借金が時効になる条件・時効の仕組みと正しい対応法|司法書士が解説

当サイトの記事はすべて司法書士三浦永二(東京司法書士会所属、登録番号7300号)が執筆しています。

「何年も連絡がなかったのに、突然昔の借金の請求が来た」そんな時、どうすればよいのか迷う方はとても多いです。

私も司法書士として、「時効が使えるか」「本当に支払わなくていいのか」というご相談を受けてきました。

「あなたの借金が時効にあたるか」「正しい対応方法」「時効が使えなくなる注意点」まで網羅的に解説しています。

参考元:消滅時効とは何ですか。-法テラス

目次

まず確認!5分で分かる「借金の時効」セルフ診断チャート

「長い間返済していない借金があるけど、突然督促状や裁判所から書類が届いた…。本当にもう払わなくていいの?」

そんな方のために、まずは簡易診断チャートで「時効成立の可能性」をチェックしましょう。

  • Q1. 最後の返済予定の日から5年以上経過していますか?
  • Q2.この期間に、裁判所から訴状や支払督促が届いたことはありませんか?
  • Q3. 一部でも返済したり・少しづつでも支払いますという約束など“支払う意思”を示したことはありませんか?

すべて「はい」なら時効の可能性大!
→ 一つでも「いいえ」がある場合は、時効成立は難しいか、慎重な確認が必要です。

借金の時効とは?基礎知識と時効成立の条件

借金が時効になる条件を教えてください

返済の期限から支払いをしていない期間(滞納している期間)が、5年~10年あることが条件です。

ただし、時効期間が過ぎれば自動的に消えるのではなく、「時効援用」という意思表示が必要です。

借金の種類ごとの時効期間

  • 時効期間は返済期日から5年
  • 判決・調停・訴訟上の和解をした債権は10年

民法が改正される前の、2020年4月1日以前に成立した債権については、個人間の借入等については時効期間は10年です。

2020年4月1日以前に成立した債権
  • 消費者金融・クレジットカード・銀行ローン…5年
  • 個人間の借り入れ・信用金庫(事業資金でない場合)…10年
  • 判決・調停・訴訟上の和解をした債権…10年

ほとんどの人が消費者金融、信販会社(クレジットカード会社)、銀行からの借入だと思います。

そのため、契約した時期が2010年4月以前か以降かに関係なく、多くの方の借金の時効期間は5年になります。

銀行からの借り入れで代位弁済がされて保証会社に債権が移行していると、時効期間は返済期限からではなく代位弁済の日から5年です。

時効が成立するための3つの条件

  • 時効期間が経過していること
  • 時効の更新がないこと
  • 時効援用(意思表示の手続き)をすること

体験談:自分で時効成立に気づき、人生が変わったケース

30代 女性

何年も借金を返していなかったのに、ある日突然請求書が届いて不安でした。ネットの情報を見て司法書士に相談。時効援用で本当に返済義務がなくなり、肩の荷がおりました

借金の時効の条件

時効援用の手順と必要書類

時効期間が経過するだけで、借金を返済する必要はなくなりますか?

単に時効期間が経過しただけでは借金の返済義務はなくなりません。

時効を成立させるには、「時効援用」という正式な手続きを行う必要があります。

時効援用の流れ

STEP
時効成立の可能性を確認

契約書や請求書、督促、信用情報、取引履歴を確認し、最後の返済日をチェック

裁判等で時効の更新がされていないかに注意

STEP
内容証明郵便(配達証明付き)で「時効援用通知」を送る

書式ミスや送付先誤りがトラブルになりやすいため注意

STEP
相手方からの請求・裁判がないか注意して経過観察

もし時効が完成していない場合は、債権者から連絡がきたり、裁判上の請求がされる可能性があります

体験談:専門家に依頼してスムーズに解決できた

40代 男性

仕事が忙しく、面倒だと思って専門家に全てお願いしました。書類のチェックから債権者とのやり取りまで全て対応してもらい、安心して任せることができました。

時効が完成していないと督促が再開される

時効期間が経過していなかったり、時効が更新されていて時効になっていないと、督促が再開される可能性があります。

そのため、時効の期間は慎重に確認をする必要があります。

更新や催告がされていないか確認するために裁判所から書類が届いていないか?内容証明は届いていないかも確認する必要があります。

時効が成立しない・リセットされる場合(時効の更新)

借金の時効期間が過ぎても時効にならないことはありますか?

はい、時効が更新されると、時効期間はリセットされるので時効期間が過ぎても時効の援用を行うことができません。

訴えられて判決が確定した、支払督促が確定した、差押さえがされたり、返済を待ってもらったりすると時効が更新されます。

下記のように裁判上の請求や差押え等があると時効は更新されます

(※以前は時効の中断という名称でしたが、法改正により時効の更新という名称に変わりました。)

