債務整理を依頼する際は、弁護士や司法書士との面談が義務付けられています。
電話や郵送だけで契約を完結させることはできず、必ず本人と専門家が直接対面して話し合う必要があります。
なぜ面談が必要なのか、、面談が難しい場合の対処法、面談をしない事務所に依頼するリスク、代理人による面談が可能かについて解説します。
※新型コロナウィルスの影響で事務所へ行くのが難しい場合は、オンラインでの面談が認められています。
参考元:債務整理の弁護士報酬のルールについて-日本弁護士連合会
債務整理事件の処理に関する指針の制定について(会長談話)-日本司法書士会連合会
債務整理を行うには面談をする義務がある
- 債務整理をする時は面談をする必要がありますか?
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弁護士や司法書士は依頼を受けるにあたって、依頼者との直接の面談が義務付けられています。
事務所まで行くのが難しい場合、出張面談を行っている事務所もあります。
また、新型コロナウイルスの影響で事務所に行くのが難しい場合は、オンラインでの面談も可能です。
なぜ債務整理に面談が必要なのか?
弁護士・司法書士は、依頼を受ける際に「借金の状況」「生活状況」「希望する解決方法」などを丁寧に確認する必要があります。
この過程で、依頼者にとって不利益となる可能性のある事項、例えば以下のような内容も、必ず説明しなければなりません。
- 信用情報機関への登録(いわゆるブラックリスト)
- 自己破産による職業制限・財産処分
- 今後の生活設計への影響
過去には、面談を行わずに手続きを進めたことで、重要な説明がされず、依頼者とのトラブルが起きた事務所も存在します。

面談ができない場合の対応方法
「遠方に住んでいる」「体調が悪くて外出できない」など、事務所に行けない事情がある場合でも、以下のような代替手段があります。
出張面談に対応した事務所を探す
司法書士や弁護士が自宅や病院などに訪問して面談を行うケースもあります。
ただし、事務所によっては出張に対応していない場合や、出張費用がかかることもあるため事前に確認が必要です。
オンライン面談を活用(例外的対応)
新型コロナウイルスの影響を受け、現在はWeb会議ツールを用いたオンライン面談が一部認められています。
対応している事務所であれば、ZoomやSkypeなどで面談を完了させることが可能です。
面談は1回のみでOK
任意整理であれば、面談は通常1回のみで済み、以降の手続きは電話や郵送で行えます。
そのため、「対応が丁寧な事務所に依頼したい」と感じた場合は、多少遠方でも面談に行くという選択をする人もいらっしゃいます。

面談をしていない来店不要の事務所へ依頼をするリスク
- 面談をしていない事務所に依頼をするとどうなりますか?
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面談をしていないと聞き取りが疎かになって、後々でこんな話は聞いていないというトラブルになりかねません。
さらに面談義務を守っていなければ、業務停止等の懲戒処分をされる可能性もあり、業務が停止されば任意整理の手続きが進まなくなります。
弁護士や司法書士の中には面談を行わずに任意整理の依頼を受けているところもあります。
面談が義務とされている以上、面談をしていない事務所に依頼をすることは、依頼者にとっても深刻なリスクが発生します。
トラブルになる可能性
弁護士や司法書士自らが面談を行って、借入や返済の状況、収入や支出や今後の展望を聞き取りどのように解決をするのかを判断します。
また、ブラックリストに載ることやその影響が及ぶ範囲、自己破産なら職業制限や財産処分等も説明を行う必要があります。
面談を行わなければ、借り入れ状況等の聞き取りが疎かになり、後でトラブルになることがあります。
- ブラックリストに登録されて、任意整理をしていないカードも使えなくなるのは聞いていなかった
- 任意整理をしたが返済計画が現実的でなく、後で自己破産をすることになった
上記のようなトラブルになった事例が多数発生したため、面談をすることが義務付けられました。
任意整理後に再度債務整理を行うには、さらに費用がかかり、依頼者も手間がかかることになります。

