「任意整理をしたら会社に電話が来る?」「債務整理で職場にバレる?」──
任意整理・個人再生・自己破産といった債務整理そのもので在籍確認(勤務先に連絡)が行われることは原則ありません。
ただし、一定の条件を満たすと勤務先へ連絡・書類送達が生じることがあります。
本記事では、会社に連絡が入る2つの原因、法的根拠、差押えまでの流れ、そして実務上の回避策を整理します。
任意整理・債務整理で「在籍確認」はある?|原則なし
- 債務整理を依頼すると、勤務先に対して在籍確認されますか?
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債務整理を行っても、現在の勤め先に対して在籍確認の連絡がくることは原則ありません。
中には勤め先が代わっている場合は現在の勤め先を申告しなければ任意整理ができない会社もあります。
ただし、その場合も現在の勤務先に在籍確認の連絡が入るようなことはありません。
- 結論:在籍確認は原則なし
- 任意整理
- 通常は債権者が勤務先に電話して在籍確認を行うことはない
- 個人再生/自己破産
- 裁判所を通じた法的整理でも、手続の性質上、勤務先への在籍確認はしない
- 過払い金請求
- 返還請求で勤務先に連絡が行くこともない
在籍確認とは別のお話ですが、貸金業者によっては勤務先が変わっている場合は、現在の勤務先を知らせる必要があります。
勤務先が変わっている場合の対応
債権者によっては、登録されている勤務先情報が古いと、現在の勤務先を申告するよう求められることがあります。
これは支払いの滞納等があった場合に、給与差押えなどの法的手続きに備えるための確認であり、在籍確認を行うわけではありません。
体験談:勤務先が変わっていたケース
30代 男性司法書士から「新しい勤務先を伝えてください」と言われましたが、会社に電話されることはなく、無事に和解まで進められました。


借金が会社にバレる2つの原因|連絡不能と給与差押え
- 借金があることが会社にバレてしまうことはありますか?
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返済ができてない状態で、債権者からの連絡を放置し続けていると、勤務先に連絡が入る可能性があります。
また、裁判を起こされて給与が差し押さえられることもあります。
給与差し押さえの際は、債権を差押える旨の通知書が会社に届くので、借金を滞納している事実が会社に知られてしまいます。
債務整理をしたことが理由で会社に連絡が入ることはありませんが、返済の滞納を放置しているとバレる可能性があります。
原因1:債務者と連絡が取れない
- 返済日に支払いができなかった場合
- まずは債権者(貸金業者)から電話やメールなどで連絡が入る
- その連絡を無視・放置していると、勤務先に連絡が入るおそれがある
通常、貸金業法第21条第3項(取立て行為の規制)により正当な理由なく勤務先へ連絡することは禁止されています。
ただし、次のような場合には「正当な理由あり」と判断され、例外的に勤務先へ電話が入ることもあります。
- 勤務先へ連絡される可能性がある主なケース
- 何度連絡しても債務者本人と連絡が取れない
- 登録住所へ郵送しても書類が届かず返送されてくる
「正当な理由」があると見なされると、債権者が勤務先に電話をするケースがある、ということです。
任意整理後に滞納した場合
- 任意整理後も弁護士・司法書士が手続を継続中なら、滞納の連絡はまず事務所に入る
- しかし、事務所からの連絡を無視し続けると、専門家が辞任することがある
- 専門家に辞任されると、債権者から本人への直接連絡が再開する
- 本人にも連絡がつかない場合、勤務先に連絡が入る可能性がある
※任意整理後に弁護士・司法書士が業務を終了している場合は、最初から債権者が本人に直接連絡します。
原因2:給与差押えの手続に進んだとき
- 滞納し連絡も取らずに放置していると
- 訴訟を提起されたり支払督促という書類が届くことがある
- 裁判や支払督促を無視していると
- 最終的に判決や支払督促が確定する
- 勤務先が知られている場合は給与が差押えされる可能性あり
給料が差押えされる際には、給与を差押える旨の通知書が会社に届くので、借金を滞納している事実が勤務先に知られます。
SMS・電話・郵便での督促が続き、連絡がとれないと連絡不能と判断されるリスクが高まります。
裁判所から特別送達で届きます。
答弁書・異議の未提出により請求が確定し、強制執行が可能になります。
差押命令が送達され、一定割合が給料から控除されます。
「カード申込時の在籍確認」と「債務整理の勤務先連絡」は別物
- カードやカードローンの申込審査では、在籍確認の電話が行われることがある
- これに対し、債務整理では在籍確認は行われない
- 取立てで勤務先に連絡することは原則制限されている
- 上記の通り「正当な理由」や「差押手続き」などの例外時のみ可能性がある
放置せず、必ず連絡を取ることが最善の対策
滞納している状態で連絡を無視していれば、債権者も勤務先への連絡や裁判を起こすという選択肢しかなくなってしまいます。
裁判を起こされても、分割払いなどで和解が成立する可能性もあるので、とにかく放置はせずこまめに連絡をとることが重要です。
返済に困ったら早めに専門家に相談
弁護士や司法書士の専門家に債務整理を依頼をすると、その時点から貸金業者からの督促は止まります。
また、裁判の対応が難しいと感じる場合も専門家に相談をするべきでしょう。
体験談:勤務先に影響はなかった事例



