任意整理しなければよかったと後悔するケースを現役の司法書士が解説

当サイトの記事はすべて司法書士三浦永二(東京司法書士会所属、登録番号7300号)が執筆しています。

任意整理は、借金の返済負担を減らすことができる有効な手段ですが、「任意整理なんてしなければよかった」と後悔する人もいます。

実際に、「任意整理をしなければよかった」と後悔した方の具体的な事例や、失敗を避けるためのチェックリストも掲載しました。

専門家としての豊富な経験をもとに、「後悔しない任意整理の選び方」を専門家目線でわかりやすく解説します。

リスクを事前に把握しておけば、任意整理のメリットを最大限活かし、後悔せずに手続きすることができます

参考元:債務整理-東京司法書士会

目次

ブラックリストに登録されて後悔するパターン

任意整理のデメリットを教えてください

任意整理をするとブラックリストに登録されます。

ブラックリストに登録されるとお金を借りたりローンを組むのは難しくなったり、クレジットカードも使えなくなる可能性があります。

参考元:信用情報とは-指定信用情報機関のCIC

任意整理は、裁判所を通さずに債権者と交渉して利息カット、分割返済の和解を図る制度です。

この手続きを行うと、「債務整理をした」という事実が信用情報機関(CICやJICCなど)に事故情報として登録されます。

これが、一般的に「ブラックリストに載る」と呼ばれる状態です。

この登録(法的には「異動情報」と呼ばれます)は、各種ローンやクレジットカードの審査時に大きなマイナス評価となります。

任意整理だけでなく、長期の返済滞納などでもブラックリストに登録される点には注意が必要です。

ブラックリストに登録される期間

任意整理によってブラックリストに登録されると、任意整理した借金を完済してから5年間は登録が残ります。

つまり、完済までの年数+5年=ブラック状態の期間となります。

任意整理後に3年かけて完済すると、そこから5年間は登録が残るので、8年間ブラックリストに登録されることになります。

任意整理中+完済から5年間
ブラックリストに登録される
任意整理中
完済後も5年は影響が残る

ブラックリストに載る期間については、以下の記事でも詳しく解説しています。

お金を借りるのは難しくなる

信用情報に事故情報があると、銀行やカード会社は「貸し倒れリスクが高い」と判断するので、融資審査に通るのは難しくなります。

すでに利用中のカードローンも借入ができくなることがあります。

お金を借りたりローンを組んだりせず、現金で生活をするのであれば不便を感じることはないでしょう

クレジットカードが解約になる

  • 任意整理をするクレジットカードは強制的に解約になる。
  • 任意整理しないクレジットカードも利用ができなくなる可能性が高い
  • 新規のクレジットカード申込も、審査落ちとなる可能性が高い

