債務整理には、主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つがあります。
毎月どれだけ返済に回せるか、自宅や車を残したいか、保証人に配慮したいかによって、優先すべき手続きは変わります。
一般的には、まず任意整理を検討し、返済が難しい場合は自己破産、自己破産を避けたい事情がある場合は個人再生を検討する流れです。
任意整理・個人再生・自己破産の違いと、どのような人にどの手続きが向いているのかを、司法書士の実務目線でわかりやすく解説します。
参考元:債務整理-東京司法書士会
債務整理の優先順位早見表
結論から言うと、次の順に検討するのが基本です。
- 任意整理
- 元金を3〜5年(36〜60回)で返済できる見込みがある
- 財産や仕事への影響を最小化したい
- 保証人付きの借金や住宅ローンを外して整理したい
- 自己破産
- 任意整理をしても返済継続が難しい
- 収入や資産状況からみて返済の見通しが立たない
- 免責不許可事由や職業制限に該当しない
- 個人再生
- 任意整理をしても返済継続が難しい
- 免責不許可事由や職業制限に該当するので自己破産ができない
- 住宅ローン返済中の自宅を守りたい
選び方フローチャート
実際の相談では、月々の返済可能額、住宅ローンや車のローン、保証人付き債務、滞納状況などを確認して手続きを決めます。
相談時には払えそうでも、車検、保険料、税金、子どもの支出などが抜けていて、後から返済が苦しくなることは少なくありません。
任意整理後の返済額のイメージ
- 元金120万円
- 36回払い:約3.3万円
- 60回払い:約2.0万円
- 元金180万円
- 36回払い:約5.0万円
- 60回払い:約3.0万円
- 元金300万円
- 36回払い:約8.3万円
- 60回払い:約5.0万円
現在の返済を続けた場合と、任意整理をした場合の違いを確認したい方は、「返済シミュレーター」をご利用ください。
借入残高と分割回数を入力するだけで、完済までに必要な期間や任意整理後の概算返済額等を自動で試算できます。

任意整理での返済が難しい場合でも、諦める必要はありません。
借金を大幅に減額する「個人再生」や、ゼロにする「自己破産」なら解決できる可能性が高いです。
任意整理が向いている人の特徴
- 債務整理の中で任意整理を選んだ方が良いのはどのような場合ですか?
-
個人再生や自己破産までは必要がないケースです。
同居のご家族や職場に知られず、内密に借金問題を解決したい方にも向いています。
整理する対象の借金を選べるため、「車のローンだけはそのまま払い続けて車を残す」「保証人に迷惑がかかる借金は除外する」といった柔軟な対応も可能です。
- 個人再生や自己破産するほどではない
- 借金の元金を3〜5年で返済できる見込みがある
- 保証人に迷惑をかけたくない
- 自宅や車など、失いたくない財産がある
任意整理が可能か確認するSTEP
まずは、どこからいくら借りていて、毎月いくら返しているのかを一覧にします。
ここが曖昧だと、任意整理後の返済見込み額も正確に出せません。
家賃、食費、水道光熱費、通信費、保険料、車の維持費などを差し引いたうえで、無理なく返済に回せる金額を出します。
今後3年〜5年続けられる金額で考えることが大切です。
試算した返済可能額が、任意整理後の見込み返済額を上回るなら、任意整理を検討しやすくなります。
逆に足りない場合は、個人再生や自己破産も検討するべきです。
借金が100万円ある場合、36回払い(3年)なら月2万8000円ほど、60回払い(5年)なら月2万円の返済です。
※何回の分割払いになるのかは業者や取引年数等により異なります。
体験談:返済見込み額から判断
20代 男性司法書士に相談し、任意整理をした場合の返済見込み額を聞いて、「この金額ならいける」と判断できました。
任意整理については以下の記事でも詳しく解説しています。


保証人がついている借金がある場合
保証人が付いている借金を債務整理すると保証人へ請求が行きます。
自己破産や個人再生では、原則としてすべての債務が手続きの対象になるため、保証人付きの借金も外せません。
そのため、保証人がついている奨学金や自動車ローンなどを整理対象にすると、保証人へ請求が及ぶ可能性があります。
保証人付きの借金を対象から外し、他の借金だけを整理するという進め方ができる場合があります。
実際の相談でも、保証人がいる奨学金はそのまま払い、カード会社や消費者金融だけ任意整理する、という形で進めることは多いです。
保証人に迷惑をかけない方法
どの借金に、誰が保証人として入っているのかを確認します。
特に奨学金や自動車ローンなどは見落とされやすいので注意が必要です。
基本的には任意整理では整理する債権者を選べます。
保証人付きの借金を対象から外し、他の借金だけ任意整理することも可能です。
保証人付き債務をそのまま払い続ける場合と、手続き対象に含めて保証人へ請求が及ぶ場合を比較し、どちらが現実的かを判断します。
保証人については以下の記事でも詳しく解説しています。


