債務整理と法テラス|相談無料の条件・費用・流れを司法書士が解説

当サイトの記事はすべて司法書士三浦永二(東京司法書士会所属、登録番号7300号)が執筆しています。

  • 法テラスの所定の要件を満たせば「法律相談が無料」になる
  • 手続費用は「民事法律扶助(立替)」を利用できる場合がある

借金の返済が困難になり、債務整理を検討しても、弁護士や司法書士にかかる費用の支払いがネックになることがあります。

もともと返済が厳しいからこそ債務整理を考えているのに、「手続きにかかる費用が出せない」というのは本末転倒です。

そうした場合は、法テラス(日本司法支援センター)の利用を検討しましょう。

収入や資産に関する一定の条件を満たせば、法テラスを通じて費用を抑えて債務整理ができ、その費用も立て替えてもらえる制度があります。

法テラスを利用して費用を抑えることができる条件と、債務整理手続きの費用、法テラスの利用の流れを解説します。

参考元:民事法律扶助業務-法テラス

目次

【要点まとめ】

  • 「法律相談」が無料
    • 債務整理手続きそのものが完全無料になるわけではない
  • 費用の立替(民事法律扶助)
    • 収入・資産などの基準を満たすと利用可
    • 審査がある
  • 立替が認められた際の費用の支払い方法
    • 原則として分割払いで返済が可能
  • 申し込みは「法テラスへ直接」または「依頼した事務所経由」の2ルートあり

債務整理と法テラス|制度の概要

法テラスとはなんですか?

法テラスは法律的なトラブルがあった際に、幅広く法的サービスを受けられるように国が設立した法人です。

民事法律扶助の条件があう人は無料で法律相談を受けられ、弁護士や司法書士の費用も法テラスが立て替えてくれます。

  • 法律トラブルについて、一定の要件のもとで支援を行う公的機関
  • 「無料相談」と「弁護士・司法書士費用等の立替」が主な支援

法テラスは法律関係の問題でどこに相談すればいいのかわからない場合や、費用が捻出できない人などのために政府が設立した法人です。

法的なトラブルに巻き込まれてしまったけど、どこに相談すればいいのかわからない時は、法テラスで相談窓口の案内をしてくれます。

民事法律扶助とは

費用の捻出ができない人には法テラスが費用を立て替えてくれる、民事法律扶助という制度があります。

借金問題や債務整理の相談にも対応しており、民事法律扶助制度を活用すれば、条件を満たす方に対して、次のような支援を提供しています。

  • 法律相談援助
    • 弁護士・司法書士への法律相談が無料
  • 代理援助
    • 弁護士・司法書士が代理人として交渉・手続きを行う費用を立替え
  • 書類作成援助
    • 弁護士・司法書士に書類作成を依頼する際の費用を立替え
法テラスを利用するメリットの図解

法テラスで債務整理を相談→申込→立替の流れ

法テラスの民事法律扶助を利用するにはどうすればいいですか?

法テラスに電話かWEBで相談の予約を入れる方法になります。

法テラスと契約している弁護士や司法書士へ直接連絡をして、民事法律扶助を利用したいと伝える方法も可能です。

法テラスと契約している事務所かどうかは法テラスがHPで公開しています。

参考元:無料法律相談のご利用の流れ-法テラス

無料相談は予約制です。

STEP
電話またはWEBから「予約」
  • 相談方法は地域によって異なる
    • 相談をする地域の法テラスのページを参照
  • 地域によってはWEB相談はできない
STEP
弁護士や司法書士と相談
  • 相談の方法は以下の3つがある
  • 対面での面談
    • 法テラスの事務所
    • 弁護士や司法書士の事務所
  • オンライン相談
  • 電話相談

無料相談の時間・回数

  • 相談時間は1回につき30分まで
  • 無料相談は同一の事件で3回まで相談可能
  • 「相談無料=手続が無料」ではない
    • 実際の債務整理に着手するには費用が発生
    • 立替制度の対象かは別途審査がある

