債務整理の面談義務|来店不要・面談なし・代理面談を司法書士が解説

当サイトの記事はすべて司法書士三浦永二(東京司法書士会所属、登録番号7300号)が執筆しています。

債務整理を依頼する際は、弁護士や司法書士との面談が義務付けられています。

電話や郵送だけで契約を完結させることはできず、必ず本人と専門家が面談をする必要があります。

なぜ面談が必要なのか、難しい場合の対処法、面談をしない事務所に依頼するリスク、代理人による面談が可能かについて解説します。

最初に結論

  • 原則:面談は必須(少なくとも初回1回)
  • 面談なしは基本不可
    • 選ぶと手続停止・督促再開・遅延損害金など実害につながるおそれ
  • 代理面談は基本は不可
    • 委任・契約は必ず本人が面談して行う必要がある

参考元:債務整理の弁護士報酬のルールについて-日本弁護士連合会

債務整理事件の処理に関する指針の制定について(会長談話)-日本司法書士会連合会

目次

債務整理の面談義務(なぜ必要か)

債務整理をする時は面談をする必要がありますか?

弁護士や司法書士は依頼を受けるにあたって、依頼者との直接の面談が義務付けられています。

弁護士や司法書士が債務整理の依頼を受ける際は、依頼者の状況を正確に把握し、リスクも含めて丁寧に説明することが求められます。

専門家が確認・説明すべき内容

  • 借金の内容
    • 債権者・残高・延滞状況など
  • 生活状況
    • 収入・支出・家族構成など
  • 希望する解決方法
    • 任意整理・個人再生・自己破産
  • 不利益になる可能性のある点
    • 信用情報への登録(いわゆるブラックリスト)
    • 自己破産時の職業制限・財産処分
    • 今後の生活設計への影響

過去には、面談を行わずに手続きを進めたことで説明不足となり、トラブルになった事例もあります。

そのため、専門家が依頼者と直接会って状況を確認し、重要事項を説明することが義務化されています。

面談が難しいときの対応

「遠方に住んでいる」「体調が悪くて外出できない」など、事務所に行けない事情がある場合でも、以下のような代替手段があります。

出張面談に対応した事務所を探す

司法書士や弁護士が自宅や病院などに訪問して面談を行うケースもあります。

ただし、事務所によっては出張に対応していない場合や、出張費用がかかることもあるため事前に確認が必要です。

オンライン面談を活用

オンライン面談に対応している事務所であれば、ZoomやLINE、meet inなどで面談を完了させることが可能です。

任意整理は面談1回でOK(以降は電話・郵送)

任意整理であれば、面談は通常1回のみで済み、以降の手続きは電話や郵送で行えます。

そのため、「対応が丁寧な事務所に依頼したい」と感じた場合は、多少遠方でも面談に行くという選択をする人もいらっしゃいます。

体験談:面談後は電話と郵送のみで簡単

40代 女性

最初の面談で丁寧に話を聞いてもらえたので、不安がすっかり消えました。その後は電話と郵送だけで進み、仕事を休まずに手続きできました。

来店不要・面談なし事務所のリスク

面談をしていない事務所に依頼をするとどうなりますか?

面談をしていないと聞き取りが疎かになって、後々でこんな話は聞いていないというトラブルになりかねません。

さらに面談義務を守っていなければ、業務停止等の懲戒処分をされる可能性もあり、業務が停止されば任意整理の手続きが進まなくなります。

弁護士や司法書士の中には面談を行わずに債務整理の依頼を受けているところもあります。

面談が義務とされている以上、面談をしていない事務所に依頼をすることは、依頼者にとっても深刻なリスクが発生します。

トラブルになる可能性

  • ブラックリストに登録されて、カードが使えなくなるのは聞いていなかった
  • 任意整理をしたが返済計画が現実的でなく、後で自己破産をすることになった

上記のようなトラブルになった事例が多数発生したため、面談をすることが義務付けられました。

任意整理後に再度債務整理を行うには、さらに費用がかかり、依頼者も手間がかかることになります。

最初に時間をかけてでもキチンと面談を行い、後で後悔することのないようにするべきです。

面談義務を守らない場合のリスク

  • 懲戒処分の可能性
    • 面談義務を守らないと、専門家は業務停止などの懲戒処分を受けることがある
  • 手続きが途中で停止するリスク
    • 業務が停止されると、任意整理などの手続きが中断・放置される可能性がある
  • 依頼者に生じる不利益
    • 手続きが止まる間に、返済停止中の遅延損害金が発生する
    • 貸金業者から督促が再開される
    • 訴訟を起こされるリスクもある
  • 遅延損害金は後からカットできない
    • 発生した遅延損害金はカットできず支払いが必要になる可能性がある

つまり、面談を行わない事務所に依頼すると、依頼者自身が金銭的・手続的な不利益を受けるおそれがあります。

そのため、必ず面談を行っている信頼できる事務所に依頼することが大切です。

家族の代理依頼はできない|同席は可能

債務整理は、家族等の代理人から依頼することはできますか?

