保証人不要の物件を選ぶことで、契約できる可能性は十分にあります。

そのため、状況を不動産会社へ正直に伝え、協力を得ることが有効です。

現在住んでいる賃貸物件について、債務整理をしても家賃の滞納がなければ、退去を求められることは基本的にありません。

ただし、家賃の支払いを滞納している場合は注意が必要です。

滞納家賃を債務整理の対象に含めると、賃貸契約が解除され、退去を求められる可能性が高くなります。

とくに、個人再生や自己破産ではすべての債務を対象にするため、滞納家賃も含まれてしまい、立ち退きを避けるには事前の対処が必要です。

一方、任意整理であれば、対象とする債務を選べるため、家賃を対象から外せば退去を回避することが可能です。

保証人がついている場合に家賃を債務整理すると、保証人に請求が及ぶ可能性があるため、手続き前にしっかりと検討することが重要です。

債務整理は借金問題を解決する大切な手段です。

しかし、住まいの確保に関しては家賃の滞納や保証人の有無によって影響が異なるため、慎重に対応することが求められます。

迷ったら早めに専門家に相談し、最適な手続きと住まいの確保を両立できる方法を見つけましょう。

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