お金を借りて返しただけなのに「過払い金」が戻ってくるのは不思議…と感じる方も多いはずです。
しかし、過払い金は法律以上に取られた利息を返してもらう手続きなので、法律的にも正当な請求です。
グレーゾーン金利が撤廃されたことにより、2008年以降に借り入れを開始した人は、ほぼ過払い金の対象にはなりません。
なぜ過払い金が生まれたのか、からくりとその対象、注意点、専門家の選び方まで徹底的にわかりやすく解説します。
過払い金発生の「からくり」とは?
- 過払い金が発生するからくりを教えてください
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利息制限法という法律では、利息を何パーセント以上はとってはいけないという制限が設けられています。
この利息制限法よりも、高い利息でキャッシングの取引をしていた場合に、過払い金は発生します。
利息制限法の金利の上限 | |
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10万円未満の借入 | 20%まで |
10万円以上~100万円未満の借入 | 18%まで |
100万円以上の借入 | 15%まで |
上記の制限を超えた「高金利の利息」で返済していた場合、取引の最初から法律内の利息だったものとして、再計算=引き直し計算をします。
計算した結果、すでに完済していて、その後に支払ったお金が「過払い金」になります。
過払い金発生の具体例
2005年に90万円を利息29%で借りて、2020年に完済したケース
取引当初の2005年から法律内の18%の利息だったものとして計算すると、29%で支払っていた場合よりも元金が早く減ります。
そのため、実は2020年以前に借金は払い終わっていたという計算結果になります。
完済した後に支払った部分について、借金がすでになくなっているのに支払った、払い過ぎたお金=「過払い金」となります。
【依頼者の声】

借金を払い続けて苦しかったけれど、まさか自分にお金が戻ってくるとは思わなかったです。
「グレーゾーン金利」と業界の歴史
- なぜ高金利で借りていたのに、その時は問題にならなかったのですか?
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以前は法律のすき間(グレーゾーン金利)があり、規制が曖昧だったため、貸金業者は違法でない範囲で高金利を設定していました。
グレーゾーン金利について
以前は利息制限法とは別に、出資法という法律で一定の条件を満たせば29.2%までの利息が認められていました。
利息制限法を超えても出資法の29.2%未満なら罰則がなかったので、当時は多くの貸金業者がグレーゾーン金利で貸し付けをしていました。
裁判でグレーゾーン金利が否定される
しかし、2006年にグレーゾーン金利が裁判でほぼ否定(出資法の一定の条件を満たしていないという判決)されました。
これにより、過去にグレーゾーン金利で返済した分が、法律以上に払い過ぎた利息と判断されて、過払い金が発生することになりました。
同時に弁護士や司法書士による過払い金ビジネスが増えて、異常に高い費用等で問題視されることにもなりました。
過払い金が発生する取引
- 当時の利息が何%だったのかわからない場合はどうすればいいですか?
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当時の利息がわからなくても借入をしていた時期がわかればある程度、過払い金が発生しているかどうか判断できます。
多くの貸金業者が2007年には過払い金が発生しない利息に見直しをしたので、2007年よりも前から借りていれば、過払い金が発生している可能性があります。
- 2007年よりも前から取引があると、過払い金の対象になる可能性がある
- 消費者金融からの借入だけでなく、信販会社(クレジットカード)のキャッシングも過払い金の対象になる
2006年に裁判所で過払い金が認められたことによって、多くの業者が2007年頃には法律内の利息に見直しています。
数は多くありませんが、アプラスやニッセン等、一部の貸金業者は2008年~2010年頃まで高い利息に設定していました。
既存の契約者は金利が見直されないケースもある
ちなみに既存の契約者もすべて2007年頃に一斉に金利が見直されたわけではありません。
「2007年以前に高金利で契約した」人の中には、金利が見直されず2010年代も高金利のまま返済していた人も多いです(主に消費者金融)。


過払い金の対象にならない取引
- 過払い金の対象にならない取引はどのようなものですか?
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下記の取引は、過払い金が発生しません。
- 2008年以降の借り入れ
- 銀行、信用金庫からの借り入れ
- ショッピング
- 自動車ローン
- 奨学金
- 債務整理をした業者
また、下記の取引は過払い金が発生していても回収をすることはできません。
- 時効
- 貸金業者の倒産
2008年以降の借入
多くの貸金業者が2007年頃には法律内の利息にしているので、2008年以降に借り始めたという場合には過払い金はほぼ発生しません。
ただし、貸金業者によっては2010年頃まで高い利息にしている場合もあり、大手だとアプラスが2009年頃まで高金利の可能性があります。
銀行・信用金庫の借入
銀行や信用金庫からの借入は、元々低金利なので過払い金は発生しません。
ちなみに銀行系のクレジットカードのキャッシングの場合は、銀行からの借入ではないため、過払い金が発生することがあります。
(例=りそなカードや三井住友visaカード、○○銀カードサービス、○○銀JCB等)
銀行系のクレジットカードについては、以下の記事でも詳しく解説しています。


