あまり知られていませんが、過払い金には年3%~5%の利息が発生します。
場合によっては利息だけで数十万円~100万円を超えることもあります。
この記事では、
- 過払い金の利息が発生する理由
- 利息の計算方法と金額差の具体例
- 利息まで回収するための手続き
上記について、実務経験と法律の根拠をもとに詳しく解説します。
参考元:債務整理-東京司法書士会
過払い金の利息はいつから発生するのか
- 過払い金の利息とはなんですか?
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過払い金は法律的には「不当利得」にあたります。
不当利得の悪意の受益者は、返還するまで年3~5%の利息を支払わなければなりません。
そのため、過払い金が発生したらそこから年3%~5%の割合で利息が付きます。
不当利得とは、法律の根拠なく不当に利益を得たことを指します。
過払い金請求では、法定利息より高い金利で取引していた場合、引き直し計算により実際はすでに完済していることがあります。
その完済した状態になった後に払いすぎたお金が、法律の原因なく不当に得た利益=不当利得になります。
2005年〜2020年まで年25%で借入・返済したケース
- 引き直し計算で2015年時点に完済
- 2015年〜2020年までに支払った分が過払い金
- 発生時点(2015年)から年5%の利息が加算
不当であることを認識しながら利益を得ていた場合は、その受けた利益に更に利息を付けて返還しなければなりません。
【体験談】

長年借金を返してきたのに、計算すると実は10年前に完済していたと、司法書士の先生に教えてもらい非常に驚きました。
引き直し計算については以下の記事でも詳しく解説しています。


過払い利息の根拠は法律にある
不当利得を返還する際に、悪意の受益者は、返還金に年3%~5%の利息を付けなければならないと定めています。
(悪意の受益者:法律上の原因がないことを知りながらも、不当な利益を受け取っていた者)
つまり、貸金業者が「利息制限法を超える金利で取引していた」ことを知っていれば、元金だけでなく利息分も返す義務があります。
過払い金の仕組みについては、以下の記事でも詳しく解説しています。


過払い金の利息は何%?年3%と5%の違い
- 2020年3月31日以前に発生した過払い金:年5%
- 2020年4月1日以降に発生した過払い金:年3%
※発生時期は「引き直し計算で過払い金が発生した日」で判断します。


利息の計算方法とシミュレーション
- 過払い金の利息はどのぐらいの金額になりますか?
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一概には言えませんが、取引が長い人は結構な金額になります。
過払い金が発生してからの期間が長い場合は、利息だけで100万円以上発生するケースもあります。
過払い金の利息は最終の取引日=完済の時から発生すると思われがちですが、過払い金が発生した時点から利息は発生します。
年3%~5%の利息と聞くと大した金額にはならないように思えますが、過払い金が多ければそれに比例して利息も多くなります。
過払い金100万円の場合
- 1年後:+5万円
- 5年後:+25万円
- 10年後:+50万円
利息を回収するための現実的な方法
- 過払い金の利息は返還してもらうことはできますか?
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多くの貸金業者は利息の支払いには簡単には応じません。
利息まで回収するには、基本的には裁判をして回収することになります。
「不当であることを認識しながら利息を受け取っていたこと」が利息発生の根拠になるため、貸金業者側も簡単には認めません。
裁判で過払い金の利息を取り戻す流れ
利息全額の和解案をだしてくる業者もあれば、一部の利息を上乗せする和解案をだしてくる業者もある
裁判でのやりとり
- 利息回収の可否は、貸金業者が「悪意の受益者」に該当するかで決まる
- 悪意の受益者とは、みなし弁済が適用されないことを知りながら違法な金利を受け取っていた業者
最高裁判決では、特別な事情がなければ悪意の受益者と推定されると判断されました。
場合によっては、利息はある程度のところで和解をすることで、回収までの期間を早めることができます。
裁判なしで過払い金の利息を回収できるケースも
大半の業者は裁判を行わなければ利息分の返還には応じません。
しかし、一部の貸金業者は、裁判を経ずに利息の一部または全額を支払う場合もあります。
【裁判なしでも一部の利息回収ができた事例】



任意交渉で利息の半額分を加えて和解に応じてくれました。時間も短く済み満足しています。
過払い金請求の流れについては、以下の記事でも詳しく解説しています。




過払い金利息請求のメリット・デメリット
メリット
- 回収額が大幅に増える可能性
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元金だけの場合と比べて、数十万円〜100万円以上差が出ることもあります。
- 交渉材料になる
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裁判で利息請求を主張することで、元金部分で有利な和解案を引き出せることがある。
- 依頼費用の負担軽減に繋がる
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利息分の増額によって、着手金や成功報酬を差し引いても手取りが増える。
デメリット
- 回収までの期間が長くなる
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裁判になると数か月〜1年以上かかる場合がある。
- 精神的・時間的負担
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長期間かかることで、本当に戻ってくるのかと精神的に負担になる。
- 費用が増える場合がある
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裁判日当等が加算される場合があり、手取りが減る可能性がある。
- 勝訴できない場合もある
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裁判所が悪意の受益者と認めなければ利息部分は回収できない。
【早期解決を選択した事例】



本来なら利息も請求したかったけど、生活費に困っていたため元金のみで早期和解。すぐに戻ったことで生活が安定しました。
過払い金の利息に関するFAQ
- 過払い金の利息はいつから発生しますか?
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過払い金は、引き直し計算で過払い金が発生した日から利息が付きます。
最終返済日ではなく、過払い金が発生した日なので注意が必要です。
- 裁判をせずに過払い金の利息をもらえることはありますか?
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裁判をしなくても利息を含めて返金してくれる業者も一部あります。
- 利息の計算は自分でもできますか?
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可能です。
引き直し計算ができれば、利息の計算自体は難しくありません。
- 過払い金の利息請求に時効はありますか?
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利息分も過払い金元金と同様、発生から10年で時効になります。早めの手続きが重要です。
あわせて読みたい過払い金の時効と請求期限|いつまで取り戻せるのか司法書士が解説 過払い金は時効になり回収を行うことはできなくなることがあります。過払い金が時効になってしまう条件と、時効を止める方法を解説しています。
利息請求で失敗しないための事務所選び
- 過払い金には年3%~5%の利息が発生する
- 利息を回収するには基本的には裁判が必要になる
利息を回収するかしないかで、金額に大きく差がでる場合があります。
ただ、利息を回収する場合は相手方の業者によっては回収までに非常に時間がかかる場合があります。
早めの回収を求めるなら元金だけとか、利息はある程度のところで和解をすることも選択肢に入れてもいいでしょう。
弁護士や司法書士の事務所によっては利息には触れずに、元金だけの計算結果を伝えて元金だけを回収する事務所も存在します。
事務所の選びを間違えるとこのようなデメリットが発生する可能性もあります。
計算結果の報告を受ける際は、元金がいくらと利息がいくら発生しているか?それぞれの内訳を確認しましょう。
さらに回収までの期間の目安を聞いた上で、利息まで回収するか判断すべきでしょう。