過払い金の時効の条件を司法書士が解説【いつから10年かの起算点】

  • 過払い金は何年で時効になるのか?
  • 最後の完済から10年以内でも時効になることもある
  • 時効が近い場合はどうすればいいのか?

テレビCMの影響か、過払い金の請求に時効という期限があることはある程度浸透しているようです。

しかしこれもテレビCMの影響か、過払い金の時効について勘違いされている方が多い印象です。

過払い金が時効になる条件や、時効が近い場合の対処法について解説していきます。

目次

過払い金請求の時効

過払い金の時効の条件を教えてください

借金を完済してから10年が経過すると、過払い金は時効になり回収をすることができなくなります。

2012年に完済したという人は2022年に時効になります。

過払い金請求の時効は取引が終了(完済)してから10年です。

完済してから10年で時効になるので、現在も支払いを続けている方が時効になるのは後に完済してから10年後です。

※2015年に完済した場合に時効が成立するのは2025年ということになります。

2020年4月に民法が改正され、2020年4月1日以降に発生した債権については、請求できると知った時から5年経った場合にも過払い金の時効が成立することになりました。

しかし2020年4月以前に完済している場合はこの「知ったときから5年」は適用されません。

過払い金の時効

いつまで遡れる?

時効になっていなければ、取引の当初まで遡って過払い金請求をすることができます。

過払い金の計算では貸金業者から取引履歴を取り寄せます。

取引履歴には過去に何年何月何日にいくら借入をして、何年何月何日にいくら返済してきたのかが全て載っています。

取引履歴をもとに取引当初から法律の範囲内の利息だったものとして、引き直し計算を行い過払い金を算出します。

取引履歴には全ての取引が記載されていますが、貸金業者によっては古いデータは破棄されていて、取引の途中からの開示になることがあります。

ニコスでは1994年以前、エポスカードでは1997年以前のデータが破棄されていることがあります。

時効になってなくても貸金業者が倒産すると回収はできない

過払い金が戻ってこない原因には時効以外に、貸金業者の倒産が倒産した場合も過払い金を回収することはできなくなります。

倒産すれば基本的に破産手続きの中で過払い金が返金されますが、基本的には過払い金はほぼ回収することはできません。

大手の貸金業者でも倒産することがあるので、時効までの期間に余裕があったとしても過払い金はなるべく早めに請求したほうがいいでしょう。

取引途中で完済している場合は取引の分断に注意

一度完済後に再度借入をしている場合の時効はどうなりますか

取引の途中で一度完済したことがある人は途中完済時点から10年が経過すると、途中完済時点までの過払い金が時効になる可能性があります。

取引途中で一度完済してから後でまた借りた場合、途中完済時点から10年以上が経過していると、途中完済時点の過払い金が時効になる可能性があります

取引が分断している場合、途中完済したところから10年経っていると途中完済時点で発生していた過払い金が時効になります。

一連計算が認められる場合は途中完済から10年での時効は成立しません。

分断と一連計算の違い
取引の分断

一度完済したところまでの過払い金と、再度借り入れを開始したところからの過払い金とを別々の取引として計算する。

一連計算

途中完済は関係なく最初から最後まで連続して計算をする。

取引が分断しているものとして過払い金を計算すると、一連計算する場合に比べ過払い金は少なくなります。

2005年借入~2009年に完済、再度2010年から借入した場合

取引が分断していると、2009年までの取引で発生した過払い金は完済から10年が経過しているので時効になります。

さらに、2010年からの取引は利息制限法の範囲内の取引であり過払い金は発生しないので、過払い金は全く戻ってこないことになります。

一連計算の場合は、時効が成立するのは最後に完済をしたところから10年です。

そのため、一連計算では途中完済から何年経っていても関係なく取引の最初からの過払い金を請求できます。

途中完済からの時効

取引の分断の条件

完済後、再度借り入れをしている場合にすべて分断となる訳ではありません。最終的には裁判所が判断することになります。

貸金業者は完済から再度借り入れまでの間の期間が、1年以上空いていると分断を主張してくることが多いです。

そのような場合は裁判で争っていくことになりますが、その場合も契約内容や取引形態によって判断は分かれます。

主に基本契約が1つか複数かが重要になります。

基本契約が1つの場合

完済後、再度借り入れを始める際に新しく契約書を交わさないで、同じカードで再度借り入れをした場合は基本契約は1つです。

基本契約が1つの場合は取引の分断とは認められる可能性は低くなります。

ただし、完済してから再度の借り入れまでの空白期間が1年以上空いていると、取引は分断していると判断される場合があります。

基本契約が複数の場合

完済後に次の借入時に再度、貸金業者と契約書を交わしている場合には別の契約となり基本契約が2つ以上(複数)となります。

  • 最初の取引を完済するまでの取引期間の長さ
  • 再度の借り入れまでの期間の長さ(空白期間の長短)
  • 完済した際に契約書を返還していたか
  • カードが使用できなくなっていたか
  • 再度の借り入れまでの間に業者と接触していたか
  • 再度の契約の内容(前回の契約との相違点、利息が異なっている等)

上記を元に判断されることになります。

時効になった過払い金と借金の相殺

分断になり、後の取引で残金がある場合は、最初の取引で発生した過払い金と後の取引の借金を相殺することになります。

途中完済前の取引で過払い金50万円、再借入れ後の取引では借金30万円ある場合、

過払い金50万円と借金30万円で相殺されて、20万円の過払い金を請求することになる。

50万(過払い金)-30万(借金)=20万円の過払い金請求

過払い金の時効の更新(中断)

時効が近い場合はどうすればいいですか?

時効間近の場合、時効の更新や完成猶予の措置で時効の進行を止めることができます。

時効になる前に時効の更新や完成猶予の措置とれれば時効にならずに過払い金を回収することができます。

過払い金請求手続きには時間がかかるので、その間に時効期間を迎えてしまう場合があります。

そのような場合には過払い金請求の裁判をすることで時効の進行を止めることができます。これを時効の更新と言います。

時効が更新されると10年の時効期間はリセットされるため、時効完成間際でも裁判をしてしまえば時効は完成しません。

時効の更新、完成猶予

訴訟提起するまでに時効になりそうな時は

催告という手続きをすることで、時効の完成を半年間停止することができます。

時効を更新させるには訴訟を提起することになりますが、訴訟提起をするまでには時間がかかります。

訴訟提起には最低限取引履歴の取り寄せが必要になりますが、取引履歴の開示期間は業者ごとに違い、1週間~2か月ほどかかります。

その間に時効になってしまいそうだ・・・という場合には催告という方法を使って時効を完成猶予させます。

具体的には消費者金融やクレジットカード会社へ、内容証明郵便等で請求をすることで時効は停止します。

停止期間は6か月です。

その間に和解がまとまればいいのですが、6か月では手続きが終了しない場合は6か月の停止期間中に訴訟をすることで時効は更新されます。

※2020年4月の改正により時効の「中断」は「更新」という名称になり、「停止」は「完成猶予」という名称に変更されました。

過払い金の時効まとめ

過払い金の時効は完済してから10年です。

しかし、まだ完済から数年しか経っていない場合でも、途中完済完済があると過払い金が時効になってしまう可能性があります。

何年も前のことなので、途中完済したかどうかも覚えていないという人は大勢いらっしゃいます。

また、過払い金請求への貸金業者の対応も年々悪化してきて、回収は難しくなってきています。

せっかく取り戻せる過払い金を時効で取り戻せなくなってしまう前に、なるべく早く相談をしてみたほうが良いでしょう。

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