個人再生でいくら減る?条件・デメリット・自己破産との違いを解説

当サイトの記事は、 司法書士 三浦永二(東京司法書士会/登録番号7300号) が執筆・監修しています。

「毎月の返済がもう回らない」「家だけは手放したくない」「自己破産は仕事的に避けたい」という方は個人再生が候補になる可能性があります。

個人再生は、裁判所の認可を得て借金を大幅に減らし、残りを原則3年で分割して返す手続きです。

この記事のポイント

減る金額
借金総額に応じた最低弁済額まで減り、原則3年で分割して返す
財産の影響
財産の価値が最低弁済額より高いと、その額が返済額になる
利用条件
継続した収入があり、住宅ローン以外の借金が5,000万円以下
住宅ローン
特則を使えば住宅ローンは今までどおり払い、家を残せる
車のローン
すべての債権者が対象になり、ローン中の車は原則引き上げられる

参考:個人再生-東京弁護士会

目次

個人再生・任意整理・自己破産の違い

任意整理は、将来の利息をカットして元金を3〜5年で返す手続きです。

自己破産は、借金の支払い義務そのものを免除してもらう手続きです。

個人再生はその中間にあたり、元金そのものを減らしたうえで残りを返していきます。

項目 任意整理 個人再生 自己破産
借金の減額 利息のみ 元金も減る 全額免除
整理する先 選べる すべて すべて
自宅 残せる 残せる 手放す
財産 そのまま そのまま 処分あり
職業制限 なし なし あり

個人再生のメリットとデメリット

+

メリット

  • 借金の元金そのものが大幅に減る
  • 住宅ローン特則で家を残せる
  • 職業や資格の制限がない
  • 浪費やギャンブルでも利用できる
  • 原則3年の分割で返せる
VS
−

デメリット

  • 信用情報に約8年登録が残る
  • 官報に氏名と住所が載る
  • 整理する債権者を選べない
  • ローン中の車は原則引き上げられる
  • 財産が多いと返済額が下がりにくい
  • 集める書類が多く負担がかかる

個人再生はブラックリストに載る?どれくらいの期間続くのか

個人再生をすると、信用情報機関に事故情報が登録されます。

CICとJICCでは返済を終えてから5年、KSCでは開始決定から7年で登録が消えます。

原則どおり3年で返済した場合、すべての登録が消えるまでに約8年かかります。

その間は、新たな借入れ、ローン、クレジットカードの作成が難しくなります。

開始決定

官報に掲載され、KSCに登録される

CIC・JICCには、依頼後の支払い停止などで事故情報がすでに登録されています。

再生計画に沿って返済(原則3年)

約3年後

返済が終わる

CICとJICCの登録は、ここから5年間残ります。

7年後

KSCの登録が消える

開始決定から7年で消えます。

約8年後

CIC・JICCの登録が消える

完済から5年が経ち、すべての登録が消えます。

官報に氏名と住所が載る

個人再生をすると、手続きの途中で官報に氏名と住所が掲載されます。

官報は誰でも閲覧できます。

ただ、日常的に読んでいる人はごく限られるため、官報から家族や職場に知られることはほとんどありません。

ローン返済中の車は引き上げられることがある

個人再生では、住宅ローン以外のすべての借金が対象になります。

任意整理のように、整理する相手を選ぶことはできません。

自動車ローンの返済中に個人再生をすると、車の所有権がローン会社に残っている場合は、原則として車を引き上げられます。

所有権が本人にある銀行のマイカーローンなどは、引き上げの対象になりません。詳しくは次の記事で解説しています。

個人再生でいくら減る?返済額の決まり方

個人再生で返す金額は、借金総額で決まる「最低弁済額」と、持っている財産の価値(清算価値)を比べ、高いほうになります。

給与所得者等再生では、これに「可処分所得の2年分」が加わります。

最低弁済額|借金総額で決まる返済額

借金総額返す額(最低弁済額)
100万円未満借金の全額
100万円以上500万円以下100万円
500万円超1,500万円以下借金の5分の1
1,500万円超3,000万円以下300万円
3,000万円超5,000万円以下借金の10分の1

