個人再生とは?自己破産と何が違う?メリットとデメリットを解説

  • 個人再生はどんな手続きなのか
  • 任意整理や自己破産との違い
  • どのような場合に個人再生を選択するべきなのか

債務整理と聞くと、任意整理と自己破産を思い浮かべる人が多いと思いますが、債務整理の中には個人再生という手続きもあります。

個人再生は、任意整理では支払っていくのが難しいけど事情により自己破産はできない場合や、住宅ローンがある場合に利用すべき手続きです。

他の債務整理とどう違うのか?個人再生をするとどう変わるのか?

  1. 個人再生のメリットとデメリット
  2. 任意整理や自己破産との違い
  3. マイホームを守るための条件
  4. 個人再生を選んだほうがいい状況
  5. 個人再生ができない条件

上記の順番で解説していきます。

参考:個人再生-東京弁護士会

目次

個人再生は借金を減額してもらう手続き

個人再生はどのような手続きなんですか?

裁判所に個人再生が認められることで、借金の金額により5分の1ほどまで減額してもらえる手続きです。

減額後の借金は原則3年間で支払うことになるので、36回の分割払いで返済することになります。

条件を満たせば住宅ローンは個人再生の手続きから除外して、住宅ローン以外の借金だけを個人再生することもできます。

個人再生とは=借金を減額してもらい、減額された借金を原則3年間=36回払いで支払っていく手続きです

特別の事情があれば5年間の分割払いも認められる可能性があります。

  • 個人再生は裁判所を通して行う手続きです。
  • 個人再生には、小規模個人再生と給与所得者再生があります。

小規模個人再生と給与所得者再生では、最低弁済額や債権者の同意が必要か否かが異なりますが、詳しくは後述します。

個人再生のメリット

個人再生のメリット
  • 借金が減額される
  • 毎月の返済額が少なくなる
  • 住宅ローンは個人再生の手続きから除外して手続きを行うことができるので、自宅を手放すことなく債務整理ができる

個人再生をすると借金が減額されますが、どのぐらい減額されるのかは小規模個人再生と給与所得者再生で異なります。

小規模個人再生の場合

小規模個人再生での減額割合
  • 1500万円未満の借金=借金額の5分の1(減額後の金額が100万円未満の場合は100万円)
  • 1500万円以上3000万円未満の借金=300万円
  • 3000万円以上5000万円未満の借金=借金額の10分の1

上記の減額した金額と、財産を売却した金額(清算価値)を比べて、高いほうの金額を原則3年、36回の分割払いで支払う手続きです。

清算価値とは=自己破産をした場合、財産は売却されて債権者へ分配しますが、個人再生の減額後の金額は売却額を下回ることはできません。

保険の解約返戻金や退職金の一部も財産として扱われることがあります。

借金が500万円、売却査定額150万円の自動車を所有している場合

借金が500万円だと通常は100万円まで借金は減額されます。

しかし、減額後の借金100万円より自動車の150万円のほうが高いので、高いほうの金額150万円が最低弁済額となります。

上記の場合は、150万円を3年かけて支払っていくことになります。

借金総額以上の高額な財産を持っている場合は、個人再生のメリットが少なくなってしまうことがあります。

給与所得者再生の場合

給与所得者再生の場合は、小規模個人再生の条件にプラスして、可処分所得の2年分の金額も最低弁済額の基準になります。

可処分所得とは給与から税金や、社会保険料と最低限の生活費を引いた金額になります。

※給与-税金-社会保険料-最低限の生活費=可処分所得

最低限の生活費は、民事再生法で規定されていますが、住んでいる場所や家族構成等によって金額が異なります。

給与所得者再生の減額
  • 小規模個人再生と同様の減額後の金額(1500万円未満の借金=借金額の5分の1(減額後の金額が100万円未満の場合は100万円)
  • 1500万円以上3000万円未満の借金=300万円
  • 3000万円以上5000万円未満の借金=借金額の10分の1)

