自己破産とは?認められる条件・デメリット・手続きの流れを司法書士が解説

当サイトの記事は、 司法書士 三浦永二(東京司法書士会/登録番号7300号) が執筆・監修しています。

自己破産は、返済できなくなった借金の支払い義務を、裁判所に免除してもらう手続きです。

自己破産が認められる基準、手放す財産と残せる財産、デメリットが及ぶ範囲、手続きの流れを、司法書士が実務の視点で解説します。

どの手続きが合うか迷う方へ:自己破産・個人再生・任意整理の選び方を1ページで整理しています。

この記事のポイント

認められる条件
借金を3〜5年で分割しても返せない状態なら、自己破産の対象になる可能性があります
残る支払い
税金・国民年金保険料・養育費などは、自己破産をしても免除されません
手放す財産
不動産と、20万円を超える預貯金・車・保険などが対象です(東京地裁)
主な制限
信用情報への登録(5〜7年)と、手続き中の資格制限があります
免責の可否
浪費やギャンブルが原因でも、裁量免責が認められる余地があります

参考:自己破産-東京弁護士会

目次

自己破産とは?

自己破産はどのような手続きなのか教えてください

自己破産は、借金の返済が困難になった方が、裁判所の手続きにより借金の支払い義務を免除してもらう法的な救済制度です。

自己破産が認められる基準

自己破産が認められるのは、借金を返せない状態(支払い不能)にあると裁判所が判断した場合です。

実務では、借金の元金を3〜5年で分割したときに、毎月の返済額を用意できるかどうかが一つの目安になります。

ケース借金の元金5年分割の月額返済に回せる額判断の目安
Aさん400万円約6.7万円月4万円自己破産の対象
Bさん300万円5万円月8万円任意整理で返済できる
Cさん150万円2.5万円月1万円自己破産の対象

借金の額だけでは決まらず、収入や生活費との関係で判断されます。

また、不動産や車などの財産を処分すれば返済できる場合は、支払い不能とは認められません。

自己破産で楽になった

50代 男性

借金で心身ともに限界でしたが、司法書士の先生に相談し自己破産を決断。督促が止まり、精神的に本当に救われました。

自己破産のメリット

01

借金がゼロに

支払い義務が
免除される

02

督促が止まる

依頼後すぐに
連絡が止まる

03

生活を立て直せる

収入を生活費に
回せる

司法書士や弁護士に依頼すると、債権者に受任通知が送られ、貸金業者やカード会社からの電話や郵便による督促が止まります。

督促を気にせず、収入を生活費に回しながら再スタートを切れます。

自己破産でも免除されない支払い

免除される

  • 消費者金融・カードローン
  • クレジットカードの利用残高
  • 銀行からの借入れ
  • 家族・知人からの借金

免除されない

  • 税金・住民税
  • 国民健康保険料・国民年金保険料
  • 養育費・婚姻費用
  • 知っていて申告しなかった借金

借金の返済が苦しい方は、税金も滞納していることが少なくありませんが、税金は自己破産をしても納付の義務が残ります。

税金は役所の窓口で相談すれば、分割での納付を認めてもらえることがあります。

借金は自己破産で整理し、税金は分割で納めていく形になります。

家族や知人からの借金を債権者一覧に載せずに申し立てると、その借金は免除されないため、すべて申告してください。

自己破産のデメリット・注意点

自己破産をすると、どのようなデメリットがありますか?

自己破産の主なデメリットは以下のとおりです。

  • 信用情報機関に事故情報が登録される
  • 20万円を超える財産や不動産は処分される
  • 手続き中は一部の資格・職業に就けない
  • 官報に氏名と住所が載る
デメリットいつまで続くか影響する範囲
信用情報への登録5〜7年借入れ・ローン・クレジットカード
財産の処分開始決定時の財産のみ20万円を超える財産・不動産
資格・職業の制限免責許可決定の確定まで警備員・保険募集人・士業など
官報への掲載2~3回氏名・住所

自己破産をしても変わらないこと

  • 戸籍や住民票に記載されない
  • 選挙権や年金の受給に影響しない
  • 家族名義の財産は処分されない
  • 一般の会社員・公務員は仕事を続けられる
  • 生活に必要な家具・家電は手元に残る

信用情報に事故情報が登録される

自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が登録され、新たな借入れやローン、クレジットカードの利用ができなくなります。

登録期間は信用情報機関ごとに異なり、おおむね5〜7年です(全国銀行個人信用情報センターは破産手続開始決定から7年)。

支払いはデビットカードやPayPayで、ETCはETCパーソナルカードで代わりが利きます。

ブラックリストと生活再建

20代 男性

メインに使っていたクレジットカードが急に使えなくなりましたが、デビットカードや現金払いで家計管理を見直す良い機会になりました

ローンやクレジットカード、スマホ、賃貸はどうなる?など不安が出やすいポイントは、影響と対処法をまとめた記事で詳しく解説しています。

手放す財産と残せる財産(東京地裁の基準)