民事法律扶助の必要書類

民事法律扶助を利用するには、援助申込書を提出し所定の審査を受ける必要があります。

援助申込書以外にも必要な書類があります。

必要書類
  • 給与明細、源泉徴収票、年金証書、生活保護受給証明書等
  • 固定資産評価証明書・固定資産納税通知書
  • 住民票

上記を提出して、民事法律扶助を受けるための条件を満たしているか審査されることになります。

民事法律扶助を利用できる人の条件

法律相談を無料で受けるための条件

  • 月収が基準以下であること
  • 所有している現金・預貯金が一定額以下であること
  • 報復や宣伝、権利の濫用目的の訴訟ではないこと

費用の立替を受けるための条件

  • 月収が基準以下であること
  • 所有している現金・預貯金が一定額以下であること
  • 報復や宣伝、権利の濫用目的の訴訟ではないこと
  • 「勝訴の見込みがないとは言えないこと」

たとえば、請求額が少額で費用倒れになるようなケースや、相手に支払い能力がない場合は対象外となる可能性があります。

月収と資産の条件

  • 民事法律扶助の対象になるには
    • 世帯収入と保有資産の両方が以下の基準を下回っている必要がある
  • 配偶者がいる場合
    • 申込者と配偶者の合計の手取り金額(賞与含む)が以下の基準を満たす必要あり

月収の目安(手取り・賞与含む)

家族構成一般地域大都市圏
単身182,000円200,200円
2人家族251,000円276,100円
3人家族272,000円299,200円
4人家族299,000円328,900円
※5人家族以降は1人増えるごとに30,000円(大都市圏は33,000円)加算。
月収の上限金額

大都市圏は東京23区以外にも埼玉県ならさいたま市や川口市等、都内近郊は大都市圏に該当する可能性が高いです。

詳細は法テラスの下記のページ(生活保護の基準に定める一級地)にて確認でき、記載がある市町村は大都市圏に該当します。

家賃・住宅ローンがある場合

家賃や住宅ローンを支払っている場合は以下の範囲内で家賃や住宅ローン分が加算されます。

家族構成一般地域東京23区
単身41,000円53,000円
2人家族53,000円68,000円
3人家族66,000円85,000円
4人家族71,000円92,000円
家賃、住宅ローンの加算額

保有資産の上限(現金・預貯金・不動産等)

現金や預貯金やその他自宅以外の不動産等の財産が、一定以上ある場合にも民事法律扶助を受けることはできません。

下記以上の財産をもっている場合は民事法律扶助を受けることはできません。

家族構成合計資産の上限
単身180万円
2人家族250万円
3人家族270万円
4人家族300万円
保有資産の上限

保有資産から自宅は除きます。

【具体例】民事法律扶助を利用できるケース

夫婦2人世帯、東京23区に居住の場合

手取り月収
(賞与含む平均)
合計320,000円
(夫220,000円+妻100,000円)
居住地東京23区
家賃加算68,000円
預貯金と現金の合計180,000円
(上限250万円未満)
自宅以外の不動産
有価証券
なし
  • 2人家族で東京23区居住
    • 月収目安276,100円+家賃加算68,000円=344,100円を手取り額が下回っている
    • 保有資産も上限以下
  • 民事法律扶助の適用が可能
法テラス(民事法律扶助)うぃ利用すると立替等がある

法テラスを利用した債務整理の費用

法テラスの民事法律扶助を利用すると、債務整理の費用は安くなりますか?

一般的には民事法律扶助を利用したほうが費用は安くなります。

任意整理の費用の相場は5万円~10万円ですが、民事法律扶助を利用すると業者数が1社だけだと42,400円の費用になります。

1社だけではそこまで安くはなく、2社以上を手続きするなら民事法律扶助を利用した方が一般的な相場よりも大幅に安くなります。

  • 法テラスでは、債務整理の手続きに関して明確な「費用基準」が定められている
  • 民事法律扶助を利用できる人は、この基準に沿った費用で債務整理が可能

以下では、任意整理・個人再生・自己破産のそれぞれについて、費用の目安を整理して解説します。

個人再生と自己破産は司法書士には代理権がないので、司法書士は書類作成援助のみになります。

任意整理の費用(民事法律扶助を利用した場合)

法テラスでは以下の基準が設定されています。債権者(貸金業者)の数によって費用が異なります。

件数費用
1社43,000円
2社64,500円
3社86,000円
4社108,000円
5社135,000円
6社~10社179,000円
11社~20社206,000円
21社以上233,000円
民事法律扶助による任意整理の費用

一般的な任意整理の相場は1社あたり5~10万円程度のため、1社のみの場合は法テラスを利用しても費用面のメリットは少ないかもしれません。

しかし、2社以上になると基本的に法テラス基準の費用の方が安くなってきます。

個人再生の費用(司法書士・弁護士別)

