不動産を手放したくない方へ|債務整理ごとに司法書士が詳しく解説

当サイトの記事はすべて司法書士三浦永二(東京司法書士会所属、登録番号7300号)が執筆しています。

  • 債務整理をすると不動産は処分されてしまうのか?
  • 住宅ローン返済中に債務整理をすると自宅はどうなるのか?

債務整理をしたいけど、自宅等の財産はどうなるのか不安で踏み切れない人は多いと思います。

債務整理には任意整理と個人再生、自己破産があり、どの債務整理をするのか?ローン返済中なのか?完済しているのかにより、それぞれ不動産が処分されてしまうのかは異なります。

不動産を所有している場合に債務整理がどのような影響を及ぼすのか、住宅ローンの返済中・完済後のケースごとに詳しく解説します。

参考元:債務整理-東京司法書士会

目次

任意整理:不動産は処分されない

任意整理で不動産が処分されることはありますか?

任意整理では財産が処分されることはありません。

そのため自分名義のマイホームを持っていても、そのまま住み続けることができます。

任意整理では不動産や車等の財産を持っていても、財産が処分されることはありません。

マイホームを持っている場合もそのまま住み続けることができますし、不動産以外の車等のその他の財産も処分する必要はありません。

住宅ローンや不動産担保ローン、自動車ローンを任意整理すると、不動産や車が処分されることになります。

しかし、任意整理では手続きする業者を選択することができます。

住宅ローンや、自動車ローンを任意整理しなければ、不動産や車が処分されることはありません。

住宅ローンや自動車ローンは任意整理せず、その他の借金だけを任意整理をすることができます。

住宅ローンのように金額が大きい場合、任意整理によって3年程で分割返済するとなると、月々の返済額が非常に高額になります。

また、住宅ローンはもともとの金利が低いため、任意整理で利息の減免を受けるメリットもほとんどありません。

そのため、住宅ローンを任意整理の対象とすることは通常ありません。

住宅ローンや自動車ローンを返済中でも、そのローンを任意整理しなければ不動産や車は処分されることはない

住宅ローンや自動車ローンを除外して任意整理をしても支払いが苦しい場合は、個人再生や自己破産を検討する必要があります。

任意整理で不動産は処分されるか

個人再生:不動産が処分される可能性がある

不動産を持っている人が個人再生をすると、不動産は処分されますか?

不動産担保ローンは個人再生の対象に含まれるため、その返済中に個人再生を行うと、不動産は担保として処分されてしまいます。

一方、住宅ローンであれば、「住宅資金特別条項」が利用することで、自宅を手放さずに個人再生を進めることが可能です。

ローンを完済している場合は不動産を処分されることはありませんが、個人再生には「清算価値保障の原則」があるため、借金の減額幅が小さくなる場合があります。

参考:個人再生-東京弁護士会

不動産担保ローンは処分される

個人再生では、すべての借金を手続きの対象にしなければなりません。

そのため、不動産担保ローンを組んでいる場合は、そのローンも個人再生に含まれ、不動産は売却されることになります。

ただし、住宅ローンであれば「住宅資金特別条項」を利用できる条件を満たすことで、自宅を手放さずに借金を減額することが可能です。

住宅ローンなら処分されずに個人再生ができる

不動産担保ローンではなく、住宅ローンなら住宅資金特別条項を利用できる可能性があります。

住宅資金特別条項を利用すれば、住宅ローンを支払い続けながら、他の借金のみを減額して返済できます。

住宅資金特別条項が利用できる条件

自宅が個人再生をする本人名義で、本人が済むための自宅であること

セカンドハウスや投資用の物件の場合には認められません。

また、居住用に使用している面積よりも、店舗等の居住用以外に使用している面積の方が多い場合は認められません。

住宅ローン以外の担保が設定されていないこと

住宅ローン以外に、不動産担保ローン等で担保権が設定されている場合は認められません。

住宅ローン滞納により保証を実行されてから6ヶ月以上経過していないこと

住宅ローンの滞納により保証会社に代位弁済された場合、その代位弁済から6か月以上が経過していると認められません。

ローンを完済後も清算価値保障の原則に注意

不動産を持っていても、ローンを完済していたり、そもそも担保に入れていないケースでは不動産が売却されることはありません。

しかし、個人再生には「清算価値保証の原則」というものがあります。

この原則により、一定の財産がある場合には、その分を返済額に上乗せされる可能性があります。

個人再生をして減額される借金と不動産等の財産の金額を比較して、高いほうの金額を支払うことになります。

借金が1,000万円あり、価値300万円の不動産があると

通常であれば1,000万円の借金は200万円まで減額されます。

しかし、減額後の200万円より資産の300万円のほうが高いので、高いほうの300万円を分割で返済していくことになります。

個人再生の減額
  • 1500万円未満の借金=借金額の5分の1(減額後の金額が100万円未満の場合は100万円)
  • 1500万円以上3000万円未満の借金=300万円
  • 3000万円以上5000万円未満の借金=借金額の10分の1

上記の減額した金額と、自己破産をした場合に財産を売却した金額(清算価値)を比べて、高いほうの金額を原則3年(36回)で分割で支払う手続きです。

個人再生では
  • 不動産担保ローンや自動車ローン返済中の場合は処分される
  • 住宅ローンは個人再生から除外できるのでマイホームは処分されない
  • ローンを完済している場合、処分はされないが本来よりも減額されない可能性がある

自己破産:基本的にすべての財産が処分対象

不動産を持っている人が自己破産をするとどうなりますか?

自己破産では不動産は処分されることになります。

自己破産ではローンを返済中か完済しているかに関わらず、どちらにしても不動産は処分されます。

参考:自己破産-東京弁護士会

自己破産では、ローンの有無にかかわらず不動産は処分の対象となります。

住宅ローン返済中でも、完済していても、どちらにしてもマイホームを保持することはできません。

ただし、以下のような「自由財産」とされるものは例外として手元に残すことができます。

自由財産として残せる財産
  • 99万円以下の現金
  • 20万円以下の預貯金
  • 売却価格20万円以下の自動車
  • 20万円以下の保険の解約返戻金
  • 退職金の見込み額が160万円以下
  • 家具・家電など生活必需品

住宅を残したいなら「任意整理」か「個人再生」

住宅ローンを支払い中に債務整理をすると、自宅は処分されることになりますか?

任意整理か個人再生なら、自宅を処分されることなく債務整理ができます。

任意整理なら、住宅ローン以外の借金だけを任意整理できるので、自宅を処分せずに任意整理ができます。

個人再生では、住宅資金特別条項を利用できれば、自宅を処分せずに住宅ローン以外の借金を減額してもらうことになります。

自己破産では財産の処分があるので、自宅は処分されます

債務整理後も自宅に住み続けたい場合、以下のような選択が現実的です。

手続き自宅の扱いポイント
任意整理処分されない住宅ローン以外の借金のみを任意整理することが可能
個人再生条件付きで処分されない住宅資金特別条項を利用すれば自宅を維持できる
自己破産原則処分される借金全額免除の代わりに資産を手放す必要あり

任意整理と個人再生では住宅ローンは手続きせず、マイホームを守りながら他の借入のみの支払いを楽にすることができます。

しかし任意整理や個人再生では、自己破産のようにすべての支払いが免責される訳ではないので、返済を継続する必要があります。

任意整理や個人再生をしても住宅ローンの返済も困難な場合は、、債権者と支払い計画の見直しをするか、自己破産をするしかありません。

自己破産をすると自宅を失うことになりますが、借金の支払いはなくなるので毎月の返済に追われる生活から抜け出すことができます。

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