クレジットカード会社は定期的に信用情報を確認し、ブラックリスト登録が判明すれば利用停止や更新拒否となる可能性があります。

カードが利用できなくなっても、スマホ決済やデビットカードを利用して買い物等はすることができます

【体験談】クレジットカード利用停止

30代 男性

任意整理をしてから半年後、急にクレジットカードが使えなくなり、出先で支払いができずに困りました。家族にも不審がられてしまいました。

ローン契約ができなくなる

ローン契約の際も必ず審査が行われます。

そのため、ブラックリストに登録されている状態では支払いができなくなると判断されるので、審査に通るのは難しいです。

スマホの契約にも影響がでる

  • 携帯電話やスマートフォンを分割払いで購入することも難しくなる
  • 機種代金を一括払いで購入する際は審査はなし

そのため、任意整理後は、高額ではない機種を一括払いで購入して利用している人は多いです。

【体験談】スマホの分割払い

20代 女性

スマホの機種変更を分割払いで申し込んだところ、審査に通らず断られてしまいました。まさか任意整理がここまで影響するとは思いませんでした。

スマホの分割払いへの影響については、以下の記事でも詳しく解説しています。

保証人になることができなくなる

保証人になる人がブラックリストに登録されていると、保証人へ請求しても支払ってもらうことは難しいと判断される可能性が高いです。

そのため、ブラックリストに登録されている人が保証人になることは難しいです

家賃保証を利用できなくなる

賃貸で部屋を借りる際は、保証会社の利用が必須条件の物件は多いですが、保証会社によっては審査の際に信用情報を確認します。

その際にブラックリストに登録されていると、家賃の支払いも滞る可能性があると判断されて審査に通るのは難しくなるからです。

ブラックでも部屋を借りるには

  • 信用情報を確認しない保証会社にする
  • 保証会社不要の物件を選ぶ

上記であれば、ブラックリストの影響はありません。

仲介業者によっては、信用情報を確認しない保証会社や、保証会社不要の物件を探してくれることもあります。

賃貸の相談をする際は、ブラックリストに登録されている旨を正直に話して相談するべきです

賃貸については以下の記事でも詳しく解説しています。

ブラックリストで後悔しないために

ブラックリストに登録されると様々な影響が発生するので、このような影響がでても問題がないか事前に確認が必要です。

以下のような生活スタイルであれば影響はない

  • 借金やローンを利用せず収入の範囲で生活をする
  • ネットショッピング等ではデビットカードや家族カード、スマホ決済で対応
  • スマホは分割払いが難しくなるので、一括払いで購入する

任意整理を検討する際は、メリット(利息カット・返済負担の軽減)と、デメリット(信用情報への影響)を冷静に比較することが重要です。

事前にリスクを理解し、生活への影響を想定しておくことが、後悔のない任意整理につながります

任意整理のメリットについては以下の記事でも詳しく解説しています。

任意整理のメリット、後悔するポイント、ブラックリストに登録されたらどうするか、後悔しないためにすること

ブラックリストで後悔した人の口コミ

弁護士や司法書士の費用が高い

任意整理の費用は事務所によって異なりますか?

任意整理にかかる費用は、依頼する法律事務所や司法書士事務所によって異なります。

相場より高額な費用を請求する事務所もあり「もっと安い事務所に依頼すればよかった」と後悔することもあるようです。

弁護士・司法書士の報酬には一定のルールがありますが、必ずしもすべての事務所が順守しているとは限りません。

依頼前に費用の内訳をよく確認することが大切です。

参考元:債務整理の弁護士報酬のルールについて-日本弁護士連合会

債務整理事件の処理に関する指針の制定について(会長談話)-日本司法書士会連合会

任意整理の費用相場|一般的な報酬体系を知ろう

  • 費用相場は、1社あたり5万円~10万円
  • 雑費や通信費等、色々な費用がかかり相場以上の費用の事務所もある
  • ホームページに書かれていない費用が必要になる事務所もある

ホームページで費用が公開されているか確認し、相談の際は追加でかかる費用があるかも確認するべき

【体験談】費用が高額

50代 男性

最初にネット広告で見た事務所に依頼しましたが、後で調べると相場よりも高い報酬を払っていました。もう少し冷静に比較すればよかったと感じています。

債務整理の費用の支払い方法等については、以下の記事で詳しく解説しています。

費用とメリットを比較

借り入れの内容にもよりますが、通常は完済するまでに利息だけで数十万円ほど支払うことが多いです。

仮に利息18%で50万円を借りて毎月15,000円支払っていくと、完済までに利息だけで20万円ほど支払うことになります。

任意整理で利息がなくなることで、数十万円ほどのメリットが発生する可能性があります。

任意整理のメリット
任意整理前
半分が利息の支払い
任意整理後
返済した金額の分だけ元金が減っていく

借入額が少額だと費用倒れになる

借入額が少額の場合は、任意整理による利息カットのメリットより費用が高くなる「費用倒れ」に注意が必要です。

仮に10万円借りて毎月1万円を返済していく場合は、完済までに支払う利息は1万円未満です。

A社では10万円の借入、B社では50万円を借りている場合

A社は任意整理せず、B社のみ任意整理をするということも可能です。

費用で後悔した人の口コミ

任意整理の費用が高いとデメリット

任意整理をすると毎月の返済額が増えることも

任意整理をして毎月の返済額が増えることはありませんか?

あまりないことですが、借入金額が多い場合で長期の分割払いに応じてもらえないと、任意整理をすると毎月の返済額が増えてしまうこともあります。

そのケースでも完済までの期間は短くなり、利息がなくなることで完済までに支払う金額も減ることにはなります。

毎月の返済額が増える原因
  • 高額な金額を借りている
  • 長期の分割払いに応じてもらえない

上記のケースでは、任意整理をすることで毎月の返済額が増える可能性があります。

返済額が増えるケースでもメリットはある

返済額が増える場合でも「利息がなくなることと、完済までの期間が早まる」というメリットがあります

100万円を借りて毎月2万円返済、任意整理をして36回の分割払いになると

100万円÷36=27,777円で、毎月の返済額は28,000円ほどになり返済額が増えてしまいます。

ただし、100万円を任意整理せず毎月2万円の返済では、完済までに利息だけで55万円以上支払う必要があります。

また、任意整理をすると3年で完済できますが、しない場合は完済までに6年6ヵ月かかります。

ちなみに100万円の借入を60回の分割払いにできれば、毎月の返済額は17,000円ほどになります。

全体の返済額で判断しよう|1社単位ではNG

1社だけ返済額が増えても、他の会社の返済額が減れば、全体の月々の返済額が下がることもあります。

任意整理前=合計3万円の返済
A社
毎月1万円
B社
毎月1万円
C社
毎月1万円
任意整理後=合計2.4万円の返済
A社
毎月1.2万円
B社
毎月6000円
C社
毎月6000円