返済が厳しくなったときに、怖くて電話を無視していました。司法書士に相談したらすぐに督促が止まり、勤務先にも影響はありませんでした。
任意整理の流れについては以下の記事でも詳しく解説しています。




過払い金請求でも在籍確認はされない
- 過払い金請求では勤務先に在籍確認をされることはありませんか?
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過払い金請求で、勤務先に在籍確認をされることはありません。
過払い金請求は、過去に払いすぎた利息を返してもらう手続きです。
この手続きでは返金を求めるだけなので、勤務先に連絡される理由がありません。
返済中で借金が残っていても、引き直し計算によって過払い金が発生し、残高がなくなることもあります。
この場合でも、勤務先への在籍確認は行われません。
過払い金請求については以下の記事でも詳しく解説しています。




よくある質問
債務整理をしても仕事を続けられますか?
はい。債務整理は個人の私的な手続きであり、会社に報告義務はありません。制限があるのは自己破産の場合で一部職種(警備員・保険外交員など)に限られます。
退職後や無職でも債務整理はできますか?
可能です。再就職の予定や年金・失業手当などの収入見込みがあれば任意整理は可能です。収入が全くない場合は、自己破産や法テラスの活用を検討しましょう。


債務整理をすると住宅ローンや自動車ローンに影響しますか?
信用情報に「事故情報(ブラック)」が登録されるため、5〜7年程度は新たなローン審査に通りにくくなります。勤務先に知られることはありませんが、金融取引には影響します。


債務整理をしたら転職先に影響しますか?
債務整理の事実は信用情報機関にのみ登録され、通常は転職先の企業が閲覧することはできません。自己破産と個人再生では官報に掲載されますが、あまり影響はありません。


まとめ:会社に知られないためのポイント
| 状況 | 会社に連絡が入るか |
|---|---|
| 債務整理をした場合 | 在籍確認はされない |
| 勤務先を申告する場合 | 在籍確認はされない |
| 返済を滞納して放置 | 勤務先に連絡が入る可能性あり |
| 訴訟や給与差押え | 差押通知により会社に知られる |
司法書士からのアドバイス
勤務先への連絡を心配される方は多いですが、実際には「放置」や「連絡不能」にならなければ、勤務先に電話が入ることはほとんどありません。
返済の滞納等があっても早い段階で相談すれば、督促や勤務先への連絡などのリスクは確実に減らせます。
司法書士や弁護士に依頼すれば、受任通知の送付によって督促が止まり、返済計画も現実的な範囲に調整できます。
借金問題は、放置するほど状況が悪化します。
勤務先に連絡が入る前に、一度専門家に相談することが最も確実な対策です。
小さな不安でも、早めに相談することで「会社に知られずに済む解決策」が見つかります。



