「債務整理中に転職しても大丈夫?」「手続き後の転職活動に不利はある?」このような不安を持つ方は多いです。
実際、任意整理・個人再生・自己破産のどの方法を選んでも、転職自体が禁止されることはありません。
実際に多くの債務整理相談を受けてきた司法書士が、転職や就職活動について詳しく解説します。
初めての方にも分かりやすく、法律用語もやさしく説明していますので、ぜひ参考にしてください。
【結論(要点だけ先出し)】
- 任意整理/個人再生/自己破産いずれも
- 「転職自体」は原則可能
- 任意整理
- 収入が減る場合は、任意整理ができなくなる可能性あり
- 個人再生
- 収入の安定性が重視される
- そのため、転職による減収は不利になり得る
- 自己破産
- 一部の仕事や資格に一時的な制限がある
- 免責確定後は制限が解除される
- 債務整理中に転職する場合は
- 弁護士や司法書士と共有する
- 返済計画が崩れないように見直すことも
- 債務整理は就職に影響するか
- 採用で信用情報を企業が照会するのは通常想定しにくい
- 官報を一般企業が日常的に検索することは少なく、発覚しにくい
債務整理中の転職は原則可能|ただし事前相談が重要
債務整理中でも、原則として転職自体が禁止されることはありません。
ただし、「転職後の収入が大きく変わる場合」や「雇用条件の変化」が返済計画や裁判所の判断に影響することもあります。
- 転職する場合は必ず弁護士や司法書士に報告するべき
- 転職による収入の変化は、返済計画に直結する
- 収入が大幅に減った場合
- 今後の返済方法を専門家と再検討する必要がある
| 手続きの種類 | 転職の可否 | 主な注意点・制限 |
|---|---|---|
| 任意整理 | 〇 | 収入減少は返済計画に影響 |
| 個人再生 | 〇 | 収入減少だと手続き不可の可能性有 |
| 自己破産 | 〇 | 一部職種で資格制限 (破産手続開始~免責まで) |
任意整理・個人再生・自己破産の手続きごとに、詳しく解説します。
任意整理中の転職|収入の変化に注意
- 任意整理中に転職をすることはできますか?
-
任意整理の手続きを行っていても、転職が制限されることはありません。
ただし、転職によって収入が大幅に下がってしまい、返済が難しい状況になると他の債務整理を検討する必要があります。
そのため、転職をする場合は必ず依頼している弁護士や司法書士へ早めに報告することが重要です。
- 任意整理では転職をすること自体は原則問題なし
- 和解前
- 受任~和解成立までの積立金が止まらないよう注意
- 和解後
- 毎月の返済を継続できるかどうかに注意
- 収入が減る場合
- 金額やスケジュールを担当者と再設定
- 任意整理ができそうにない場合は他の債務整理を検討
アドバイス
「任意整理中に転職し、年収が下がって返済ができなくなって自己破産に切り替えた」などの事例も実際にあります。
どのような結果になるにせよ、まずは早めの相談が必要になります。
体験談:依頼直後に転職した事例
20代 男性任意整理の手続きを始めた直後に転職が決まりました。収入が少し下がりましたが、司法書士の先生に相談して返済計画を見直してもらいました。
任意整理については以下の記事でも詳しく解説しています。




個人再生中の転職は「安定収入」が条件
- 個人再生中に転職することはできますか?
-
個人再生の申し立ての手続き中でも転職をすることはできます。
しかし、個人再生では安定した収入を得る見込みがあることが条件になります。
転職することで、安定した収入を得る見込みがないと判断されれば、個人再生はできなくなります。
- 個人再生は「安定した収入が継続的にあること」が条件
- 転職によって収入が増えて安定する場合:基本的に問題なし
- 転職によって収入が減少する場合:個人再生ができなくなる可能性あり
- 個人再生ができない場合は自己破産を検討
収入が大きく減る・不安定になる場合
- 個人再生前
- 条件に該当しないと裁判所が判断すれば個人再生をすることはできなくなる
- 個人再生をして返済中
- 返済ができなくなると、再生計画が取り消される
- 再生計画が取り消されると、減額がなかったことになる
個人再生については以下の記事でも詳しく解説しています。


