任意整理の積立金【払えないと任意整理はできない?司法書士が解説】

当サイトの記事はすべて司法書士三浦永二(東京司法書士会所属、登録番号7300号)が執筆しています。

任意整理を専門家に依頼した後は、貸金業者への返済を一時的にストップし、代わりに「積立金」を毎月支払うことになります。

この積立金は、任意整理が成立するまでの3〜8か月間、弁護士や司法書士の事務所へ振り込む形で行われます。

積立金には、報酬の分割支払いと、今後3~5年続く分割返済に耐えられるかを確かめる目的があります。

積立金の目的や必要性、支払えない場合の対処法、返金の可否などについて、わかりやすく解説します。

目次

先に結論|任意整理の積立金はなぜ必要?

任意整理で積立金はなぜ必要なんですか?

任意整理後は3年~5年の長期に渡って返済が続きます。

その長期間の間、きちんと支払っていくことができるのかを確認するために積立金は必要になります。

積立が難しい場合、任意整理の継続が現実的でないと判断されることが多く、個人再生や自己破産などの別手続の検討が必要になります。

  • 積立金=和解成立までの間(目安:3〜8か月程度)に、毎月事務所へ積み立てるお金
  • 積立金の目安=「和解後に想定される毎月の返済額」
  • 支払い方法
    • 弁護士や司法書士事務所の口座へ振込
  • 専門家費用の分割払い
    • 依頼前にまとまった現金を用意できなくても、毎月の積立で報酬を確保できる
  • 返済能力の確認(テスト期間)
    • 交渉中に「毎月いくらなら無理なく支払えるか」を積立金で検証
    • これにより、和解条件(返済額・回数)を現実的に設計できる
  • 積立金が払えない=任意整理が進まない・和解交渉に入れない可能性あり
    • 家計の立て直し
    • 返済計画の組み替え
    • 手続変更(個人再生・自己破産)を検討

返済を止めている間に積立金を行うので、積立金と貸金業者への返済で二重に支払う必要はありません。

費用の支払い方法については以下の記事で詳しく解説しています。

「積立金/預り金/プール金/着手金」混同しやすい用語整理

呼び方ざっくり意味
積立金
預り金
プール金
和解までに毎月積み立てるお金
返済原資・報酬・実費等に充当される
着手金受任時に発生する費用
実費郵送費・通信費等

任意整理で積立をする流れ

STEP
専門家に任意整理を依頼する
  • 依頼後、各債権者へ「受任通知」を送付します。
  • これにより、原則本人への直接連絡(電話・郵便など)が止まります。
STEP
和解成立まで返済を止め、その間に積立金を入れる(目安:3〜8か月)
  • 和解に向けて、残高確認、利息や分割回数などの交渉を進めます。
  • この期間に毎月積立できるかを見て、和解後も返済が継続可能かを判断します。
STEP
和解成立 → 返済開始(原則36〜60回を軸に設計)
  • 和解条件(分割回数・利息カット等)がまとまり次第、返済がスタートします。
  • 実務上、分割回数は36回~60回を基準に設計されることが多いです(ただし債権者の方針で変動します)。

任意整理の受任後:返済停止中の連絡はある?(原則停止)

任意整理を専門家に依頼すると、受任通知(債務整理を開始したことを知らせる書面)を貸金業者に送付します。

受任通知が届いた後は、本人に対して電話や郵送による督促を行うことが禁止されます(貸金業法21条1項9号に基づく取立て規制)。

ただし、事務処理の行き違い等で書面が届くこともあるため、届いた場合は事務所に連絡してください。

体験談:積立を通じて生活習慣を見直せたケース

30代 女性

最初は「積立なんて必要?」と思っていましたが、続けることで自分が3年間しっかり返済を続けられるか確認できました。結果的に生活の中で支出を見直すきっかけにもなりました。

積立金の目安はいくら?(計算式+具体例)

目安の考え方

  • 積立金の目安= 想定月返済額
  • 想定月返済額(概算)= 借金総額 ÷ 36〜60回

任意整理における積立金シミュレーション

借入総額36回分割60回分割
30万円約8,334円約5,000円
50万円約13,889円約8,334円
80万円約22,223円約13,334円
100万円約27,778円約16,667円
150万円約41,667円約25,000円
200万円約55,556円約33,334円
300万円約83,334円約50,000円
単純割り算の目安。実際は交渉条件により変動

業者ごとで、36回以下の分割払いになったり、60回以上の分割払いになることもあるため、上記は単純計算の目安です。

任意整理後の返済額シミュレーター

概算:毎月の返済額 = 残債 ÷ 回数(将来利息カット想定・100円未満は切り上げ

分割回数

※概算です。実際の返済額は和解条件・延滞状況・残債内訳などで前後します。
※計算結果は100円未満を繰り上げます。

積立金はいつからいつまで?期間の目安

一般的には、受任通知後〜和解成立までの期間に積み立てます。

目安として3〜8か月程度が多いですが、次の事情で延びることがあります。

  • 取引履歴の取り寄せに時間がかかる
  • 債権者が多い/交渉に時間がかかる
  • 家計調整が必要で、返済計画を組み直している

なぜ積立金が必要なのか(目的)

積立金の目的は、主に次の3つです。

  1. 和解後の返済が本当に続くかを事前に確認する
    • 任意整理は「返済を続けて完済をすること」がゴールです。
    • 積立段階で崩れるなら、返済が継続できない可能性が高いです。
  2. 和解後の初回返済に備える(返済のズレを防ぐ)
    • 和解成立のタイミングと返済開始日が近いと、資金が足りず初回から遅れるリスクがあります。
  3. 費用を分割で準備する
    • 積立金は費用に充てられます。

積立金が払えない・できないときの選択肢

任意整理の積立金ができない場合はどうなりますか?

