生活保護中でも債務整理はできる?自己破産・費用・バレるか解説

当サイトの記事はすべて司法書士三浦永二(東京司法書士会所属、登録番号7300号)が執筆しています。

生活保護と債務整理は、適切に手続きを進めれば両立可能です。

ただし、ルールを守らないと、生活保護の受給資格に影響が出るケースもあります。

この記事では、生活保護と債務整理の関係や、選択すべき方法、よくある疑問まで、司法書士の視点で詳しく解説します。

まずは結論

  • 生活保護の受給中でも債務整理は可能だが、自己破産が基本
  • 生活保護費は返済に充てられず、返済すると減額・停止等の処分の可能性あり
  • 受給中の新規借入は原則「収入認定」⇒保護費が減る一方で借金は残る
  • 費用は法テラスの無料相談・費用立替の対象。状況により償還猶予・免除も可
  • 「バレる」不安は申告義務や口座等。正直に申告・適切な手続が最善

参考元:債務整理-東京司法書士会

信用情報とは-指定信用情報機関のCIC

生活保護制度-厚生労働省

目次

生活保護と債務整理の基本(背景と関係性)

生活保護を受けながら債務整理をすることはできますか?

生活保護を受給中でも、債務整理をすることができます。

  • 生活保護は「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度
    • 借金があっても生活保護の申請は可能
  • ただし、自己破産をするように進められる可能性が高い

借金があると生活保護を受けられない・・・と勘違いしている人もいますが、借金があっても生活保護を受けることは当然できます。

生活保護の申請時に借金があるかを確認され、よほど低額の借金でなければ自己破産を進められる可能性が高いです。

自己破産してからじゃないと生活保護が申請できないわけではありません。

生活保護費で借金返済はできない理由

生活保護費で借金を返済することに問題はありますか?

保護費で借金を返済していると、生活保護を打ち切られることがあります。

また、受給中に新しく借金をすると借りたお金が収入とみなされて、生活保護費から差し引かれることもあります。

保護費から借金返済をすると処分の可能性あり

  • 生活保護費は「最低限度の生活維持」が目的
    • 借金返済目的での支出は想定されていない
  • 返済に回していることが判明すると生活保護が減額・停止される可能性あり

ケースワーカーは受給者に対して生活の維持、向上その他のために必要な指導をすることができます。

ケースワーカーの指導に従わなければ生活保護の停止又は廃止の処分をすることができます。

受給中の新規借入は「収入認定」

  • 受給中の借入は原則「収入」として扱われる
  • 借入をした金額の分、生活保護費が減額される

借入が収入認定されて保護費が削られても、借金の返済義務はそのままです。

生活保護受給中に10万円借りると

保護費から10万円引かれた上で、10万円の借金の返済義務は残ります。

また、不正受給で生活保護の停止や、打ち切りにつながる恐れがあります。

そのため、生活保護受給中に借金をするメリットはありません。

ただし、医療費や学費など特別な事情がある場合は、福祉事務所の許可を得れば例外的に認められることもあります。

生活保護受給中に借金をすると収入認定される仕組みの図

生活保護中に選べる債務整理【自己破産が中心】

生活保護受給中に借金がある時はどうすればいいですか?

生活保護費から返済すると生活保護が打ち切りになる可能性がある以上、借金の支払い義務がなくなる自己破産をすることになります。

生活保護受給者は法テラスを通して自己破産を行えば、費用をかけずに自己破産をすることができる可能性があります。

参考:生活保護を受けていても利用できますか?|法テラス

債務整理の種類生活保護受給中の利用可否
任意整理×
自己破産
個人再生×
自己破産(基本)
  • 返済義務を免除する手続
  • 自己破産を理由に生活保護が打ち切られることはない
  • 費用は法テラスの無料相談・立替制度を活用できる
任意整理・個人再生
  • どちらも返済が必要
  • 生活保護費を返済に充てられない以上、現実的ではない