民事法律扶助利用の個人再生費用については、司法書士と弁護士で費用が異なります。

予納金や再生委員の報酬については立替をしてもらうことはできません。(生活保護受給者は立替制度あり)

※地域や裁判所の運用により異なる場合があります。

司法書士に依頼する場合(書類作成援助)

項目費用目安
着手金110,000円
実費20,000円

弁護士に依頼する場合

項目費用目安
着手金165,000円~220,000円
実費35,000円
  • 個人再生委員が選任されないのであれば33,000円が加算される可能性あり
  • 処理が難しい事件については着手金は最大で333,000円になる可能性あり

自己破産の費用(司法書士・弁護士別)

  • 民事法律扶助利用の自己破産費用についても、司法書士と弁護士で費用が異なります。
  • 予納金については立替をしてもらうことはできません。(生活保護受給者は立替制度あり)
  • 地域や裁判所の運用により異なる場合がある

司法書士に依頼する場合(書類作成援助)

項目費用目安
着手金88,000円
(※債権者が21社以上の場合は99,000円)
実費17,000円

弁護士に依頼する場合

項目費用目安
着手金165,000円~220,000円
実費35,000円

立て替えてもらった費用の分割払い

法テラスに立替てもらった費用は、原則として契約した日の2ヶ月後から分割で返済をします。

1回の返済額は5000円~10000円程です。

ただし、以下のいずれかに該当する場合は返済が免除されることがあります。

  • 生活保護と同程度の困窮状態と認められる
  • 生活保護を受給している
法テラス利用の債務整理費用

民事法律扶助を利用できなくても安い事務所もある

収入や資産が基準を超えていて民事法律扶助を利用できない場合でも、債務整理を諦める必要はありません。

中には、法テラスを使った場合と同程度、またはそれ以下の費用で手続きを行っている事務所も存在します。

特に任意整理なら、民事法律扶助を利用したケースと比較してもあまり変わらない費用に設定している事務所もあります。

基準を満たさず法テラスを利用できない場合も、債務整理の費用は後払いが可能です。

くわしくは下記のページを参照ください。

よくある誤解

法テラスなら手続も完全無料

  • 民事法律扶助を利用できた場合
    • 相談は無料だが弁護士や司法書士の費用は無料にはならない
  • 弁護士や司法書士の費用
    • いったん立替てもらえるだけで、返済する必要がある

生活保護受給者は立替の義務が免除される可能性があります。

誰でもいつでも使える

  • 無料相談や費用立替を受けられる民事法律扶助には審査がある
  • 収入・資産等の基準に照らして判断される

審査に通らなければ民事法律扶助は利用できません。

よくある質問

相談は本当に無料ですか?

民事法律扶助の条件を満たす場合に、法律相談が無料になります。弁護士や司法書士の費用は無料ではありませんが、立替制度があります。

最寄りの法テラス窓口や電話番号はどこで確認できますか?

法テラス公式サイトで確認できます。

法テラスを利用すると信用情報(ブラックリスト)に影響しますか?

影響はありません。法テラスを利用した事実が信用情報に記録されることはありません。債務整理を行った場合は影響がでます。

法テラスの利用は一度きりですか?

同一の案件ではなく、新たに法的問題が発生した場合には改めて相談できます。

まとめ

  • 民事法律扶助を利用すると
    • 債務整理の費用を抑えることができ、分割払いも可能
  • 民事法律扶助を利用するには収入等の条件がある
  • 民事法律扶助を利用できない場合
    • 法テラス利用時とあまり変わらない費用の事務所もある

司法書士からのアドバイス

借金の返済が苦しくても、「誰に相談すればいいのか」「費用を用意できるのか」という不安から、悩み続けてしまう方は少なくありません。

法テラスの制度は、一定の条件を満たせば費用の立替えを受けられるため、経済的な理由で相談をあきらめなくてもよい仕組みです。

ただし、利用には審査や書類の提出が必要で、すべてのケースが対象になるわけではありません。

もし基準を満たさなかった場合でも、弁護士や司法書士の費用は基本的には分割払いが可能です。

大切なのは「今の状況を正しく整理し、早めに専門家へ相談すること」です。

相談の第一歩が、生活再建への大きな転機になります。

借金問題は放置すると利息や遅延損害金で負担が増す一方です。

条件に当てはまるか不安でも、まずは窓口に確認し、制度をうまく活用できるか検討しましょう。

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