住宅ローンや車のローンがある場合の考え方
- 自己破産
- 住宅ローン・車のローンも含めて全借金が対象
- 原則すべて処分される
- 個人再生
- 住宅ローンは除外できる可能性あり、車のローンは除外不可
- 住宅ローン返済中の自宅は残したまま整理が可能な可能性あり
- 任意整理
- 住宅ローンや車のローンを手続きから除外できる
- 自宅・車を残したまま整理が可能
任意整理では住宅ローンや車のローンを対象から外すことで、自宅や車を残したまま手続きを行うことができます。
自宅や車を残したい場合の判断方法
まずは、返済中のローンがあるか、どこの会社との契約か、現在の残高はいくらかを正確に把握します。
通勤や仕事に車が必要か、家族の生活のために自宅を維持したいかを整理します。
車を手放す方が毎月の負担が減り、生活再建の近道になるケースもあるため、冷静な優先順位づけが必要です。
任意整理でローンを対象から外したり、個人再生で住宅ローンを除外した場合、除外したローンの支払いはこれまで通り続きます。
「整理して減額された借金の返済」と「除外したローンの支払い」の両方を毎月継続できるか、家計からシビアに計算して判断します。
仕事で使う車がないと収入に直結する方では、自動車ローンを対象から外して任意整理を選ぶことがあります。
返済が厳しい場合は、車を残すことより生活再建を優先して、個人再生や自己破産を検討したほうがよいケースもあります。
体験談:任意整理で自動車を手放さずにすんだ



自動車ローンを除外することで、仕事で使う車を残せて生活の土台を失わずにすみました。任意整理以外の選択は考えられませんでした。




財産がある
- 自己破産では原則として20万円以上の財産は処分される
- 持ち家、車、預貯金などがある場合、それらを失うリスクあり
- 個人再生では財産の処分はないが清算価値保障原則がある
- 財産があると通常よりも借金が減額されないことがある
これに対して、任意整理なら財産の処分は不要なので、財産を維持したまま借金の整理が可能です。
ただし、任意整理をしても返済が厳しい場合は、財産を守れることだけを理由に任意整理を選ぶのは危険です。
任意整理のデメリット|手続きを始める前に知っておくべき注意点
- ブラックリストに載る
- 債権者によっては利息カットや長期分割に応じないことがある
- 分割回数しだいでは毎月の返済額があまり下がらないことがある
信用情報に事故情報が登録される(いわゆるブラックリスト)
任意整理をすると、信用情報に事故情報が登録されます。
任意整理の返済中に加え、完済後から約5年間は影響が残ります。
ブラックリストの影響については以下の記事でも詳しく解説しています。


体験談:ブラックでも不便を感じなかった



司法書士さんからデビットカードや家族カードを教えてもらい不便は感じませんでした。カードを使いすぎることも減りました。
任意整理に応じない業者がある
任意整理は裁判所を使わず、債権者との交渉で進める手続きです。
そのため、すべての会社が同じ条件で和解に応じるわけではありません。
また、取引期間が短い場合には、通常より厳しい条件になることもあります。
毎月の返済額が減らないこともある
任意整理は、将来利息をカットできれば総支払額を抑えやすくなります。
ただし、分割回数が短いと、毎月の返済額は思ったほど下がらないことがあります。
100万円の借金の目安
・60回払い:約1.7万円/月
・36回払い:約2.8万円/月
・24回払い:約4.2万円/月
毎月いくらになるかは、債権者ごとの条件次第です。
任意整理を進める前に、費用対効果まで確認したい
任意整理に応じる債権者か、何回払いになりそうかは、会社ごとの対応や交渉結果によって変わります。
実務では、利息をどれだけ減らせるかだけでなく、実際に生活再建につながるかを重要視します。
減らせる利息が小さく、毎月の返済額の軽減がわずかであれば、任意整理より別の手続きを選んだほうがよいことがあります。
任意整理を進める前に確認したいSTEP
- 借入先ごとの残高・金利・毎月の返済額を一覧にする
- 毎月いくら返しているか(合計)を把握する
- 利息をカットできるか、何回払いにできそうか専門家と試算する
- 「返済シミュレーター」を使って下記を簡易的に試算することも可能
- 任意整理後の「毎月の返済額」
- 完済までの「総支払額」
- 返済を続けた場合と任意整理をした場合で比較
- どのくらい利息を減らせるか
- 毎月の返済額がどれだけ下がるか(家計の負担軽減)