生活保護費は返済に回せないので、任意整理や個人再生はできず基本的には自己破産を選択することになります。

自己破産については以下の記事でも詳しく解説しています。

生活保護と債務整理(自己破産が中心)を示す図解

費用はどうする?法テラスの無料相談・費用立替

  • 生活保護受給者は法テラスの無料法律相談を利用可能
  • 自己破産にかかる費用は、費用立替制度が利用できる
  • 立替された費用についても、返還免除の申請ができる
STEP
無料相談を利用可能

生活保護受給者は、法テラス(民事法律扶助制度)を通じて無料で法律相談が可能です。

借金や自己破産の相談も対象になります。

STEP
費用立替の申請

対象となれば、自己破産など債務整理の費用を法テラスが一時的に立て替えてくれます。

依頼後は、弁護士・司法書士を通して正式に手続きを進めます。

STEP
返還免除の可能性

生活保護受給者は、状況により立替金の返還が免除される場合もあります。

申請が認められれば、実質的に費用をかけず自己破産を進めることが可能です。

生活保護受給者の場合、基本的には費用は法テラスに立て替えてもらえ、立替金の返還も免除される可能性があります。

法テラスの利用については以下の記事でも詳しく解説しています。

生活保護受給と債務整理:よくあるQ&A

生活保護受給中に借金がバレることは?

口座の確認、督促状などでバレることがあります。福祉事務所には資産・債務の申告が必要なため、正直に申告しましょう。

督促や差押えが来た場合、どうすればいい?

自分で返そうとせず、すぐにケースワーカーへ相談を。多くの人は自己破産などで解決しています。

生活保護を受けていると、クレジットカードの作成や利用はできますか?

新しく作るのはむずかしいです。使うならデビットカードやチャージ式のスマホ決済が現実的です。

生活保護受給中に自己破産すると、手続き後に生活保護が受けられなくなりますか?

引き続き受給可能です。自己破産を理由に生活保護が打ち切られることはありません。

生活保護受給中でも弁護士・司法書士への相談は無料で受けられますか?

法テラスの制度を利用すれば、費用の負担なく法律相談を受けることができます。

過払い金を取り戻したらどうなる?【収入認定と申告】

生活保護受給中に過払い金を回収したらどうなりますか?

生活保護受給中の人が過払い金を回収した場合は、ケースワーカーに報告する必要があります。

報告しない場合は、不正受給となることもあるので注意が必要です。

  • 過払い金を回収したらケースワーカーに報告が必要
  • 取り戻した過払い金は収入認定される
    • 保護費の減額か一定期間の受給停止になる可能性あり

毎月15万円生活保護受給中で、過払い金が45万円返ってくると

45万円÷15万円=3か月間生活保護の受給を停止される可能性があります。

過払い金については以下の記事でも詳しく解説しています。

生活保護と債務整理のまとめ

生活保護費で借金を返済していると
  • 受給中に借金の返済していると、ケースワーカーから指導が入ることがある
  • ケースワーカーからの指導に従わなければ、生活保護が打ち切りになることもある
生活保護受給中の借金
  • 収入認定されて生活保護費が減額される
  • 借金は残るので返済義務も残る
  • 生活保護が停止や打ち切りになることがある
生活保護中の債務整理
  • 基本的に任意整理と個人再生はできないので、自己破産となる
  • 自己破産費用の立替・猶予・免除の可能性あり
  • 自己破産をしても生活保護は打ち切られない

司法書士からのアドバイス

生活保護を受けながら借金を抱えている方は、「借金があると保護を打ち切られるのでは」と不安に思われることが多いです。

しかし、生活保護は「最低限の生活を守る」ための制度であり、借金があること自体は問題ではありません。

大切なのは、借金の状況を隠さず、正直に相談すること。

無理に返済を続けると保護費が減額されたり、生活がさらに厳しくなることもあります。

ケースワーカーや司法書士に早めに相談すれば、法テラスを利用して費用をかけずに自己破産などの手続きを進められる場合もあります。

「生活保護だから手続きができない」「バレたら困る」と悩む必要はありません。

まずは専門家に状況を話し、最も負担の少ない方法で再スタートを切ることを考えましょう。

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