※住宅ローン特則を使う場合、住宅ローンは借金総額に含めません。

たとえば借金が600万円なら120万円、2,000万円なら300万円を、原則3年で返していきます。

清算価値保障の原則

個人再生には「持っている財産(資産)以上の額を返済しなければならない」というルール(清算価値保障)があります。

つまり、「資産があるなら、その資産を売却した場合の金額は最低限払ってくださいね」ということです。

清算価値には、預貯金、生命保険の解約返戻金、車、不動産、退職金の見込額の一部などが含まれます。

借金500万円・査定額150万円の車(ローンなし)を持っている場合

  1. 最低弁済額借金500万円 → 100万円
  2. 清算価値車の査定額 → 150万円
  3. 高いほうを採用100万円 < 150万円

3年で返す額150万円

※36回払いなら月約4万1,700円

財産が多いほど減額の効果は小さくなります。

財産の価値が借金総額に近い場合は、個人再生をしても返済額はほとんど減りません。

小規模個人再生と給与所得者等再生の違い

個人再生には2種類あります。違いは、返済額の基準と、債権者の反対で手続きが止まるかどうかです。

項目小規模個人再生給与所得者等再生
利用できる人継続した収入がある人(自営業も可)会社員など、収入の変動が小さい人
返済額の基準最低弁済額と清算価値の高いほう左の2つと可処分所得2年分のうち高い額
債権者の決議ありなし

給与所得者等再生では、可処分所得の2年分も返済額の基準に加わります。

可処分所得は、手取りの収入から、政令で定める最低限度の生活費を差し引いた額です。

給与-税金-社会保険料-最低限度の生活費=可処分所得

最低限度の生活費は、住んでいる地域や家族の人数・年齢で決まります。

そのため、単身で収入が高い人ほど返済額が高くなりやすくなります。

最低限度の生活費の決まり方

民事再生法第241条第3項
可処分所得を出すときに差し引く「最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用」は、政令で定める基準によって計算すると定めています。
民事再生法第241条第3項の額を定める政令
生活費の額は、住んでいる地域の区分、世帯の人数、年齢などをもとに計算します。そのため、同じ収入でも、単身か扶養家族がいるかで可処分所得は変わります。

どちらを選ぶか|債権者の決議の有無

小規模個人再生では、再生計画案について債権者の書面決議が行われます。

  • 反対した債権者が債権者数の半数以上になる
  • 反対した債権者の債権額が総額の2分の1を超える

上記のどちらかに該当すると、小規模個人再生は否決され手続きは終わります。

反対する見込みのある債権者が、
借金総額の2分の1を超える債権を持っているか

いる

給与所得者等再生

決議がないので、反対されても手続きは止まらない
返済額が高くなる可能性あり

いない

小規模個人再生

返済額を抑えやすく、個人再生の多くはこれで申し立てる

反対するかどうかは債権者によって決まっており、多くの債権者は回答しません。

回答がなければ賛成として扱われるため、大口の債権者がいても、そこが反対しなければ小規模個人再生は認可されます。

個人再生の最低弁済額と毎月の返済額をワンクリック試算

借金総額を入れると、最低弁済額と、36回・48回・60回で割った毎月の返済額の目安がわかります。

清算価値と可処分所得は反映していません。

財産がある方や給与所得者等再生を選ぶ方は、実際の返済額がこれより高くなることがあります。

個人再生|毎月の返済額シミュレーター

概算:最低弁済額を 36/48/60回で割って月額を算出(利息ゼロ想定・100円未満切り上げ)

円
分割回数

※法律上の最低弁済基準にもとづく概算です。実際の金額は資産状況・裁判所の運用等で前後します。
※返済期間は原則36回です。48回・60回は、特別な事情が認められた場合に限られます。