生活に必要な家具・家電や、99万円までの現金は手元に残せます。

それを超える財産は、破産管財人が売却して債権者への配当に充てます。

財産手元に残せる範囲
現金99万円まで
預貯金20万円まで
保険の解約返戻金20万円まで
自動車査定額20万円まで
退職金見込額160万円まで
(超えると8分の1が対象)
家具・家電生活に必要なものはすべて
不動産原則として処分

この基準は裁判所ごとに異なります。

処分の対象になるのは、破産手続開始決定の時点で持っている財産だけです。

開始決定より後に受け取った給料や財産は、手続き中であっても処分されません。

20万円を超える財産でも、生活に欠かせない事情があれば、裁判所の判断で残せることがあります(自由財産の範囲の拡張)。

資格・職業の制限がある

破産手続開始決定から免責許可決定が確定するまでの間は、下記の一部の資格や職業に就けません。

  • 警備員
  • 生命保険の募集人
  • 宅地建物取引士
  • 司法書士
  • 弁護士
  • 税理士など

免責許可決定が確定すると制限は自動的になくなり(復権)、同時廃止ならおおむね3〜4か月、管財事件なら半年〜1年ほどで元に戻ります。

一般の会社員や公務員は、自己破産をしても仕事を続けられます。

株式会社の取締役は破産で一度退任になりますが、株主総会で再び選ばれれば続けられます。

官報に氏名・住所が掲載される

破産手続開始決定と免責許可決定の際に、官報(国が発行する機関紙)に氏名と住所が載ります。

官報を日常的に読む人は限られており、これが原因で周囲に知られることはほとんどありません。

自己破産の手続きの流れとポイント

自己破産は、依頼から免責許可決定の確定まで、次の順に進みます。

1相談・依頼

借入先・収入・財産を確認し、自己破産が適しているかを判断します。
依頼すると債権者へ受任通知が送られ、貸金業者からの督促が止まります。

2書類の準備

通帳・給与明細・源泉徴収票・保険証券などを集めます。
債権者一覧表・財産目録・家計収支表を作ります。

3裁判所への申立て

住所地を管轄する地方裁判所に申立書を提出します。
支払い不能と認められると、破産手続開始決定が出ます。

4財産と事情の調査

処分する財産や調べるべき事情があるかで、同時廃止か管財事件かに分かれます。

5免責許可決定

免責許可決定が確定すると、借金の支払い義務がなくなります。
このとき資格制限も解除されます。

※STEP4では、手続きが次のどちらかに分かれます。

処分する財産や、
調べるべき事情があるか
ない

同時廃止

管財人は選ばれず、開始決定と同時に破産手続きが終わります。
免責の確定まで3〜4か月が目安です。

ある

管財事件

破産管財人が財産を調べ、売却して債権者に配当します。
予納金が必要で、免責の確定まで半年〜1年が目安です。

同時廃止か管財事件かは、申立ての内容を見て裁判所が決めます。

自己破産手続き

30代 男性

申立から免責決定まで約8か月かかりましたが、事務所の方が親切な対応をしてくれたおかげで、不安なく終えられました

司法書士と弁護士、どちらに依頼するか

司法書士は、自己破産では裁判所に出す書類の作成を担当し、代理人として申し立てることはできません。

同時廃止で終わる事案なら、どちらに依頼しても結論は変わりません。

しかし、東京地裁では代理人を選任したかどうかで予納金に差を設けており、東京司法書士会は法律上の根拠がないと改善を求めています。

管財事件になりそうな事案は、この差が実際の負担として出るため、弁護士に依頼したほうが軽く済みます。

司法書士弁護士
関わり方申立書類の作成代理人として申立て
申立人本人弁護士
即日面接(東京地裁)使えない使える
少額管財(東京地裁)使えない使える
管財事件の予納金50万円以上20万円

即日面接は、申立て後すぐに裁判官と代理人弁護士が面接し、開始決定まで短縮できる東京地裁の運用です。

予納金の差についての根拠

東京司法書士会の会長声明(令和7年5月23日)
東京地裁民事第20部の少額管財は、代理人が選任されている申立ての予納金を一律20万円とする一方、代理人を選任しない本人申立てには一律50万円以上を求めており、代理人を選任しなかったという理由だけで最低30万円の差が生じると指摘しています。
本人申立ての割合
同声明によると、東京地裁民事第20部での本人申立ての割合は、平成11年の14.18%から平成19年には0.21%まで下がっています。