上記の減額した金額と、財産を売却した金額(清算価値)と可処分所得の2年分の金額を比べて、高いほうの金額を原則3年、36回の分割払いで支払う手続きです。

小規模個人再生の場合は債権者の同意が必要

小規模個人再生の場合は、債権者の反対があると個人再生ができない可能性があります。

  • 債権者の過半数が個人再生に反対した
  • 反対した債権者の債権額が借金総額の過半数を超えている

上記のどちらかに該当する場合は小規模個人再生手続きはできません。

この債権者の同意は小規模個人再生のみに必要となる手続きで、給与所得者再生では必要ありません。

給与所得者再生は小規模個人再生よりも減額されない可能性がありますが、債権者の同意が必要ありません。

反対しそうな債権者がいて小規模個人再生ができない場合は、給与所得者再生を選択することになります。

個人再生とは

個人再生のデメリット

個人再生のデメリットを教えてください

債務整理全般に言えることですが、信用情報機関に事故情報が登録されてブラックリストに載ることです。

個人再生をすると官報に載りますが、官報を見られることほとんどないので、あまりデメリットにはならないでしょう。

参考元:信用情報とは-指定信用情報機関のCIC

ブラックリストに登録される

個人再生をするとブラックリストに10年ほど登録されます。

その間はお金を借りるとかローンを組む、クレジットカードを作る、保証人になることは難しくなります。

借金せず現金で生活していくのに不都合はありませんが、どうしてもカードが欲しい場合にはデビットカードがあります。

ETCカードの代用としてはETCパーソナルカードというものがあります。

官報に載る

個人再生をすると「官報」に載りますが、官報を見ている人というのは相当限られます。

官報を知っている人のほうが少ないので、ほとんどの人にとってはデメリットとは言えないかもしれません。

個人再生と任意整理との違い

個人再生と任意整理は何が違いますか?

個人再生は借金が減額されますが、任意整理は利息の免除だけで借金そのものの減額はありません。

個人再生ではすべての借金が対象になりますが、任意整理は一部の借金だけを対象にすることができます。

そのため、任意整理では自動車ローン等を除外して手続きをすることができます。

参考元:債務の整理をしたいと考えています。どのような方法がありますか?-法テラス

借金が減額される

任意整理では利息を0%にしてもらえますが借金自体は減りません。

個人再生では借金が減額されます。

手続きする業者を選ぶことはできない

個人再生では一部の貸金業者だけを選んで個人再生をすることはできません。

すべての貸金業者が個人再生の対象になります。

そのため自動車ローンを支払っている途中で個人再生を行うと、自動車ローンも個人再生の対象になります。

自動車ローンを個人再生すると、通常は自動車はローン会社に引き上げられてしまいます。

任意整理では一部の貸金業者だけを対象にすることができるので、例えば自動車ローンは除外して他の借金だけを整理することができます。

車検証の所有者名義がローン会社や売主ではなく自分の名義になっていれば自動車は引き上げられません。

ただしこれは普通自動車の場合だけで、軽自動車の場合には名義が誰であってもローン返済中の場合は原則は引き上げられます。

自動車ローンを支払い終わっている場合には自動車を失うことはありません。

ただし、自動車は財産として扱われるので、減額後の金額よりも自動車の売却価格が上回る場合には返済すべき金額が多くなります。

裁判所を通して行う

任意整理は裁判所を通さず業者との話し合いのみで行われますが、個人再生は裁判所で認可されることで可能となる手続きです。

個人再生と任意整理の違い

個人再生と自己破産との違い

個人再生と自己破産の違いはなんですか?

