債務整理すると賃貸は退去?入居審査や更新への影響も司法書士が解説

当サイトの記事はすべて司法書士三浦永二(東京司法書士会所属、登録番号7300号)が執筆しています。

「債務整理をしたら賃貸を退去させられる?」「新規で部屋は借りられる?」「更新に通る?」

この記事は、そんな不安を解消します。

現場での相談事例を踏まえ、審査で重視されるポイント、審査に通るためにできることを整理しました。

参考元:債務整理-東京司法書士会

目次

債務整理と賃貸の関係の結論

  • 退去:家賃滞納がなければ原則不要
  • 入居審査:信販系保証会社は厳しめ
    • 非信販系の保証会社がおすすめ
  • 支払方法:カード払いの場合は注意が必要
  • 家賃滞納あり
    • 任意整理は賃料を対象外にできるので退去を免れられる
    • 個人再生・自己破産は対象になるので退去する可能性あり
30代 女性

家賃をカード払いにしていました。任意整理の相談をしたところ、司法書士から説明をされて家賃は口座振替に変更しました。

債務整理をすると賃貸の部屋から退去する必要がある?

債務整理をすると賃貸している部屋はどうなりますか?

基本的には、債務整理をしても借りている部屋から退去する必要はありません。

ただし、家賃を滞納している場合で滞納している家賃も債務整理の対象にすると、賃貸借契約が解約になるので、退去することになります。

  • 家賃滞納や重大な契約違反がない限り、債務整理を理由に「直ちに退去」とはならない
  • 単に債務整理をしたという事実のみでは、契約解除の正当事由には当たらない

家賃をきちんと支払っていれば、貸主(大家)や管理会社が契約を一方的に解除する理由にはなりません。

逆に、家賃滞納や契約違反がある場合は、債務整理とは別に退去を求められる可能性があります。

債務整理後の新規入居審査に与える影響とは?

債務整理をすると賃貸の引っ越しに影響はでますか?

債務整理をするとブラックリストに登録されるため、その影響で入居審査に通らない可能性があります。

賃貸の保証会社が信販系の会社だったり、提携のクレジットカードを作らされる場合は注意が必要です。

ブラックリストに登録されていると、保証会社やクレジットカードの審査に通るのは難しいので、結果として部屋を借りることができない可能性があります。

債務整理をすると、信用情報機関にその記録が登録され、いわゆるブラックリスト状態になります。

この情報は、信販系の家賃保証会社やクレジットカード会社が確認できるため、入居審査に影響が出ることがあります。

ブラックリストの影響については以下の記事でも詳しく解説しています。

信販会社が保証会社になる場合

多くの賃貸物件では、入居時に保証会社の利用が必須とされています。

保証会社が信販系(オリコ、エポス、アプラス、クレディセゾン、SMBCファイナンスサービスなど)の場合、信用情報の審査があります。

ブラック状態のままだと、これらの保証会社の審査に通らず、入居ができないケースもあります

提携クレジットカードで家賃を支払う必要がある場合

一部の物件では、入居時に提携クレジットカードを発行し、家賃をカード決済することが条件になっている場合があります。

ブラック状態ではクレジットカードの審査に通らず、結果的に物件を借りられないケースがあります。

事故情報があっても通る3つのルート

ブラックリストに載っていても、以下のような方法で新しい部屋を借りることができる可能性があります。

信販系以外の保証会社を利用する

JID、フォーシーズ、全保連など、信販系でない保証会社であれば、信用情報を重視しない場合が多いです。

そのため、ブラックリストに登録されている方でも、入居審査を通過できる可能性は十分にあります。

保証人を立てる

連帯保証人を用意できれば、保証会社を利用せずに契約できる物件もあります。

事前に不動産会社へ相談してみましょう。

保証会社やクレジットカードが不要な物件を探す

すべての賃貸物件が保証会社やカード払いを求めているわけではありません。

不動産会社に相談すると、条件に合う物件を紹介してもらえることがあります。

不動産会社の担当者によっては、事情を理解したうえで適切な物件を紹介してくれる場合もあります。

ブラックリストに登録されていることを正直に話して相談をすることをおすすめします。

ブラックリストに登録される期間については以下の記事で詳しく解説しています。

参考元:信用情報とは-指定信用情報機関のCIC

債務整理と賃貸の関係 図解|入居審査・更新・退去

更新審査で落ちないためのチェック

  • 家賃の滞納がなければ、債務整理をしても賃貸契約の更新は基本的にできる
  • 家賃をきちんと支払い続けていれば、債務整理が原因で更新を拒否されることはほとんどない