その場合、任意整理では解決できないということになるので、他の債務整理である個人再生や自己破産を検討するべきです。

どうしても任意整理で解決したい場合、別の事務所に相談をしてみるという方法もあります。

STEP
払えない原因を分類する
  • 一時的な原因:急な出費(税金、車検、更新費、医療費など)
  • 根本的な原因:家計が赤字、返済原資がそもそも不足
  • 管理の問題:支払日の間違い、口座残高不足
STEP
一時的なら「計画の組み替え」
  • 固定費の見直し(通信費、保険、サブスク、家賃交渉等)
  • 今月だけ崩れた理由を分析して再発防止
STEP
根本的な問題なら「任意整理以外」を早めに検討

任意整理では返済できないのであれば、個人再生(返済額の圧縮)や自己破産(返済義務の免除)を再検討するべきです。

家計の調整

  • 固定費(通信・保険・サブスク等)の圧縮、家計簿アプリでの可視化
  • 収入増の見込み(残業・副業等)が不確実な場合は前提に組み込まない

返済計画の再設計

  • 分割回数を長めにする交渉(例:36回→60回など)で月負担を抑える
  • 同種の案件経験が多い事務所にセカンドオピニオンを求め、より現実的な条件提示が可能か検討する

家族に秘密だったりして、どうしても任意整理で解決したい場合は、別の弁護士や司法書士に相談するのも一つの方法です。

事務所ごとに交渉力や方針が異なるため、分割回数を柔軟に対応してくれるケースもあります。

たとえば、ある事務所では難しいとされた返済計画でも、別の事務所では5年超の長期分割に応じてもらえる可能性もあります。

分割回数が増えて月々の支払額が下がれば、積立金の負担も軽くなり、任意整理での解決が可能になるかもしれません。

  • 30万円を36回分割だと毎月8400円ほどの支払いになる
  • 60回分割だと5000円になるので、積立金も少額で済むことになる

そのため、1つの事務所でダメだった場合も、別の事務所へ相談してみるという方法もあります。

手続の切替

  • 個人再生
    • 元本を大幅減額し原則3年で分割返済
    • 任意整理より月額負担を下げられる可能性が高い
  • 自己破産
    • 支払不能と判断された場合に免責を得て、原則として借金支払義務が免除される

どの債務整理がいいか迷っている人は以下の記事を参照してください。

任意整理の積立金の流れ(積立金→積立する理由→積立金ができない場合の対応)

司法書士の視点:積立金でつまずきやすい典型パターン

  1. 更新費・税金・車検など年1〜数回の大きな支出を見落とす
  2. 家計簿をつけず、黒字のつもりが実は赤字
  3. 同居家族に内緒で、生活費の不足を埋められない
  4. 「任意整理すれば何とかなる」と、返済能力の再点検をしない

毎月いくらなら確実に出せるかを先に確定し、そこから逆算して手続きを選ぶべきです。

積立金は返金されるのか

途中キャンセル時は、それまでの積立金の返金を行わない契約や、実費を差し引く契約など、事務所ごとのルールがあります。

契約書に、キャンセルの場合も全額返金すると書いてあれば、当然返金してもらえることになります。

返金されないケース

  • 途中キャンセルの場合は、それまでの積立金は返金しない契約になっている
  • 着手金を取られている場合、基本的に着手金は返金されない

契約書や重要事項説明書に、返金条件が明記されていることが多いです。

契約書等に記載されていなくても、返金してもらえる事務所もあるため、まずは事務所に問い合わせてみるべきです。

体験談:途中解約で一部返金されなかったケース

20代 女性

以前依頼をした事務所は途中で依頼をキャンセルしましたが、積立金の一部は戻りませんでした。契約前に返金条件を確認すべきでした。

よくある質問

積立金の支払いが遅れた場合どうなりますか?

契約が継続できなくなる可能性があります。すぐに事務所へ相談してください。

積立金を支払い中に転職や収入減があった場合は?

状況に応じて積立額の調整や返済計画の再検討が必要になります。早めに事務所に相談してください。

積立金と任意整理後の返済は同じ金額ですか?

必ずしも一致しません。積立は「目安」ですが、最終的な返済額は交渉の結果により決まります。

積立金が完了したらすぐに返済開始ですか?

積立完了後、和解が成立すれば初回の返済が始まります。債権者によって開始時期は多少前後します。

積立金をクレジットカードで払えますか?

原則は口座振り込みです。債務整理手続きと相反するため、クレジットカード等は利用できないのが一般的です。

まとめ

  • 任意整理後に返済ができるかを確認するために積立金が必要になる
  • 積立金ができないと
    • 任意整理をしても返済はできないと判断される
    • そのため任意整理をすることは難しくなる
  • 任意整理が出来ない場合
    • 積立金が返金されるかは事務所との契約次第
  • 積立金が払えない場合
    • 個人再生や自己破産を検討する必要がある
  • 任意整理をあきらめたくない場合
    • 別の事務所に相談して長期分割の交渉が可能か確認する

司法書士からのアドバイス

積立金は、任意整理を現実的かつ安全に進めるための重要な準備段階です。

毎月の負担が重く感じる場合は、分割回数の調整、家計の見直し、または個人再生・自己破産の検討で道が開けます。

1つの事務所で難しいと言われても、別の事務所なら別の方法が提示されることもあります。

迷ったら早めに相談し、あなたの家計に合う現実的な計画を一緒に作っていきましょう。

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