時効が更新される理由
  • 裁判上の請求
  • 差し押さえ
  • 債務の承認

更新した場合、時効期間は最初からの計算になるので再度5年~10年の期間が過ぎなければ時効にはなりません。

裁判上の請求

  • 裁判所に訴えられた
  • 支払督促
  • 調停の申し立て

上記の裁判上の請求をされて、確定すると時効は更新(中断)します。

時効だと思っていたのに、実は知らない間に裁判を起こされていることはよくあります。

裁判上の請求の後もまた時効は進みますが、裁判上の請求の後は時効期間が10年になります。

時効期間が経過した後の裁判

時効期間が経ぎても、裁判をされて判決が確定すると時効期間は判決から10年になり、時効を援用することはできなくなります。

そのような理由から、時効期間が経ぎた後でも貸金業者から裁判を起こしてくることがあります。

裁判を起こされたら、答弁書や口頭弁論期日に時効の援用を主張する必要があります。

差し押さえ

給与が差押えされた場合や、不動産等を担保にしている借入を滞納して不動産の差押さえ手続きが完了すると時効は更新します。

債務の承認

督促が来て借金の一部を支払ったり、「後で払いますから」等と支払いを待ってもらったりすると時効は更新します。

催告

時効の更新とは別になりますが、相手方から催告をされていると半年の間は時効が完成しません。

時効期間が近くて裁判手続きが間に合わない場合等に、一時的に時効を完済させないために催告が用いられます。

時効の更新、中断

時効期間経過後の債務の承認

時効期間経過後に返済をするとどうなりますか?

時効期間経過後に支払をすると債務承認にあたります。

債務の承認をすると、原則としては時効を援用することはできなくなります。

時効期間が経過した後に、少しだけでも支払ったり・支払いを待ってもらったりすると時効の援用ができなくなります。

そのため、時効期間が経過していても債務の承認を迫ってくる業者も存在します。

債務の承認をしてしまった場合

債務を認めてしまった場合でも、請求そのものに問題があると判断されれば、裁判で時効援用が成立することもあります。

ただ、一般的には債務を認めると時効援用は困難になるため、時効期間が過ぎたら早めに時効援用をすることが重要です。

保証人と時効の関係

保証人が時効を主張することはできますか?

保証人から借金の時効を主張することもできます。

保証人がいる場合も時効の更新には注意が必要です。

保証人がいる場合の時効の更新

本来の債務者(主たる債務者)に対して、裁判上の請求をしたり、本来の債務者が債務の承認をした場合には、保証債務の時効も更新します。

主たる債務者側で時効の更新がされていると、保証人からも時効の援用はできなくなります。

時効期間経過後の債務の承認

時効期間経過後に債務の承認をした場合は、時効の援用はできなくなります。

ただし、債務を承認した人だけが時効援用できなくなり、債務承認をしていないもう一方には影響しません。

時効期間経過後の債務の承認
  • 主たる債務者が債務の承認を行った場合=保証債務へは影響を及ぼさない
  • 保証人が債務の承認を行った場合=主たる債務へは影響を及ぼさない

時効期間経過後に債務の承認をしていない、一方の人からであれば時効を援用することができます。

過払い金が発生している可能性もある

2007年以前から取引を行っていた人には、過払い金が発生している可能性があります。

取引が長い人は時効の前に、まずは過払い金が発生していないかを確認するべきです。

過払い金が発生しているのであれば借金の支払いをする必要はなく、過払い金を返還してもらう立場になります。

久しぶりに督促が届いたら
  • 5年以上支払っていなければ時効の可能性あり
  • 2007年以前から借入をしている人は、まずは過払い金の調査をするべき

よくある質問(FAQ)

自分で時効援用できますか?

可能ですが、書式ミスや相手方の特定ミス、証拠不足で後からトラブルになる例もあります。

心配でしたら専門家への相談をおすすめします。

時効援用後に債権者から再度請求が来た場合、どう対応すればいいですか?

まずは請求書の内容を確認し、時効援用済みであれば再請求に応じる必要はありません。

不安な場合は専門家にご相談を。

家族や勤務先に時効援用したことが知られることはありますか?

家族や勤務先に連絡がいくことはありません。

時効援用をすると債権者とトラブルになることはありますか?

稀に債権者が強硬な対応をするケースもありますが、正当な権利行使なので安心して手続きしてください。

必要であれば専門家が対応します。

時効援用したら信用情報(ブラックリスト)には登録されますか?

時効の援用で登録されることはありませんが、それ以前の滞納により登録されている可能性があります。

裁判を起こされた後でも時効援用はできますか?

裁判で判決が確定した場合、原則として時効期間は10年に延長されます。

時効期間が経過しているなら、裁判の中で時効の主張(援用)が可能です。

信用情報(CIC・JICC・KSC)に自分の時効援用がどう影響するか確認したい

各信用情報機関で「開示請求」を行えば、ご自身の信用情報を確認できます。

まとめ|時効援用で人生再スタートするために

久しぶりに督促が届いたら
  • 5年以上支払っていなければ時効の可能性あり
  • 2007年以前から借入をしている人は過払い金がある可能性もあるので、過払い金の調査も必要

借金の時効について注意していただきたいのが、時効期間が経過しても時効の援用をしなければ時効は成立しないことです。

また、時効の援用前に債務の承認をしてしまうと時効の援用が出来なくなってしまうことも注意が必要です。

一部の貸金業者や債券回収業者は時効期間が経過していても援用されてなければ、債務の承認を迫ってきます。

司法書士コメント

借金の時効問題は、あと一歩の行動で大きく人生が変わります。成功の秘訣は早めの相談と正しい情報です。

何年も支払ってなかった借金の督促や、裁判所から書類が届いたらとにかく自分で判断せずまずは専門家に相談すべきです。

また、既に時効になっていると思っていた借金でも、過去に裁判を起こされていて時効になっていないということもあります。

時効になっていない場合、そのままでは生活の再建の目途はたちませんし、遅延損害金で借金が膨らんでいきます。

そのような場合には債務整理手続き等を行い、返済をしていくことをおすすめします。

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