任意整理・個人再生との違い

3つの手続きの違いは、借金がどこまで減るかと、何を手放すかにあります。

自己破産は借金の支払い義務がなくなる代わりに、財産の処分や資格制限があります。

任意整理個人再生自己破産
減り方利息が消える5分の1程度全額なくなる
対象の借金選べるすべてすべて
持ち家残せる残せる処分される
資格制限なしなし手続き中あり
官報載らない載る載る
借金の理由影響なし影響なし免責の審査あり

持ち家を残せるかどうかは条件があり、任意整理は住宅ローンをそのまま払い続けること、個人再生は住宅資金特別条項を使うことが前提です。

借金500万円を整理した場合の返済額

任意整理500万円
個人再生100万円
自己破産0円

任意整理は将来利息をカットした元金、個人再生は最低弁済額の場合です。

財産が多いと、個人再生の返済額は増える可能性があります。

任意整理では難しかったケース

40代 男性

任意整理で何とか返済を続けてきましたが、病気で収入が減り自己破産へ切り替え。もっと早く相談すればよかったと実感しています

免責不許可事由

どんな借金でも自己破産をすることができますか?

自己破産は、原則としてすべての借金を免除してもらえる国の救済制度です。

しかし、「どんな場合でも必ず借金がゼロになる」わけではありません。

法律上、一定の不正行為や社会的に問題のある事情がある場合には、免責(借金免除)が認められないことがあります。これを「免責不許可事由」といいます。

次の行為があると、免責が認められない可能性があります(破産法252条1項)。

分類主な行為
財産を減らす財産を隠す、親族名義に移す、相場より安く売る(1号)
換金行為クレジットカードで買った商品を安く売って現金にする(2号)
偏った返済家族や知人など、一部の債権者にだけ返す(3号)
浪費・ギャンブル浪費やギャンブル、投機で借金を大きく増やした(4号)
偽った借入れ申立て前1年以内に、返せないことを隠して借りた(5号)
書類の偽り帳簿を隠す・偽造する、債権者名簿に嘘を書く(6・7号)
手続きへの非協力説明を拒む・嘘をつく、管財人の職務を妨げる(8・9・11号)
過去の免責前回の免責許可決定の確定から7年以内(10号)

闇金からの借入れそのものは、免責不許可事由には挙げられていません。

ただし、闇金は受任通知を送っても取り立てをやめないことがあるため、早めに警察や専門家へ相談してください。

浪費・ギャンブル・投資が原因の場合

借金の主な原因が浪費やギャンブルでも、それだけで自己破産ができなくなるわけではありません。

FX・株の信用取引・暗号資産などの投資で膨らんだ借金も、同じように免責の判断で問題になることがあります。

高額な買い物やギャンブルをしたことがあるだけで、直ちに該当するわけではありません。

裁量免責で認められる場合

免責不許可事由があっても、裁判所が事情を考慮して免責を認めることがあります(裁量免責)。

経緯を正直に説明し、管財人の調査に協力し、家計の立て直しに取り組んでいれば、免責が認められる例は少なくありません。

ただし、この場合は管財事件になり、破産管財人が免責の可否を調べるのが一般的です。

根拠となる条文(破産法)

252条1項
財産の隠匿、浪費・賭博、偽った借入れ、説明の拒絶など、免責を許可しない事由を定めています。
252条2項
免責不許可事由があっても、一切の事情を考慮して免責を許可できる(裁量免責)と定めています。
253条1項
税金、養育費、悪意で加えた不法行為の損害賠償などは、免責されない債権と定めています。

よくある質問Q&A

自己破産すると家族の財産や口座も処分されますか?

処分の対象になるのは本人名義の財産だけで、家族名義の財産や口座が処分されることはありません。

ただし、名義が家族でも実際には本人のお金で作った預金などは、本人の財産として扱われます。

家族が借金の保証人になっている場合は、保証人である家族に請求が行きます。

自己破産後に就職や転職で不利になることはありますか?

ほとんどの職種で自己破産が直接就職・転職に影響することはありません。

ただし、破産手続き中は保険募集人や警備員、弁護士・司法書士など一部の「資格制限職」に就くことができません。

自己破産したことは会社に知られますか?

会社から借入れ(社内貸付)がある場合は、会社も債権者になるため知られます。

退職金の見込額を示す書類を会社から取り寄せる際に、理由を聞かれることもあります。

それ以外で、裁判所や債権者から会社に連絡が行くことは通常ありません。

自己破産をしても携帯電話・スマホは使い続けられますか?

料金を滞納していなければ、今の携帯電話・スマホはそのまま使えます。

端末代の分割払いが残っている場合は、その残額も破産手続きの対象に含められる可能性があります。

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