自己破産を優先すべきケースとは?
- 債務整理の中で自己破産を選択するべきなのはどのような場合ですか?
-
借金の支払いが不能な場合です。
収入から支出を差し引いて返済にまわせる金額を算出し、その金額よりも毎月の返済額の方が上回っている場合は支払い不能の状況だと言えます。
免責不許可事由や職業制限の問題もあるため、家計と事情を整理して検討することが大切です。
参考:自己破産-東京弁護士会
- 収入と支出から計算して、返済ができないこと
- 免責不許可事由がないこと
- 職業制限に該当しないこと
自己破産をしたほうがいい状況
- 収入よりも支出や返済額が大幅に上回っている
- 任意整理を行っても、返済が現実的ではない
このような状態だと「支払い不能」と判断され、自己破産の要件を満たす可能性が高くなります。
「何とか払いたい」という気持ちだけで任意整理を選ぶと、数か月から1年程度で結局自己破産になることがあります。
自己破産を優先して検討すべきか確認するSTEP
今の毎月の返済額ではなく、借金の総額(元金)を3〜5年(36〜60回)で割ってみてください。
利息がなくなっても、この基礎となる金額を支払うのが難しい場合、任意整理での解決は厳しいです。
毎月の収入から生活費を引き、確実に返済へ回せる余剰金がいくらかを客観的に確認します。
返済継続が難しいのに任意整理だけに絞ると、かえって解決が遅れることがあります。
免責不許可事由があっても、直ちに自己破産できないとは限らない
自己破産には、免責不許可事由があります。
たとえば、浪費やギャンブルなどが問題になることがあります。
ただし、免責不許可事由があるからといって、必ず免責が認められないわけではありません。
実際には、裁判所の裁量で免責が認められることもあります。
- 財産を隠した等
- 闇金からの借り入れや、ショッピング枠を現金化した
- 一部の債権者だけ優先して支払いをした
- ギャンブル、浪費、株やFXのための借金
- 破産申し立て前1年以内に嘘をついたりして借金をした、ローンを組んだ
- 業務、財産に関する帳簿等を偽造したり隠した
- 裁判所に提出する債権者名簿に嘘を書いた
- 裁判所出頭要請に応じない、嘘をついた
- 正当な理由なく破産管財人の職務を妨害した
職業制限に該当しないこと
自己破産では手続中の一定期間、警備員、生命保険募集人、宅地建物取引士など一部の職種に就けなくなります。
返済が厳しくても、職業制限が大きな支障になる場合は、個人再生を優先して検討したほうがよい場合があります。
自己破産のデメリット
自己破産には以下のデメリットがあります。
- ブラックリストに載る
- すべての借入が対象になる
- 一定以上の財産が処分対象になる可能性がある
- 借り入れ理由によっては免責されない
- 職業制限がある
信用情報に登録(いわゆるブラックリスト入り)
自己破産をすると、信用情報に事故情報が登録され、破産開始決定から最長7年間影響が残ります。
そのため、新たな借入れやクレジットカードの作成、ローン契約などは難しくなる可能性があります。
すべての借金が対象(債権者を選べない)
自己破産では、原則として一部の債権者だけを外すことはできません。
保証人付きの借金や、住宅ローン、自動車ローンも対象になります。
そのため、保証人へ請求が及ぶ可能性があり、ローン返済中の自宅や車を維持するのは難しいです。
一定額以上の財産は処分される
自己破産では、以下のような一定以上の財産は原則として処分の対象になります。
| 処分対象となる財産例 | 処分基準 |
|---|---|
| 現金 | 99万円を超える分 |
| 預貯金 | 20万円以上 |
| 自動車 | 売却価格20万円以上 |
| 生命保険の解約返戻金 | 20万円以上 |
| 退職金見込額 | 160万円以上の場合 その8分の1の金額 |
自己破産については以下の記事でも詳しく解説しています。
個人再生を優先すべき状況とは?
- 債務整理の中で個人再生を選択すべきなのはどのような状況ですか?
-
任意整理では返済が難しい一方、自己破産は避けたい事情がある場合です。
住宅ローン返済中の自宅を守りたい場合や、自己破産の職業制限が問題になる場合には、個人再生が有力な選択肢になります。
参考:個人再生-東京弁護士会
債務整理にはいくつかの方法がありますが、「個人再生」は次のような方に選ばれています。
- 任意整理では返済が難しい
- 安定した収入がある
- 自己破産の職業制限や免責不許可事由に該当する
- 住宅ローンを返済中で自宅を手放したくない
このような状況の場合は、自己破産よりも個人再生の方が適している可能性があります。
安定した収入が個人再生のカギ
個人再生は、借金を大幅に減額したうえで、原則3年で分割返済していく手続きです。
そのため、継続的で安定した収入が必要になります。
- 1500万円未満の借金
- 借金額の5分の1
- 減額後の金額が100万円未満の場合は100万円
- 1500万円~3000万円未満の借金
- 300万円
- 3000万円~5000万円未満の借金
- 借金額の10分の1
住宅ローン返済中の自宅を守りたい人に向いている
個人再生の大きな特徴は、「住宅資金特別条項」を使える可能性があることです。
これを利用できる場合、住宅ローンは従来どおり支払いながら、その他の借金だけを減額することができます。
個人再生には職業制限や免責不許可事由はない
自己破産と異なり、個人再生には職業制限や不許可事由はありません。
そのため、浪費やギャンブルが原因の借入れがある方や、職業制限が問題になる方でも、個人再生を行うことが可能です。
個人再生のデメリット
- ブラックリストに完済から5年、または登録から7年登録される
- 継続的で安定した収入がなければ手続きできない
- 自己破産と異なり、返済義務が残る(全額免除ではない)
ブラックリストの期間については以下の記事でも詳しく解説しています。


