- 「裁判所から書類が届いたが今から任意整理できる?」
- 「任意整理をすると貸金業者から訴えられるのでは?」
- 「財産を差押えられるのでは?」
このような質問を受けることがあります。
本記事では、任意整理と裁判・差押えの関係について、司法書士がわかりやすく解説します。
よくある質問まとめ
滞納していたら訴状が届いた、どうすればいい?
放置せず、期日までに「答弁書」を提出し分割払いでの和解を申し出ることが重要です。専門家に依頼をする方法もあります。
支払督促とは?
簡易裁判所が送る書面です。2週間以内に異議申立てをしないと確定し、強制執行(差押え)につながります。
任意整理をして貸金業者から訴えられることはありますか?
あります。任意整理前にすでに延滞をしていたり、和解までに時間がかかると訴えてくる会社があります。
裁判後でも任意整理はできる?
可能です。 ただし、判決が確定した後は条件が厳しくなるため、早めの相談が必要です。
裁判所に出廷は必要になる?
弁護士や司法書士に任意整理をしている場合は、多くのケースでは本人が出廷する必要はありません。
任意整理をすると裁判を起こされるのか?
任意整理中に訴えられるケースは多くはありませんが、延滞や交渉の長期化などで提訴されることはあります。
法律上、貸金業者は任意整理中でも債務者本人を訴えることができますが、実際に裁判を起こす業者は少ないです。
訴えられるケース
- 任意整理前から延滞・滞納が続いている
- 和解交渉が長引いている
- 貸金業者の方針
一部の貸金業者は、任意整理の開始から和解までに時間がかかると裁判を起こすことがあります。
しかし、弁護士や司法書士は早めに訴えてくる会社は把握しています。
そのような業者が相手の場合は早めに対応するため、訴訟に至る前に和解するケースがほとんどです。
任意整理については以下の記事で詳しく解説しています。


訴えられた後に任意整理は可能か
- 訴えられて、裁判所から通知が来ている場合も任意整理はできますか?
-
既に訴えられている場合は任意整理ではなく、裁判上の和解になることが多いです。
訴えられても貸金業者との話し合いがまとまれば、任意整理と同様に「将来利息のカット」「分割返済」で和解できることもあります。
ただし、判決や支払督促が確定してしまうと、裁判所での和解はできなくなるため、できるだけ早めの対応が必要です。
裁判中でも話し合いで分割払いにできる
- 訴状が届いた場合
- 裁判に出廷し貸金業者と話し合いが可能
- 元金のみの分割払いで和解できるケースが多い
- 支払督促が届いた場合
- 異議申立てを行えば通常の裁判に移行する
- 移行後は、裁判所で分割払いや和解内容を話し合うことが可能になる
あくまでも話し合いなので、本人側と貸金業者側で話し合いがまとまらなければ、一括で支払えという内容の判決になることもあります。
裁判を無視すると判決が下され、給与や預貯金が差押えられるリスクが高まります。
訴えられた後に依頼をした事例

訴状が来てから相談。利息カットして分割払いにしてもらえました。裁判所の対応も司法書士さんに全部お任せできました。
既に判決や支払督促が確定していると任意整理は難しい
- 判決や支払督促が確定した後は、「裁判上」での和解はできない
- 債権者によっては判決後でも「裁判外」での交渉に応じてくれる場合がある
- ただし、債権者側に任意整理へ応じるメリットが少ないため、交渉は難航しやすい
判決等が確定した後は判決がでる前に比べると、任意整理に応じない可能性が非常に高くなります。
任意整理に応じてもらえなく、返済ができない時は個人再生や自己破産を検討する必要があります。
個人再生や自己破産については以下の記事で詳しく解説しています。


書類別に見る|届いたときの対応方法
訴状+口頭弁論期日呼出状
- 内容: 裁判が始まる通知書
- 期限: 裁判所に指定された期日まで
- 対応: 答弁書を提出し、分割払いでの和解を希望する意思を伝える
支払督促
- 内容: 簡易裁判所から送られる請求書類
- 期限: 受け取ってから2週間以内
- 対応: 異議申立てを提出(放置厳禁)
- 異議を出せば通常訴訟に移行し、話し合いが可能になる
少額訴訟呼出状
- 内容: 60万円以下の少額債権を対象とした訴訟
- 期限: 書面に記載された指定期日まで
- 対応: 分割払いの提案や和解交渉を行う
出廷は必要?代理人がいれば基本は不要
- 任意整理を依頼していれば、基本的には司法書士や弁護士が代理人として対応する
- 簡易裁判所の民事事件(訴額140万円以下)では、認定司法書士も訴訟代理が可能
事案や裁判所の指示により、本人出廷を求められる場合がありますが、本人が出廷を求められるのは例外的です。
通常は代理人が答弁書の提出や出廷、和解交渉を行います。
裁判上の和解と任意整理の違い
比較項目 | 任意整理 | 裁判上の和解/判決 |
---|---|---|
手続方法 | 裁判外の交渉 | 裁判手続の中で成立 |
利息 | 利息カットが多い | 利息カットが多い |
分割回数 | 3〜5年が一般的 | 3〜5年が一般的 |
延滞時の扱い | 再交渉可能な場合あり | 直ちに強制執行可能 |
- 裁判上の和解は判決と同じように既判力というものがある
- 和解内容通りに返済ができない場合
- 給与差押え等の強制執行をされる可能性がある
借金の時効と訴えられたときの対応
- 5年以上返済していない借金は、時効が成立している可能性がある
- ただし、時効は主張しないと適用されない(時効援用)
- 裁判所や相手に対して「時効を援用する」という意思を伝える必要あり
- もし裁判を放置して判決が確定すると、後から時効を主張できなくなる
時効の援用は答弁書に時効を援用する旨を記載する、時効だから支払わないという旨の意思表示で問題ありません。
時効が成立していても裁判を放置して判決が確定すると、時効を主張できなくなってしまうので注意が必要です。



