「過払い金請求をしたいが、どこから借りていたのか覚えていない」──これは珍しいことではありません。
契約書や明細を失くしていても、多くのケースで借入先を特定し、過払い金請求が可能です。
本記事では
- 借入先が不明な場合の調査方法
- 過払い金が発生する条件と対象期間
- 時効に間に合うための行動手順
上記を司法書士の視点で解説します。
借入先を調べる方法
- 借入をしていた会社名がわからない状態で過払い金請求はできますか?
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会社名は弁護士や司法書士が調べることはできないので、本人の側で調べる必要があります。
過去の契約書や明細、口座引き落としで返済していたのであれば、通帳等などから特定できるケースは多いです。
また、信用情報機関(CIC・JICC・全銀協)を利用すれば、過去の借入履歴を確認することができます。
借入をしていた会社の名前がわからないと、過払い金を請求することはできません。
資料を探す
- 取引明細書・請求書・督促状
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封筒やハガキ、請求書には会社名や問い合わせ先が印字されています。
差出人住所や電話番号からも特定できる可能性があります。
- ローンカード・クレジットカード
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借入専用カードやクレジットカード本体、カード台紙には発行元が記載されています。
社名変更していても番号やデザインから追跡可能です。
- 通帳・オンラインバンキングの入出金履歴
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返済口座の振込先名義や振替明細から、貸金業者の名前や略称が分かる場合があります。
クレジットカードの場合:発行元特定のポイント
クレジットカードの場合、どこで申し込み・作成したカードかを思い出すことも特定の手がかりになります。
デパートやスーパー、家電量販店、ガソリンスタンドなどで申し込んだ提携カードは、それを手がかりに割り出せる可能性があります。
【デパート名から判明した事例】

デパートで作ったカードで、デパート名から提携先がクレディセゾンだと判明。そこから過去のキャッシング履歴を調べてもらい、過払い金を請求することができました。
信用情報機関で調べる
最も確実なのは信用情報の開示請求です。手数料は500円~1,500円前後、ウェブや郵送で手続きできます。
機関名 | 掲載情報 |
---|---|
CIC | 主にクレジット・信販 |
JICC | 主に貸金業全般 |
信用情報は下記から取得できます。
過払い金が発生する条件と対象期間
借入先が特定できたら、次はその借入が過払い金請求の対象になるかどうかを確認します。
取引期間や契約内容、金利の設定によっては対象外となる場合もあります。
ここからは過払い金が発生する条件と、請求できる可能性が高い期間について詳しく解説します。
利息が分かれば過払い金の有無がすぐ分かる
過払い金は、利息制限法の上限金利を超えて取引していた場合に発生します。
利息制限法の金利の上限 | |
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10万円未満の借入 | 20%まで |
10万円以上~100万円未満の借入 | 18%まで |
100万円以上の借入 | 15%まで |
【契約書で利率を確認した事例】



契約書の利息欄を見たら『年27%』と記載されており、すぐに過払い金があると判断できました。専門家に依頼してスムーズに請求まで進められました。
取引期間からも判断できる
- 対象になりやすい期間:2007年以前からの取引
- 対象外の期間:2008年以降の新規契約
- 例外:アプラス、ニッセンなど一部の業者は2008年以降も高金利で貸付を行っていたケースあり
2007年前後に多くの業者が金利の見直しを行ったので、2008年以降からの借入では過払い金が発生することはほぼありません。
アプラスやニッセンなど一部の業者は、2008年以降も高金利で貸付を続けていたため、過払い金が発生するケースがあります。
過払い金が発生する条件については、以下の記事でも詳しく解説しています。


取引履歴の取得方法
取引開始日が不明な場合でも、取引履歴の開示請求でいつからの取引だったのかを確認可能です。
業者名が分かれば、貸金業者から取引履歴を取り寄せて過払い金の有無を確認できます。
取引履歴は本人でも取得できますが、専門家に依頼すれば業者とのやり取りや請求も代行してもらえます。
- 氏名
- 住所
- 生年月日
- 貸金業者への登録が旧姓の場合⇒旧姓
- 貸金業者への登録が旧住所の場合⇒旧住所
どの住所で登録されているのか不明なら、わかる範囲で全て旧住所を申告して、そのどれかで一致すれば問題ありません。
住所が一致しない場合も、下記の情報で照会できる可能性があります。
- 電話番号
- 免許証番号
- 登録していた口座
- 当時の勤務先名
過払い金請求自体には書類は不要
- 過払い金請求をするには明細等が残っていないとだめですか?
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過払い金請求をする際は、明細等がなくても過払い金請求を行うことができます。
取引をしていた会社名と、ある程度の取引の期間がわかれば問題ありません。
会社名がわからないと過払い金を請求することはできませんが、書類が残っている必要はありません。
弁護士や司法書士が貸金業者から取引履歴という資料を取り寄せるため、明細等がなくても過払い金請求を行うことができます。
【書類がなくても回収できた事例】



明細もカードもなく諦めかけましたが、司法書士に相談したら取引履歴だけで請求できると聞き依頼しました。想定以上の金額が戻ってきました。
時効の壁に注意
- 完済から10年以上経過していると過払い金は回収不可
- 調査に時間がかかる場合もあるため、早めの行動が重要
過払い金請求には「最後の取引から10年」の時効があります。
特に記録がない場合は、時効判断も慎重な確認が必要です。
時効が迫っている場合は、貸金業者へ内容証明郵便で返還請求書を送るか、訴訟を提起して時効を中断させます。
司法書士や弁護士に依頼すれば、早めの対応で中断手続きが可能です。
時効については、以下の記事でも詳しく解説しています。


よくある質問まとめ
- 自分で過払い金請求をする際も明細等はなくても問題ありませんか?
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弁護士や司法書士へ依頼せず本人で過払い金請求をする場合も、必要になるのは取引履歴という資料だけです。
これは本人でも貸金業者から取り寄せることができるます。
そのため、明細等がなくても本人から過払い金請求を行うことができます。
- 会社名が合併や統合で変わっています。請求は可能ですか?
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社名変更・合併後の会社に対して請求できます。調査・特定も可能です。
- 利率が分からなくても過払い金の有無は確認できますか?
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可能です。
取引履歴を開示すれば、実際の利率と取引期間から計算できます。詳しい方法は本文の「取引履歴の取得方法」セクションで解説しています。
- 取引履歴を請求したら業者に怪しまれますか?
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法律で開示が認められているため問題ありません。理由を聞かれても答える義務はありません。
まとめ|まずは調査から
- 明細や契約書で確認
- 口座引き落としで返済していた場合は通帳で確認
- 上記の資料がない場合は信用情報を取り寄せて確認
借入先が分からない場合でも、多くは調査によって特定できます。
過払い金には時効があるため、思い当たる方はまず信用情報開示や無料相談から始めることが大切です。