自己破産中の転職と資格制限
- 自己破産の手続き中に転職をすることはできますか?
-
自己破産の手続き中でも、転職ができなくなるということはありません。
ただし自己破産の場合は資格制限があるため、破産手続開始決定から免責までの数か月間は一定の職業には就けないので注意が必要です。
- 自己破産中でも原則として転職は可能
- ただし、職業・資格制限に注意が必要
- 職業・資格制限の代表例
- 警備員、保険募集人、士業(弁護士、司法書士、税理士、宅地建物取引士)等
- 破産手続き開始から免責の確定まで制限される
- 制限される期間
- 同時廃止事件で2~4ヵ月ほど
- 管財事件の場合は4~12ヵ月ほど
資格制限に該当しない職種の場合は、転職の制限はありません。
自己破産については以下の記事でも詳しく解説しています。


債務整理後の転職活動で影響が出るケースは?
- 債務整理をしたことが転職に影響を与えることはありませんか?
-
転職の際に債務整理をしたことを申告する必要はないので、転職に影響がでるようなことはありません。
債務整理(任意整理・個人再生・自己破産)をしたことが、原則として転職活動に不利になることはありません。
面接や履歴書で「債務整理をした事実」を申告する義務もありません。
資格制限
自己破産手続き中は資格制限があるので、「生命保険募集人」「警備員」「宅建士」等の一部の職業では注意が必要です。
信用情報が転職に及ぼす影響
- 債務整理をすると信用情報機関に事故情報が登録される
- いわゆるブラックリストの登録
企業の採用部門が信用情報を照会する運用は通常想定されていません。
しかし、一部の業種・職種では就職時に信用情報の提出を求められる可能性があります。
ブラックリストの期間等については以下の記事で詳しく解説しています。


官報への掲載が転職に及ぼす影響
- 個人再生や自己破産をすると官報に掲載される
- 官報は一般の人は基本的に見ていない
官報を定期的に確認する会社はほとんどありません。
ただし、稀に金融機関や一部の企業では官報をチェックしているので、債務整理の事実が知られる可能性があります。
よくある質問
債務整理中・債務整理後に転職をしても大丈夫ですか?
原則として問題ありません。
ただし、手続き中は収入の変動が手続きや返済計画に影響するため、必ず専門家に相談・報告しましょう。
履歴書や面接で債務整理をした事実は申告必要?
申告をする義務はありませんし、基本的に企業側から聞かれることもありません。
転職に合わせて任意整理の和解条件を見直せる?
可能な場合があります。早めに依頼をしている弁護士や司法書士に相談するべきです。
官報の掲載で転職に支障が出ることはありますか?
官報を日常的に確認している企業はほとんどないため、転職に大きな影響が出ることは稀です。
まとめ
債務整理をしていても、転職自体は原則として可能です。
ただし、手続の種類や時期によって注意点があります。
- 任意整理
- 転職は自由だが収入が減る場合は、返済計画や積立金の調整を相談
- 個人再生
- 収入の安定性と継続性が重要
- 収入が減る場合は申立てが認められなくなる可能性あり
- 自己破産
- 免責確定まで一部の資格・業務に制限がある
- 一般職への転職は制限なし
- 免責後は制限が解除される
転職の時期や年収変動を踏まえて、手続担当の司法書士に早めに相談しておくことで、返済計画の再設定もスムーズに行えます。
司法書士からのアドバイス
債務整理をしても職業選択や転職の自由はほとんど制限されません。
司法書士として特にお伝えしたいのは、次の3点です。
- 「生活再建」を第一に考えること
- 債務整理は「再スタートのための手続き」です。
- 転職を通じて収入や環境を安定させることは、再建にとって非常に有意義です。
- 担当専門家に早めに共有すること
- 返済計画や積立金の金額を無理のない範囲に再設定できます
- 無理をせず継続できる計画に修正することが、最も現実的な対策です。
- 資格制限や社内制度を過度に恐れないこと
- 自己破産による資格制限は一時的なものです。
- 免責が確定すれば、制限は解除されます。
債務整理は終わりではなく、「再出発の準備期間」です。
転職をきっかけに、より安定した収入や環境を整えられれば、返済や生活の再建も前向きに進められます。
不安な点があれば、早めに司法書士へ相談し、手続と生活再建の両立を一緒に考えていきましょう。