個人再生を利用できる3つの条件

1

返済が難しい

今のままでは返済を続けられないおそれがある

2

収入が続く

減額後の返済を3年続けられる収入がある

3

借金の上限

住宅ローンを除いて5,000万円以下

「今のままでは返せない」と「減額後なら3年間返せる」の両方を満たす必要があります。

収入は正社員でなくてもかまいません。

パート・アルバイト・派遣社員・自営業でも、継続して得ている収入であれば認められる可能性があります。

一方、短期のアルバイトや日雇いのように収入が途切れやすい場合は、認められないことがあります。

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)|家を残せる要件

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を使うと、住宅ローンだけを手続きの対象から外して今までどおり返しながら、ほかの借金を減らせます。

ただし住宅ローン自体は減額されません。残高はそのまま返していきます。

住宅ローン特則を使うには、次の4つの条件をすべて満たす必要があります。

本人が住む自宅

共有名義も可
投資用は不可

半分以上が住まい

床面積の
2分の1以上

ほかの担保がない

住宅ローン以外の
抵当権がない

代位弁済から
6か月以内

滞納で保証会社が
払った場合の期限

個人再生をする本人名義で本人が住むための住宅であること

本人の持ち分2分の1、妻の持ち分2分の1というような、共有の状態でも問題ありません。

一方、セカンドハウスや投資用の物件は、本人が住むための家ではないため認められません。

単身赴任などで一時的に離れている場合は、将来戻る予定があれば認められる可能性があります。

床面積の1/2以上が居住用であること

店舗や事務所と一体になっている建物では、居住用に使っている面積が全体の2分の1以上あることが必要です。

居住用の面積よりも、店舗等に使っている面積のほうが多い場合は認められません。

住宅ローン以外の担保権がついていないこと

住宅ローン以外に、不動産担保ローン等で抵当権や根抵当権が設定されている場合は、住宅資金特別条項は利用できません。

夫婦でペアローンを組んでいる場合

ペアローンでは抵当権が2つ設定されますが、夫婦どちらからも申立てた場合には、個人再生が認められる可能性があります。

一方だけが申し立てる場合は扱いが分かれます。

もう一方に住宅ローン以外の借金がなく、返済も滞っていなければ、裁判所によっては認めることがあります。

申立て先の裁判所の運用を事前に確認しておく必要があります。

保証の実行(代位弁済)から6か月以内に申し立てること

住宅ローンには保証会社が付きます。

住宅ローンの支払いに滞納等があった場合、保証会社は名義人に代わって銀行に対し住宅ローンを支払います。

これを保証の実行(代位弁済)といいます。

保証の実行から6か月を過ぎると、住宅資金特別条項は使えなくなり、個人再生で家を残すことはできなくなります。

ほかの条件と違い、後から取り戻せない期限です。

アンダーローンだと個人再生のメリットが小さくなることも

家の査定額が住宅ローンの残高を上回る場合(アンダーローン)は、その差額が財産として扱われます。

その結果、清算価値保障の原則によって返済額が上がります。

借金1,000万円・家の査定額1,500万円・
住宅ローン残高800万円の場合

  1. 最低弁済額借金1,000万円 × 5分の1 = 200万円
  2. 清算価値査定額1,500万円 − ローン残高800万円 = 700万円
  3. 高いほうを採用200万円 < 700万円