長期の分割払いに応じない会社は少ない

長期間の分割払いに応じない会社もありますが、大手の消費者金融やクレジットカード会社は長期の分割払いに応じてくれる可能性は高いです。

そのため、任意整理をすることで逆に毎月の返済額が増えてしまう可能性は低いです

長期の分割払いに応じない会社は事前にわかる

多くの専門家は、長期の分割払いに応じない会社のことは把握しているので、事前に返済額が増える可能性があるかどうかはわかります。

そのため、まずは返済額が増える可能性については、あまり気にせずに相談をしてみるべきです。

毎月の返済額
  • 1社だけ毎月の返済額が増えても、全体として毎月の返済額が少なくなることがある
  • 1社の返済額ではなく、1ヵ月の返済総額で考える必要がある

無理な任意整理は自己破産につながることも

任意整理後に返済ができなくなった場合はどうなりますか?

任意整理をしても支払いができないとなると、後は個人再生や自己破産しか方法はなくなります。

収入と支出に対してギリギリの返済内容で任意整理をすると、結局その後に支払いができなくなってしまうこともあります。

任意整理は利息をカットできる反面、借金の元本は返済する必要があります。

収支に余裕がない状態で無理に任意整理をしてしまうと、途中で返済できなくなる可能性があります。

任意整理後に返済ができなくなると、最終的に自己破産せざるを得なくなるケースも少なくありません。

任意整理後に自己破産をするデメリット

  • 追加の手続き費用がかかる
  • 信用情報の回復がさらに遅れる(自己破産を最初にしていれば、信用情報の回復も早かった可能性)
  • 精神的・時間的負担が大きい

病気や怪我、仕事の都合等などで収入が減る可能性も考えて、あるていどは返済に余裕を持たせたプランを立てることも重要です。

ブラックリストの影響がなくなるまでの期間

自己破産をした際に、ブラックリストの影響がなくなるのは「自己破産をしてから最長で7年です」。

任意整理後に自己破産をすると、「任意整理中+自己破産から7年」ブラックリストに登録されます。

そのため、最初から自己破産をしていた方がブラックリストの影響がなくなるのは早くなります。

任意整理の依頼から自己破産までの
期間分影響が長引く
最初から自己破産
7年で影響がなくなる
任意整理した後に自己破産
期間が増加する
任意整理では返済が難しい場合
  • 任意整理後に返済ができなくなると、個人再生か自己破産を検討する必要がある
  • 返済が難しそうなら、最初から個人再生や自己破産を検討するべき

どの債務整理が適正かについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

家族にバレてしまった

任意整理をして家族にバレてしまうことはありませんか?

自己破産や個人再生と異なり、任意整理では家族や会社から取得する書類はないため、家族にバレてしまう可能性は低いです。

ただし、ブラックリストに登録されるため、クレジットカードが使えなくなったりローンを組めないことで家族に知られてしまう可能性はあります。

自己破産や個人再生とは異なり、任意整理では家族や会社から書類を取り寄せる必要がなく、手続き自体も本人だけで完結できます。

また、弁護士や司法書士からの郵送物や連絡方法は、事前に指定ができます。

郵送や連絡方法
  • 事務所名が入った封筒
  • 無地の封筒
  • 本人限定受取郵便
  • 郵便局留め
  • 来所での受け取り

連絡方法についても、事務所によっては電話ではなくメールやLINEが可能です。

ブラックリストの影響には注意が必要

ブラックリストの影響で、カードが使えなくなったり、新たなローンが組めなくなります。

これにより、家族に不審がられることはありますが、例えば「カードの支払いを忘れてしまった」などと言い訳する人も多いです。

カードやローンの審査は総合的な判断になるので、ブラックリストに登録されていなくても審査に通らないこともあります。

任意整理をしても家族や職場に知られる可能性は低いが、ブラックリストの影響等で知られる可能性はあります

債務整理が家族にバレるかについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

滞納中ならむしろ任意整理をしたほうがバレにくい

すでに借金を滞納している場合は、貸金業者から督促状や電話が来るため、家族にバレるリスクが高くなります。

その点、任意整理をすれば督促はストップします。

今まさに返済が難しい状況にあるなら、むしろ早めに任意整理をしたほうが家族にバレにくいと言えます

任意整理で後悔しないために

任意整理をしなければよかったと後悔しないためにはどうすればいいですか?