代理人から債務整理を依頼することはできません。

相談だけなら本人以外の人からでも行うことはできますが、本人確認や重要事項の説明が必要になるので面談は必ず本人と行う必要があります。

本人との面談が必要

  • 債務整理の相談だけであれば、本人以外(家族など)からでも行うことが可能
  • ただし、正式に依頼する段階では、家族や代理人のみの面談はできない

面談時に本人確認や信用情報の影響がでること等の重要事項の説明もあるので、必ず本人との面談が必要になります。

たとえ家族であっても、名義人に代わって面談を行うということは認められていません。

同席をすることは可能

本人が一人で来所できない場合、ご家族や友人が付き添って一緒に面談に来ることは可能です。

話をサポートしながら説明を受けることで、より安心して手続きを進められます。

面談は任意整理であれば基本的に1度だけなので、その後の手続きは電話や郵送のみで行うことができます。

認知症などで本人が契約できない場合

認知症等で、債務整理の契約ができない人はどうすればいいですか?

認知症等で契約ができない場合は、成年後見人という代理人を立てて債務整理を行うことができます。

参考元:成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A – 成年後見制度・成年後見登記制度

認知症などにより判断能力が低下している場合は、「成年後見人制度」を利用できます。

成年後見人とは、本人に代わって法律行為(契約など)を行うことができる法定代理人です。

  • 成年後見人は家庭裁判所に申立てて選任
  • 任意整理や自己破産の手続きも成年後見人が代理で行える
  • 申立てから選任まで3〜6か月かかるのが一般的

意思能力によって判断されるので、認知症と診断されても必ず成年後見人を選任しなければならない訳ではありません。

名義人が死亡した場合の対応(相続放棄・債務整理・過払い金)

名義人本人が亡くなった場合は、相続人から債務整理を依頼することはできますか?

相続人から債務整理を依頼することはできます。

債務整理ではなく、相続放棄をするという選択肢もあります。

また、亡くなった人が長年取引を行っていたのであれば、過払い金が発生している可能性もあります。

  • 借金の名義人が亡くなった場合、相続人が債務整理を依頼することは可能
  • ただし、債務整理を行うかどうかは、慎重に判断する必要がある
STEP
過払い金の有無を確認

長年の取引がある場合は、過払い金が発生している可能性がある

STEP
相続放棄を検討

過払い金がない場合は、相続放棄を行うことで借金の返済義務をなくすことができる

STEP
債務整理を検討

資産があり、相続放棄ができない場合は、相続人が債務整理を行うことも可能

過払い金がある可能性

長年取引があった場合は、過払い金が発生しているケースもあるため、まずは過払い金の調査を行いましょう。

過払い金については以下の記事でも詳しく解説しています。

相続放棄の検討

過払い金がなく、借金を相続することになった場合は、「相続放棄」を行うことで借金の支払いをする必要がなくなります。

ただし、相続放棄をすると資産などプラスの財産も相続できなくなるため、慎重な判断が必要です。

資産があり、相続放棄ができない時は、相続人が債務整理をすることが可能です。

相続した借金と相続放棄については以下の記事でも詳しく解説しています。

よくある質問

面談のときに同席できる人はいますか?

家族や友人に同席してもらうことは問題なく可能です。ただし、意思確認や契約は本人が行う必要があります。

面談をせずに電話やLINEで相談できますか?

問題なく可能です。正式な依頼前の事前相談(電話・LINE・メール)は多くの事務所で対応しています。

面談後に依頼しなかった場合、料金はかかりますか?

ほとんどの事務所では相談料は無料で、面談だけで終了しても費用は発生しません。ただし事務所によっては有料の場合もあるため、事前確認を。

面談でどんな質問をされますか?

主に次の内容です。

  • 借入先と金額、取引期間、延滞の有無
  • 収入・支出・家族構成
  • 今後の支払見込みや希望方針(減額・免除など)

隠さず正確に答えることで、最適な解決策を提案できます。

まとめ|面談義務を守る信頼できる事務所に依頼を

債務整理を行う際には、弁護士または司法書士との面談が義務付けられており、電話や郵送のみでは手続きできません。

  • 任意整理は通常1回の面談でOK
  • 面談を行わない事務所に依頼すると、トラブルや懲戒処分のリスクあり
  • 家族が代理で相談することはできるが、面談は本人が行う必要がある
  • 認知症等で契約ができないなら、成年後見人を申し立てる
  • 相続した借金は、相続人から債務整理を依頼することができる

後悔しない債務整理のためには、「面談義務をしっかり守る誠実な事務所」に依頼しましょう。

司法書士からのアドバイス

債務整理は、「誰に依頼するか」で結果が大きく変わる手続きです。

面談を省略する事務所は、一見手軽に見えても、依頼者の状況を正確に把握できず、誤った手続き選択などにつながることがあります。

一方、面談を丁寧に行う事務所では、

  • 生活状況や家計の実情をふまえた現実的な返済計画を提案できる
  • 借入理由や優先順位をもとに、過払い金や減額交渉の余地を見極められる
  • 相続・家族関係など複雑な背景を整理した上で最適な法的手段を選べる

といったメリットがあります。

借金問題は誰にでも起こりうることです。

焦らず、まずは面談で正確な状況を共有することから始めましょう。

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