住宅ローンとは別に返す額700万円

※36回払いなら月約19万4,500円、60回払いでも月約11万6,700円。
これに住宅ローンの返済が加わります。

家に大きな資産価値がある場合は、個人再生よりも、任意整理や家の売却も含めて検討する必要が出てきます。

個人再生が向いている人・向いていない人

自己破産ではなく個人再生を選ぶのは、次の3つのように自己破産を避ける理由があるときです。

1

自宅を残したい

住宅ローンは今までどおり返す

2

仕事を続けたい

警備員などの職業制限がない

3

財産を残したい

車や保険を処分しなくてよい

自宅を残したい場合が典型です。

住宅ローン特則を使えば、住宅ローンは今までどおり返しながら、ほかの借金を減らせます。

自己破産では自宅を手放すことになります。

ただし、残した財産の価値は清算価値として返済額に反映されるため、財産が多いほど返済額は上がります。

自己破産を避ける理由がないのであれば、返済の残らない自己破産のほうが生活を立て直しやすくなります。

個人再生の流れと期間

1専門家に相談・依頼する

依頼すると、債権者に受任通知が送られます。
督促と返済は、ここで止まります。

2書類を集めて申し立てる

家計収支表、給与明細、通帳のコピー、財産の資料などをそろえます。
準備ができたら、地方裁判所に申し立てます。

3開始決定・個人再生委員の選任

裁判所が手続きの開始を決めます。
東京地裁では、原則としてすべての事件で個人再生委員が選ばれます。
返済予定額を毎月積み立てて、返済を続けられるかを確認されることがあります。

4再生計画案の提出・決議

債権額が確定したら、返済計画(再生計画案)を提出します。
小規模個人再生では、債権者の書面決議にかけられます。

5認可決定・返済開始

再生計画が認可されると、計画どおりに原則3年で返済していきます。

実務メモ|申立て前なら任意整理への切り替えもできる

個人再生や自己破産を弁護士に依頼した方から、「書類が集められない」「やはりきちんと払っていきたい」という理由で、任意整理に切り替えたいという相談を受けることがあります。

早い段階であれば、任意整理への変更は可能です。
ただ、返済を止めていた間に訴訟を起こされていたり、遅延損害金が積み上がっていたりすることがあるため、切り替えるなら早めの判断が必要です。

認定司法書士 三浦永二

司法書士は、地方裁判所の手続きでは代理人になれません。

そのため、司法書士に依頼した場合は申立書類の作成を通じた支援となり、裁判所とのやり取りは本人が行います。

弁護士に依頼した場合とは裁判所に納める費用が変わることもあるので、依頼先は費用の総額で比べてください。

よくある質問

個人再生をすると家族や会社にバレますか?

裁判所や債権者から、家族や職場に連絡がいくことはありません。

ただし、同居している家族の収入がわかる資料を提出したり、退職金の見込額を示す書類を勤務先に用意してもらったりすることがあります。

そのため、家族や職場にまったく知られずに進めるのは難しい場合があります。

個人再生後に引っ越しや転職をしても問題ありませんか?

原則として問題ありませんが、裁判所等への連絡が必要になる場合があります。

税金の支払いも個人再生の対象になりますか?

対象になりません。税金や社会保険料は再生計画で減額されず、全額を納付する必要があります。

滞納があると、再生計画どおりに返済していけるのかを裁判所から確認されるため、申立ての前に市区町村や税務署と分納の話をまとめておく必要があります。

個人再生の申し立てをしたことが、賃貸住宅の更新や新規契約に影響しますか?

信用情報に影響が残るため、保証会社を利用する物件では審査が厳しくなることがあります。

再生計画どおりに払えなくなったらどうなりますか?

病気や失業など、やむを得ない事情で返済が難しくなった場合は、再生計画を変更して返済期間を最長2年延ばせることがあります。

すでに4分の3以上を返し終えているなど一定の条件を満たせば、残りの支払いが免除される制度(ハードシップ免責)もあります。

返済が止まったままだと、債権者の申立てにより再生計画が取り消され、減額前の借金に戻ることがあります。

まとめ

個人再生は、家を残しながら、あるいは仕事を続けながら、借金の元金そのものを減らせる手続きです。

その一方で、裁判所に出す書類が多く、財産の価値によっては思ったほど返済額が減らないこともあります。

個人再生が現実的かどうかは、借金総額だけでは決まりません。

毎月の家計の収支と、預貯金・保険・車・家といった財産の価値によって決まります。

家計の収支と財産の資料をそろえてから相談すると、任意整理で足りるのか、個人再生が必要なのか、自己破産を考えるべきかを早く判断できます。

住宅ローンの滞納が始まっている方は、代位弁済から6か月という期限があります。できるだけ早く相談してください。

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