「財産を守りながら借金を整理したい人」に個人再生は有効な選択肢
個人再生は借金の大幅な減額が可能でありながら、自宅や職業などの重要な要素を守れる可能性のある手続きです。
「自宅は守りたい」「職業制限を避けたい」といった方には、自己破産よりもメリットが大きいこともあります。
個人再生については以下の記事でも詳しく解説しています。
各手続の向き・不向き(実務目線の判断基準)
実際の相談では、借金額だけで決めるのではなく、返済原資、守りたい財産、保証人の有無、職業上の制約を踏まえて手続きを選びます。
任意整理(和解で利息カット+分割返済)
- 向いている人
- 元金のみを36〜60回で返済できる
- 職業制限や財産処分を避けたい
- 向いていない人(検討要)
- 元金ベースでも返済が難しい
- 保証人付き債務があり影響を最小化したい
- ポイント
- 受任通知で督促は停止される
- 一部の債権者は36回以下の分割払いしか認めない
- 和解条件は債権者ごとに異なる(利息、分割回数など)
個人再生(大幅減額+住宅資金特別条項)
- 向いている人
- 継続収入があり、計画的な返済が可能
- 自宅を守りたい(住宅ローン条項の活用)
- 任意整理では返済ができないが破産は避けたい
- 注意点
- 再生計画に沿った長期間の返済が必要
- 財産があるとあまり減額されない可能性あり
自己破産(免責で原則支払い義務が免除)
- 向いている人
- 収入・資産から見て返済の見込みが立たない
- 注意点
- 一部の職業は制限される期間がある
- 財産が処分される可能性がある
よくある質問
任意整理から個人再生や自己破産に変更はできますか?
可能です。任意整理での返済が現実的でないと判明した場合、要件を満たせば再生や破産へ移行できます。
手続中に家族へ知られますか?
個人再生と自己破産は同居の家族の収入証明が必要になることがあります。任意整理ではそのような書類は不要なため、家族に知られる可能性は非常に低いです。
債務整理できない借金はありますか?
税金・社会保険料・養育費などの「非免責債権」は対象外です。


債務整理をした後に賃貸契約は可能ですか?
信販系の保証会社を利用する場合は審査に落ちる可能性があります。保証会社を通さない契約や信販系以外の保証会社を利用すれば契約できる場合もあります。


まとめ
- 元金を分割で返済できるなら任意整理を検討する
- 任意整理でも厳しいなら自己破産を比較する
- 自宅を守りたい、自己破産を避けたいなら個人再生を検討する
実際の相談では、返済額だけでなく、車や自宅を残したいか、保証人に配慮したいかなどの事情を踏まえて手続きを選びます。
実際の対応例は、以下の記事で詳しく解説しています。


司法書士からのアドバイス
債務整理には「ブラックリストに登録される」「ローンやクレジットカードが使えなくなる」といったデメリットがあります。
しかし、借金の返済に追われて支障が出ている場合、債務整理によって得られる安心感や生活再建のメリットの方が大きいこともあります。
どの方法が自分に適しているかは、客観的な判断が必要です。
当事務所では、受任から交渉、解決に至るまで、司法書士の三浦が完全個別担当制で直接サポートいたします。
お電話での即時対応は難しいため、ご相談はLINE・チャットにて承っております。
裁判所からの通知が届いているなど、緊急案件については、ご相談者様の利益を考え、即時対応可能な他事務所を推奨する場合がございます。
まずは現在の状況について、LINEやメールからお気軽にお声がけください。