自己破産は借金全ての支払いを免除してもらうものです。

個人再生は減額された借金を分割で返済する手続きなので、自己破産の方がより有利な手続きと言えます。

ただし、自己破産では財産の処分、職業制限、免責不許可事由があるので、事情により自己破産ができない場合は個人再生を検討するべきです。

参考:自己破産とは何ですか?-法テラス

自己破産では自宅や車等の財産は原則処分されますし、借金の理由等によっては自己破産が認められない場合等もあります。

そのため、自己破産が認められるような状況の人でも個人再生を選択するほうがメリットがあることもあります。

借金を支払う必要がある

自己破産では借金が帳消しになりますが、個人再生では減額された金額を分割で支払う必要があります。

財産を処分する必要がない

自己破産ではある程度の財産があると売却され、債権者へ分配されますが、個人再生では財産を処分する必要はありません。

職業の制限がない

自己破産では一定期間は資格制限があり仕事に就けない期間があります。

しかし、個人再生では資格制限はないので一定期間仕事ができなくなることはありません。

免責不許可事由がない

自己破産では借金が多額になった理由等によっては自己破産ができなくなります。

個人再生では借り入れ理由等で不許可にされることはありません。

個人再生と自己破産の違い

個人再生の条件

個人再生はどのような場合に認められますか?

個人再生は支払い不能の恐れがあること、安定して継続した収入があること、住宅ローン以外の借金総額が5000万円以下という条件があります。

お金を借りて返済している、自転車操業になっているなら返済不能の恐れがあることに該当する可能性が高いです。

返済が困難な状況

個人再生は支払い不能の恐れがある場合に認められるものなので、返済に余裕がある場合に個人再生は認められません。

安定した継続的な収入があること

自己破産と違い、減額後の借金を長期の分割で返済していく手続きなので、安定した継続収入があることが条件です。

派遣社員やアルバイト、パートだから個人再生ができないということではありません。

安定した収入があり、減額後の借金を3年間継続して分割で支払っていけるのであれば問題ありません。

短期のアルバイトや日雇いでは安定した継続的な収入がないと判断される可能性があります。

住宅ローンを除いた借金の総額が5000万円以下

住宅ローン以外の借金が5000万円以上ある場合には個人再生はできません。

ちなみに100万円以下の借金だと減額されないので借金総額が100万円以下の人は、個人再生をするメリットはありません。

個人再生の条件

住宅資金特別条項で自宅を守りながら個人再生ができる

個人再生では住宅ローンを外して手続きをすることができますか?

住宅資金特別条項を利用できれば住宅ローンを除外して個人再生することができます。

ただし、本人名義の居住用であること等、住宅資金特別条項を利用するには条件があります。

個人再生を選択するメリットとして、住宅資金特別条項があります。

住宅資金特別条項を利用することで住宅を手放すことなく、住宅ローン以外の借金だけを減額することができます。

ちなみに住宅ローンには抵当権が付いているリフォームローンも含まれます。

住宅資金特別条項を利用するには条件があります。

住宅資金特別条項の条件
  • 個人再生をする人の名義の建物で居住用の自宅であること
  • 床面積の1/2以上が居住用であること
  • 住宅ローン以外の担保権が設定されていないこと
  • 滞納による保証を実行されてから6か月以上経過していないこと