ショッピング利用分
クレジットカードのキャッシングであれば過払い金が発生する可能性がありますが、ショッピングでの取引は過払い金は発生しません。
自動車ローン
自動車ローンは何年前からの取引であっても、過払い金の対象にはなりません。
住宅ローンやリフォームローン
住宅ローンやリフォームローンも低金利ですし、立替金ですので過払い金は発生しません。
奨学金
奨学金も低金利のため、過払い金は発生しません。
奨学金や教育ローンとは別に学生ローンというものがありますが、学生ローンは過払い金の対象になる可能性があります。
過去に債務整理の対象にした取引
以前に任意整理や、個人再生、自己破産の対象にした取引は過払い金の対象にはなりません。
例外的に、個人再生や自己破産で回収をしていなかったものは、過払い金を取り戻せる可能性があります。
時効になった過払い金
過払い金が発生していても、最後の取引(完済)から10年経つと過払い金は時効になり、取り戻すことができなくなります。
過払い金の時効については以下の記事でも詳しく解説しています。


貸金業者の倒産
取引をしていた貸金業者が倒産してしまうと、過払い金を取り戻すことは、ほとんどできなくなります。
会社が倒産した場合、裁判所の手続きの中で会社の財産を債権者へ分配されることになります。
吸収合併等されている場合は、原則合併先の会社へ過払い金を支払う義務も移行するので、合併先の会社へ過払い金請求を行うことが可能です。


過払い金の対象か確認する方法
- 完済から時間が経っているので、いつから借り始めたのかもわかりません
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契約書や明細があれば契約日が記載されていたりします。
また、口座引き落としだった場合は通帳で返済日が確認できるので、いつ頃に取引をしていたかは確認をすることができます。
資料等が残っていない場合、借入していた貸金業者によっては電話で教えてくれるところもあります。
電話では確認できなくても、借りていた会社から「取引履歴」を取り寄せることで、いつから借入を開始したのか確認できます。
- 2007年以前からの借入なら、過払い金が発生している可能性が高い
- 契約書や明細がなければ、業者から「取引履歴」を取り寄せて調べることができる
- 弁護士・司法書士に依頼すれば、取引履歴取り寄せや引き直し計算も代理で対応可能
取引履歴には、何年何月何日にいくら借りて、何年何月何日にいくら返済してきたのかがすべて記載されてます。
貸金業者によっては取引履歴に当時の利息が何%だったか記載されているので、過払い金が発生しているかはすぐに確認できます。
取引履歴の取り寄せ方法
取引業者によってことなりますが、まずはカスタマーセンターに連絡でいいでしょう。
貸金業者によっては窓口で受け取りができたりもしますが、基本的には郵送での手続きになります。
弁護士や司法書士に過払い金請求を依頼すると、代行して取引履歴を取り寄せるので自宅に書類が届く心配はありません。
【依頼者の声】



古い契約書は捨ててしまって心配だったけど、司法書士の先生が履歴を取り寄せてくれて無事に過払い金を請求できました。
過払い金診断や減額診断について
事務所によっては無料で過払い金がどのぐらい発生しているのかや、借金がどのぐらい減額されるかを診断してくれます。
ただし、無料診断はあくまでも参考なので正確ではなく、大幅に間違えていることも多いです。
借入時期を確認する方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。


過払い金の計算方法|引き直し計算
- 過払い金がいくらあるのか、自分で調べることはできますか?
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貸金業者から「取引履歴」を取り寄せて「引き直し計算」をすれば、過払い金がいくら発生しているのかを確認できます。
- 業者から取得した取引履歴をもとに、法律内の利息で再計算
- 無料ソフト(名古屋式・外山式など)も利用可能
- 履歴の取り寄せから計算まで、弁護士司法書士への依頼も可能
過払い金がいくら発生しているか確認するためには、取引の最初から法律内の利息だったものと見直す計算=「引き直し計算」が必要になります。
名古屋式と外山式が有名な計算ソフトで、以下のリンクからダウンロードできます。
引き直し計算については、以下の記事でも詳しく解説しています。


借金が減額されるからくり|返済中でも対象?
- 借金を返済中でも過払い金は発生しますか?
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返済中であっても過払い金は発生します。
引き直し計算をすることで、借金が減額になったり過払い金が発生していることがあります。
借金減額や過払い金の対象になるかは、法律内の利息に直して計算を行う=引き直し計算の結果次第です。
- 借金が全てなくなり、更に払い過ぎている⇒過払い金請求になる
- 借金は減額されたが借金が残った⇒減額後の金額を任意整理することになる
事前に計算をしてみて過払いになっているなら請求する、過払いになっていないのなら請求しないという方法がおすすめです。
【依頼者の声】