大家さんから賃貸の更新を断るには正当な理由が必要になりますが、この正当事由というのは厳格です。

債務整理を行ったことや、信用情報に事故情報が載っていることが正当な理由にあてはまることはほぼありません。

ただし保証会社が付いている場合、更新時に信用情報を確認されて保証契約を断られることはあり得ます。

その場合は別の保証会社にするか、保証人をつけるように言われる可能性があります。

家賃を滞納している場合の債務整理

  • 滞納した家賃は債務=借金なので、滞納分の家賃を債務整理することは可能
  • 滞納している家賃を債務整理の対象にすると
    • 賃貸借契約が解約されて立ち退きを求められる
  • 任意整理:生活維持の要となる家賃は実務上は「対象外」にすることが多い
  • 個人再生/自己破産:原則として滞納している家賃も手続の対象に含まれる

家賃を債務整理の対象にしなくても、2か月以上家賃の滞納をすると立ち退きを求められる可能性が高いです。

家賃を滞納している状態で債務整理をした場合の影響を任意整理、個人再生、自己破産それぞれ以下に整理して解説します。

任意整理

家賃を滞納している状態で任意整理をするとどうなりますか?

滞納している家賃を任意整理すると、立ち退きを求められることになります。

ただし、任意整理は手続きする業者を選択することができるので、滞納している家賃を任意整理の対象から外すことが可能です。

  • 滞納している家賃を任意整理の対象にすれば退去を求められる
  • しかし、任意整理では手続きの対象にする業者を選択することができる
  • 家賃は任意整理の対象から外して、その他の借金のみを任意整理することが可能

A社とB社から借金があり、Cさんのへの家賃を滞納している場合

滞納しているCさんへの家賃は任意整理手続きから外して、A社とB社のみを任意整理することができます。

滞納している家賃は早期に分割払い等の相談が必要です。

家賃以外の借金の返済額を減らすことで、滞納している家賃の滞納を解消できるのであれば家賃を任意整理する必要はありません。

他の債務のみ任意整理しても状況が改善しない場合は、家賃も含め任意整理するか個人再生や自己破産を検討する必要があります。

体験談:任意整理で家賃の滞納も解消できた

30代 男性

家賃の支払いも難しい状況でした。借金の任意整理をした後は少し余裕もできて、家賃の支払いも滞ることがなくなり毎月の生活が安定しました。

任意整理については以下の記事で詳しく解説しています。

個人再生・自己破産

家賃を滞納している状態で個人再生や自己破産をするとどうなりますか?

基本的には賃貸物件からの退去を求められます。

個人再生と自己破産は全ての借入先を対象にしなければいけないので、滞納している家賃も対象になります。

家賃を債務整理すると賃貸借契約は解約になる可能性が高く、解約になった場合は退去を求められます。

  • 個人再生と自己破産は、すべての債権者を対象とするため家賃の滞納分も整理対象に含まれる
  • 家賃を債務整理すると、賃貸契約は解除され退去を求められる可能性が高い

滞納している家賃を整理すると家賃も減額や免除されますが、通常の支払いができない以上、基本的には立ち退きを求められるでしょう。

家賃の滞納がなければ他の借金を整理しても、賃貸借契約には影響はなく退去する必要もありません。

個人再生、自己破産後も賃貸に住み続ける方法

  • 家賃を第三者に払ってもらう方法
    • 手続きの開始前に家賃の滞納を親族等の第三者に支払ってもらう
    • 家賃が個人再生や自己破産の対象から除外され、賃貸に住み続けることが可能

個人再生や自己破産が開始される前までに滞納を解消することで、家賃を対象から外して立ち退きを免れるという方法です。

偏頗弁済に注意

手続き開始前に「自分で」家賃を支払った場合は偏頗弁済になります。

  • 偏頗弁済になると
  • 個人再生の場合
    • 支払った金額を財産額として上乗せされ、本来よりも減額されない可能性がある
    • 個人再生自体が認められない可能性もあり
  • 自己破産の場合
    • 自己破産ができなくなる可能性あり