費用はホームページで比較をしてなるべく安い事務所に相談をするべきです。

ブラックリストの影響もでるので、任意整理をするメリットとブラックリストに登録されるデメリットを比較しよく検討するべきです。

後悔しないためのチェックポイント
  • ブラックリスト登録などのデメリットを事前に正しく理解し、メリットと比較する
  • 任意整理の費用や追加料金の有無を複数の事務所で比較・確認する
  • 専門家の説明が不十分・対応が不誠実な場合は即決せず他の事務所も検討
  • 一時的な返済困難の場合は、まずはリスケジュール(返済猶予)も選択肢

ブラックリストの影響を理解しておく

任意整理を後悔しないためには、あらかじめデメリットを理解したうえで判断することが重要です。

最大のデメリットは、完済から約5年間ブラックリストに登録されることです。

ブラックリストのデメリットと、任意整理で返済が楽になるメリットを比較して良く検討しましょう。

任意整理の費用は事前に比較・確認を

任意整理の費用は、1社あたり5~10万円が相場です。

複数のホームページを比較したり、電話で確認してから相談するのがおすすめです。

信頼できる専門家に依頼する

任意整理を成功させるには、信頼できる弁護士や司法書士に依頼することが不可欠です。

説明が不十分な事務所や、強引に契約を進めようとする事務所は避けるべきです。

対応に納得がいかなければ、その場で契約せずに別の事務所を検討しましょう

後悔しないために
  • ブラックリストのデメリットと任意整理のメリットを比較
  • 費用は1社5万円以下の事務所を選ぶ
  • 弁護士や司法書士の対応次第では別の事務所を検討する

【体験談】任意整理をして良かった

30代 女性

家族に内緒で手続きできたし、利息がゼロになって精神的にもすごくラクになりました。最初は不安だったけど、司法書士の先生が細かく説明してくれて納得して進められました。

事務所の選び方については、以下の記事でも詳しく解説しています。

任意整理をしないという選択肢もある

任意整理は万能ではありません。以下のようなケースでは、必ずしも任意整理をする必要はないでしょう。

  • 今月は厳しいが来月以降は返済できそうな場合
  • 一時的な収入減で、今後安定した返済が見込める場合

こうした場合は、貸金業者に事情を説明すれば、返済を一時的に待ってもらえることがあります(リスケジュール交渉)。

任意整理をするとブラックリストに登録されるため、任意整理をせずに済むのであればそれに越したことはありません。

ただし、返済ができない状態が一時的なものでない場合は、早めに債務整理の相談をするべきです。

返済が難しい場合
  • 一時的に支払えない:貸金業者に返済猶予を相談
  • 継続的に支払えない:早めに債務整理を検討

今月だけ返済できない場合については、以下の記事でも詳しく解説しています。

任意整理をして良かった人の口コミ

任意整理はしたほうがいいのか

任意整理を後悔しないためのポイントまとめ

任意整理は、借金問題を無理なく解決するための有効な手段です。

  • 支払いが苦しい状態から抜け出せる
  • 利息の負担が減る
  • 精神的な不安が軽減される

こうしたメリットを受けられる一方で、リスクや注意点を正しく理解しておくことが大切です。

原因対策
ブラックリストの影響が予想より大きかった信用情報に登録されることの影響を事前に確認
手続き費用が高すぎた費用相場(1社あたり5~10万円)に当てはまるかを確認
月々の返済額が増えた全体でどう変わるか、シミュレーションを提示してもらう
家族に知られた書類送付方法や連絡手段を事前に確認し、郵送や電話に配慮してもらう

司法書士からのアドバイス】

「説明が不十分な事務所」を選んでしまうと、後になって後悔する可能性があります。

後悔を防ぐ最大のポイントは、「信頼できる専門家からの説明をしっかり受け、納得した上で手続きを進めること」です。

また、「家族に知られたくない」「誰にも相談できない」と悩まれる方が多いですが、家族に知られる可能性は低いです。

不安な方は、郵送物や連絡手段の指定もできますので遠慮なくご相談ください。

借金額が少ない人は、費用倒れになることもあるので、どこを整理するのがメリットが大きいかを一緒にシミュレーションしてみましょう。

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