ずっと借金返済に追われていましたが、実は既に完済していてお金が戻るとは思いませんでした。
任意整理については以下の記事でも詳しく解説しています。




過払い金のデメリットとリスク
- 過払い金請求のデメリットを教えてください
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過払い金請求で発生するデメリットは、請求した会社のカードが解約になることです。
そのため、「過払い金請求したカードは利用しない」という人にはデメリットはありません。
- 請求した会社のカードや契約が解約になる
- 他社の契約やカードには影響なし
- 完済後の請求であればブラックリストには載らない
よくある誤解
- 「全てのカードが使えなくなる」「信用情報に傷がつく」⇒完済後の請求では影響なし
完済後の過払い金請求ではブラックリストに載ることはないため、過払い金請求をしない他社のカードには影響はありません。
アコムを完済して、エポスカードでショッピング利用中のケース
アコムへ請求をするとアコムのカードは解約になりますが、請求をしないエポスカードはそのまま継続して使用できます。
過払い金請求とクレジットカードの関係については、以下の記事でも詳しく解説しています。




弁護士・司法書士の選び方|損しないポイント
- 弁護士や司法書士の事務所はどのように選べばいいですか?
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なるべくなら費用が安い事務所を選ぶことです。
ホームページ等で費用を比較して選ぶようにしましょう。
参考元:債務整理の弁護士報酬のルールについて-日本弁護士連合会
債務整理事件の処理に関する指針の制定について(会長談話)-日本司法書士会連合会
- 費用の安さ、成功報酬の割合を比較する
- 着手金、減額報酬の有無も確認
- 依頼から返金までのスピード、実績も大切
過払い金請求の費用相場
過払い金請求の費用の相場 | |
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基本報酬 | 0~3万円 |
成功報酬 | 25%以下 |
減額報酬 ※借金が残っている状態で請求する場合のみ | 0~10% |
費用が安くても回収額が少なければ結局手元に戻ってくる金額が少なくなるので、回収額にも注意が必要になります。
過払い金請求費用の支払方法
- 過払い金請求の費用はどのようにして支払うのですか?
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ほとんどの事務所が、費用は回収した過払い金から差し引いて清算することにしています。
過払い金請求の費用の支払方法については、着手金がない事務所であればほとんどの事務所では回収した過払い金から差し引かれます。
【依頼者の声】



広告にでてきた事務所に頼みましたが、費用が高くてキャンセルしました。最初からちゃんと調べて依頼をするべきでした。
過払い金の費用については以下の記事でも詳しく解説しています。


過払い金の請求方法と流れ・回収までの期間
- 過払い金はどのように回収するんですか?
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貸金業者に請求書を送って交渉をする方法と、裁判をして回収する方法があります。
裁判の場合も弁護士、司法書士が手続きを行うため本人が裁判所に呼び出されるようなことはほぼありません。
過払い金は以下の流れで行われます。
- 話し合いで回収する場合=裁判をするよりも、回収までは早いが回収額は少なくなる
- 裁判をして回収する場合=話し合いの場合よりも、回収までの時間はかかるが回収額は多くなる
どちらの回収方法がいいのかは、相手方の業者にもよるので、まずは弁護士や司法書士に確認すべきです。
過払い金請求のについては以下の記事でも詳しく解説しています。


過払い金の請求方法と戻ってくるまでの期間
- 過払い金戻ってくるまでの期間を教えてください
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裁判をするかどうかと、相手方の貸金業者によって期間は異なります。
平均的には、裁判をしない場合は依頼してから2か月~6か月ぐらい、裁判をする場合は4か月~1年以上かかることもあります。
- 裁判なしなら2~6ヶ月
- 裁判ありなら4ヶ月~1年以上かかることも
- 相手業者、交渉の状況によって変動
取引履歴の取得に早い業者なら1週間、遅い業者なら3か月ほどかかります。
また、和解から返金まで早い業者であれば1か月、遅い業者だと1年以上かかることもあります。
相続人でも過払い金請求できる?
- 亡くなった家族の過払い金を請求することは可能ですか?
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過払い金請求権は相続されるので、相続人から過払い金請求をすることができます。
- 過払い金請求権は相続される
- 未請求のまま故人となった場合、相続人が代わりに手続きできる
過払いになっていない場合、借金も相続の対象になるので相続した借金を債務整理することもできます。
借金を残して亡くなったケースでは相続放棄という手続きもあるため、借金を返済するか、相続放棄をすべきか検討する必要があります。
相続人からの過払い金請求については、以下の記事でも詳しく解説しています。


まとめ|からくりを知って後悔しない過払い金請求を
- 2007年以前からキャッシングがあるなら過払い金が発生している可能性が高い
- デメリットや費用もしっかり比較し、信頼できる専門家に依頼すべき
- 請求には時効(完済から10年)があるので早めの確認・相談が重要
過払い金請求の仕組みについてまとめましたが、利息制限法以上の利息で返済をしていたのであれば過払い金は発生します。
22007年よりも前から消費者金融かクレジットカードでキャッシングを行っていたなら、過払い金請求の対象になる可能性が高いです。
貸金業者によっては2008年以降も利息が高くて過払い金が発生することもあります。
銀行借入や、ショッピングやローン、奨学金では、何年前からの取引であっても過払い金は発生しません。
過払い金が発生していたとしても、完済から10年経つと過払い金は時効になり、過払い金を取り戻すことができなくなります。
弁護士や司法書士の事務所を選ぶ際は、なるべく費用が安い事務所を選ぶようにするべきです。
多くの事務所がホームページで費用を公開しているので、ホームページで費用を比較してから相談をするようにしましょう。