手続き開始前に第三者に支払ってもらえれば、退去することなく他の借金のみを整理することができます。

自己破産後に支払う旨の交渉

自己破産をすると借金の支払いは免除されますが、自己破産後に自分から返済をすることは可能です。

そのため、自己破産後でも滞納している家賃を支払うことは可能です。

その旨を大家さんに話してみて、自己破産手続き後に支払うから住み続けられないか?という交渉をしてみる方法もあります。

個人再生と自己破産については以下の記事で詳しく解説しています。

家賃滞納×手続別の注意点 図

家賃の保証人がいる場合の債務整理

家賃の保証人がいる状態で債務整理をするとどうなりますか?

保証人がいる場合、滞納している家賃を債務整理すると、保証人に請求が行きます。

任意整理なら手続きする会社を選択できるので、滞納している家賃を任意整理しなければ保証人へ請求が行くことはありません。

  • 部屋を借りる際に保証人をつけている場合
    • 滞納している家賃を債務整理すると保証人へ請求が行く
  • 任意整理で家賃を対象から外せば、保証人に迷惑をかけることは避けられる
  • 個人再生や自己破産はすべての債務が対象となるため、除外することはできない

債務整理の効果は保証人には及ばないので、個人再生で減額しても自己破産で免責になったとしても保証人には全額が請求されます。

保証人への影響を避けたい場合は、早めに滞納を解消するか、任意整理で対応するのが望ましいです。

※債務整理をするしないに関わらず家賃を滞納した時点で保証人へ請求が行く可能性が高いです。

保証人については以下の記事でも詳しく解説しています。

家賃の保証人がいる状態で債務整理をするとの図

よくある質問

家賃保証会社に債務整理をした会社が含まれている場合、更新時に影響しますか?

債務整理をした会社と保証会社が同一だと、更新を拒絶される可能性があります。

債務整理をしても、家財保険や火災保険の更新に影響はありますか?

影響しません。これらの保険契約は信用情報を参照しないため、通常どおり更新可能です。

債務整理中に引っ越しをすると、司法書士や弁護士への連絡は必要ですか?

はい。住所変更を伝えないと、債権者との書類や和解通知が届かず、手続きが滞る可能性があります。早めに専門家へ連絡しましょう。

家賃をクレジットカードで支払っていた場合、カードが止まるとどうなりますか?

債務整理後はカードが使えなくなります。口座振替や銀行振込に切り替える手続きを、手続き前または受任通知送付前に済ませておきましょう。

まとめ

  • 債務整理後に新たな賃貸契約を結ぶ際
    • 信販系の保証会社を利用する物件では審査に通らないリスクがある
    • 信販系以外の保証会社や保証会社不要の物件を選ぶことで、契約できる可能性がある
    • 状況を不動産会社へ正直に伝え、協力を得ることが有効
  • 現在住んでいる賃貸物件について
    • 債務整理をしても家賃の滞納がなければ、退去を求められることは基本的にない
  • 家賃の支払いを滞納している場合は注意が必要
    • 滞納家賃を債務整理の対象に含めると
    • 賃貸契約が解除され退去を求められる可能性が高い
  • 個人再生や自己破産ではすべての債務を対象になる
    • 滞納家賃も含まれてしまい、立ち退きを避けるには事前の対処が必要になる
  • 任意整理であれば、対象とする債務を選べる
    • 家賃を対象から外せば退去を回避することが可能

司法書士からのアドバイス

債務整理を行っても、滞納せず家賃の支払いを継続していれば賃貸契約を維持できます。

「信用情報に事故情報が載る」=「住めなくなる」ではありません。

  • 債務整理後に新しい住まいを探すときは
    • 非信販系の保証会社やUR賃貸・公営住宅など、信用情報を参照しない選択肢を検討
  • 「家賃を優先して支払い続ける」ことは、生活再建のうえで最も重要
    • 滞納をしなければ住居を守りながら再スタートできる

債務整理は借金問題を解決する大切な手段です。

しかし、住まいの確保に関しては家賃の滞納や保証人の有無によって影響が異なるため、慎重に対応することが求められます。

迷ったら早めに専門家に相談し、最適な手続きと住まいの確保を両立できる方法を見つけましょう。

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