10年以上前に利用していた債権者から突然訴状が届きました。司法書士に相談したところ時効の手続きをしてもらい支払いが不要になりました。
時効については以下の記事でも詳しく解説しています。


任意整理で財産が差押えられることはあるか?
- 任意整理をして、財産が差押えられてしまうことはありますか?
-
任意整理をして、財産が差押えられることはほとんどありません。
任意整理後に訴えられて判決が確定するところまでいかないと差押えはできませんが、そもそも任意整理をしても訴えられる可能性は低いです。
任意整理後に返済ができず訴えられて、判決を取られると財産が差押えられる可能性があります。
- 任意整理しただけで、財産が差押えられることはほとんどない
- 判決や支払督促が確定しなければ、債権者は差押えを行うことはできない
差押えが行われるのは、以下のような流れをたどった場合です。
- 滞納
- 督促を放置
- 訴えられるor支払督促
- 裁判や支払督促も放置
- 裁判や支払督促が確定する
- 差押え
支払いを滞納している状態で督促が何度も来ているのに放置すると訴えられて、最終的に差押えが行われます。
裁判を起こされてしまったら
- 裁判所で話し合いをして、裁判上の和解を交わす
- 和解内容どおりにきちんと返済をすれば、差押えられることはない
裁判を無視していると判決をとられて、財産を差押えられてしまう可能性があります。
裁判を起こされても、きちんと対応をしていれば多くの場合は和解になるので、財産を差押えられてしまうことはほとんどありません。


銀行を任意整理する際は口座凍結に注意
- 銀行からの借金を任意整理すると銀行口座が凍結される
- 凍結後、借金と銀行口座にある預貯金とで相殺される可能性あり
任意整理前に口座からお金を引き出しておけば、口座が凍結されても借金と相殺されることはありません。
銀行の債務整理については以下の記事でも詳しく解説しています。


自動車ローン返済中の場合は車が引き上げられる可能性がある
- 自動車ローン返済中の会社を任意整理すると
- 車は引き上げられて売却される可能性あり
ただし、任意整理は債権者を選んで手続きできるため、自動車ローンの会社を対象外にすることで、車を手元に残すことも可能です。
債務整理と自動車の関係については以下の記事でも詳しく解説しています。


差押え後に任意整理をしても差押えは止められない
- 差押えられた後に任意整理をして、差押えを止めることはできますか?
-
差押え実行後は、任意整理では原則として差押えの解除はできません。 差押え前の早めの相談が重要です。
財産が差押えられてしまった後は、任意整理をしても差押えを止めることはできません。
相手方にしてみたら手間と時間をかけて裁判手続きをして差押えを行っているので、差押えを止めるメリットがないためです。
自己破産で差押えは止まる
自己破産を申立てると、裁判所が「開始決定」を出した時点で差押えなどの強制執行が一時停止されます。
また、管財事件で給料が差押えられているケースでは給料の全額を受け取れるようになります。
しかし同時廃止の場合は、自己破産の開始決定後~免責が確定するまでは差押えられている部分の給料は受け取ることはできません。
まとめ|裁判になっても任意整理で解決できる可能性はある
- 任意整理をして訴えられる可能性は低い
- 一部訴えてくる会社も、早めに和解をすれば問題なし
- 既に訴えられている場合、裁判所で和解ができることがある
- 裁判を放置していると差押えられる可能性あり
司法書士からのアドバイス
借金の返済が難しく、訴状や支払督促が届くと不安で冷静な判断ができなくなる方が多く見られます。
しかし、裁判や督促が来ても話し合うことが可能です。
- 期限内に対応すれば、強制執行(差押え)を防ぎ、分割和解で解決できる可能性が高い
- 時効が成立している場合は、適切に援用すれば支払義務を免れることもある
- 書類を放置するよりも、早めに専門家へ相談する方が圧倒的に有利
司法書士に依頼すれば、下記をあなたに代わって行うことができます。
- 答弁書の作成
- 和解交渉(分割案・利息カット)
- 時効援用の手続き
焦らず、まずは状況を整理し、専門家へ相談することが解決への第一歩です。