個人再生をする本人名義で本人が住むための住宅であること

住宅資金特別条項が認められるには、個人再生を申し立てる本人所有の物件で、その本人が住むための住宅であることが必要です。

家族等との共有の状態、本人の持ち分2分の1、妻の持ち分2分の1という共有の状態でも問題ありません。

本人が住むための自宅である必要があるので、セカンドハウスや投資用の物件の場合には認められません。

床面積の1/2以上が居住用であること

店舗兼住宅にように自宅を事業にも利用している場合は、床面積の1/2以上が居住の用に使用されていることが条件になります。

居住用に使用している面積よりも、店舗等の居住用以外に使用している面積の方が多い場合は認められません。

住宅ローン以外の担保権がついていないこと

住宅ローンの抵当権以外の担保権が設定されている場合には認められません。

住宅ローン以外に、消費者金融や銀行から自宅を担保にだして抵当権や根抵当権が設定されている場合

いわゆる不動産担保ローンがあると住宅資金特別条項は利用できません。

夫婦でペアローンを組んでいる場合には抵当権が2つ設定されますが、夫婦どちらからも個人再生を申し立てた場合には認められる可能性があります。

また、一方からの申し立てのみの場合でも、もう一方は住宅ローン以外の借金がない場合には認められる可能性があります。

住宅ローン以外に不動産担保ローン等の担保権が自宅に設定されている場合は個人再生から除外することはできない

住宅ローン滞納により保証を実行されてから半年以上経っていないこと

住宅ローンには保証会社が付きますが、住宅ローンの支払いに滞納等あった場合、保証会社は名義人に代わって銀行に対し住宅ローンを支払います。

これを保証の実行といいますが、保証の実行から6か月以上経つと住宅資金特別条項の適用は認めれらません。

どのような状況の場合に個人再生を選ぶべきか

個人再生を選択したほうが良いのはどのような場合ですか?

任意整理では毎月の返済をしていけない場合には自己破産か個人再生を検討すべきです。

自己破産の方が借金をすべて支払う必要がなくなるのでメリットはあります。

しかし、職業制限や免責不許可事由があったり、自宅や車等の財産を守りたい場合に個人再生を選択するメリットがあります。

任意整理では支払いが困難

任意整理では利息を免除してもらうだけで借金は減額されません。

任意整理で利息をカットして3年ほどの分割を組んでも毎月の返済ができない場合には、個人再生か自己破産を検討すべきです。

個人再生では原則借金が5分の1まで減額されるので、任意整理に比べ毎月の支払額を大幅に減らせることができます。

職業制限や免責不許可事由等により自己破産はできない

自己破産では破産手続き中は就けない職業がありますが、個人再生ではそのようなことはありません。

職業上自己破産はできない場合や、自己破産では免責不許可事由に該当する可能性がある人に個人再生はおすすめです。

マイホームを守りたい

住宅資金特別条項を利用することで住宅ローンを除いた借金だけを減額することができます。

マイホームを売却等することなく、住宅ローン以外の借金の支払いの負担を軽減できます。

個人再生を選択すべき基準

個人再生を選べない場合

個人再生を選ぶべきではないのはどんな場合ですか?

借金が減額されても毎月の支払いができそうにない場合には自己破産しか選択肢はありません。

また、ある程度の財産をもっていて財産価値が高い場合は、個人再生をするメリットはなくなります。

以下の状況であれば個人再生手続きではなく、他の債務整理手続きを選ぶべきです。

また、小規模個人再生の場合は、過半数の債権者が反対した場合には認められません。

過半数の債権者が反対してくる可能性がある場合は小規模個人再生は選ぶべきではありません。

借金が減額されたとしても支払いができない

個人再生は減額してもらった金額を原則36回、特別な事情があれば60回分割で支払う手続きです。

少なくとも減額後の借金を60回で割った金額を毎月支払っていくことが出来ない場合には個人再生はできません。

その場合は自己破産を選択すべきです。

仕事をしていない

安定して継続した収入があることが条件となるので、収入がない状況では個人再生は認められません。

借金総額以上の財産を持っている

借金総額以上の財産を持っている場合は個人再生をしても借金が減額されません。

まとめ

個人再生のメリット
  • 借金が減額される
  • 毎月の返済額が少なくなる
  • 住宅ローンは個人再生の手続きから除外して手続きを行うことができるので、自宅を手放すことなく債務整理ができる

個人再生手続きについてまとめました。

個人再生をするには支払い不能の恐れがあること、安定して継続した収入があることという条件があります。

借金が5分の1ほどまで減額されて3年間の分割での支払いになるので、個人再生をすると支払いが大分楽になります。

住宅資金特別条項を利用できれば住宅ローンを除外して個人再生をすることで、自宅を失うことなく他の借金だけを減額できます。

任意整理や自己破産よりも複雑な手続きですのであまりピンとこない人も多いですが、特に住宅ローンを組んでいる人にはとてもメリットがある手続きです。

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