懲戒処分のリスクと依頼者への影響
面談義務を守らないと、弁護士や司法書士は懲戒処分(業務停止など)を受ける可能性があります。
その結果、手続きが途中で止まり、以下のような事態に発展するおそれもあります。
- 業務が継続できないことによる手続きの放置
- 返済停止中に発生した遅延損害金の請求
- 訴訟を起こされる可能性
業務が停止されると、貸金業者から本人への督促が再開されたり、返済を止めていた間の遅延損害金を請求される可能性もあります。
その後に任意整理ができたとしても発生した遅延損害金はカットできず、返済が必要になる可能性もあります。
また、あまりにも手続きが進まなければ、貸金業者側から本人が訴えられてしまうことも考えられます。

代理人から債務整理を依頼することはできるか
- 債務整理は、家族等の代理人から依頼することはできますか?
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代理人から債務整理を依頼することはできません。
相談だけなら本人以外の人からでも行うことはできますが、本人確認や重要事項の説明が必要になるので面談は必ず本人と行う必要があります。
本人との面談が必要
債務整理の相談だけなら本人ではなく、家族等からでも行うことはできます。
しかし債務整理を依頼する時は、弁護士会や司法書士会で、名義人本人と弁護士や司法書士が直接会って面談することが義務付けられています。
面談時に本人確認や信用情報の影響がでること等の重要事項の説明もあるので、必ず本人との面談が必要になります。
同席をすることは可能
本人が一人で来所できない場合、ご家族が付き添って一緒に面談に来ることは可能です。
話をサポートしながら説明を受けることで、より安心して手続きを進められます。
認知症などで本人が契約できない場合
- 認知症等で、債務整理の契約ができない人はどうすればいいですか?
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認知症等で契約ができない場合は、成年後見人という代理人を立てて債務整理を行うことができます。
参考元:成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A – 成年後見制度・成年後見登記制度
認知症などにより判断能力が低下している場合は、「成年後見人制度」を利用できます。
成年後見人とは、本人に代わって法律行為(契約など)を行うことができる法定代理人です。
- 成年後見人は家庭裁判所に申立てて選任
- 任意整理や自己破産の手続きも成年後見人が代理で行える
- 申立てから選任まで3〜6か月かかるのが一般的
意思能力によって判断されるので、認知症と診断されても必ず成年後見人を選任しなければならない訳ではありません。

本人が亡くなった場合
- 名義人本人が亡くなった場合は、相続人から債務整理を依頼することはできますか?
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相続人から債務整理を依頼することはできます。
債務整理ではなく、相続放棄をするという選択肢もあります。
また、亡くなった人が長年取引を行っていたのであれば、過払い金が発生している可能性もあります。
借金の名義人が亡くなった場合は、借金も相続されることになります。
そのため、借金の名義人が亡くなった場合、相続人が債務整理を依頼することが可能です。
過払い金がある可能性
長年取引があった場合は、過払い金が発生しているケースもあるため、まずは過払い金の調査を行いましょう。
相続放棄の検討
過払い金がなく、借金を相続することになった場合は、「相続放棄」を行うことで借金の支払いをする必要がなくなります。
ただし、相続放棄をすると資産などプラスの財産も相続できなくなるため、慎重な判断が必要です。
プラスの財産がなく借金だけなら相続放棄、プラスの財産もあるケースでは相続か相続放棄のどちらがいいのかを良く検討すべきです。
- 取引が長ければ、過払い金が発生していることもある
- 過払い金が発生していなく、資産等もなければ相続放棄を検討する
- 資産等があり、相続放棄ができない場合は債務整理を検討する
過払い金と相続放棄については以下の記事でも詳しく解説しています。


まとめ|面談義務を守る信頼できる事務所に依頼を
債務整理を行う際には、弁護士または司法書士との面談が義務付けられており、電話や郵送のみでは手続きできません。
- 任意整理は通常1回の面談でOK
- 面談を行わない事務所に依頼すると、トラブルや懲戒処分のリスクあり
- 家族が代理で相談することはできるが、面談は本人が行う必要がある
- 認知症等で契約ができないなら、成年後見人を申し立てる
- 相続した借金は、相続人から債務整理を依頼することができる
後悔しない債務整理のためには、「面談義務をしっかり守る誠実な事務所」に依頼しましょう。